112話 遊園地
ーー遊園地にて
「ねぇおっさん」
「神宮寺だ、なんだよ?」
「じゃあ神宮寺、なんでサングラスなんてしてるの?」
「呼び捨てかよ……変装だ、バレると色々面倒でな」
「いや誰も神宮寺のことなんか知らないでしょ」
神宮寺が麗奈を匿ってから2日が経った。
この日は朝から麗奈の機嫌が悪く、困った神宮寺は近くの遊園地に麗奈と共に来ている。
そして麗奈のご機嫌取りとは別に、この遊園地でとある人物とも待ち合わせをしている。
「いや有名なんだわ、一応」
いつものように怒る事はなく、神宮寺は淡々とそう答えた。
公式の攻略者ランキング3位、攻略者人気ランキング1位、神宮寺倫也。
スポンサー数10社以上、グッズ展開多数、ダンジョン関連商品のCM多数出演など、神宮寺は現代攻略者として、大成功を収めている。
表へ出る時、神宮寺にはルールがある、それは普段の自分を出さない事。
攻略者としての活動をしている途中は別として、メディアやプライベートで出かける時の彼は、極力キレないようにしているのだ。
「嘘でーす、絶対その話嘘だよ」
「あー、もうなんでもいいわ」
「てかさ神宮寺、なんで私達ずっとベンチにいるわけ?」
「遊びてぇなら勝手に行けよ、俺はここに居るから」
「えー、神宮寺も一緒に乗ろうよ」
「いいんだよ俺は、ほれさっさと行け」
神宮寺はそう言って麗奈をベンチから追い出した。
「はいはーい、じゃあ勝手にそこにいなよーっだ!」
麗奈はそう言うとあっかんべーをして、ジェットコースターの方へ向かって行った。
「やっと行ったか」
麗奈がいなくなり、その分広くなったベンチに神宮寺は深く腰をかける。
すると遠くの方から、人が神宮寺めがけて小走りで駆けてきた。
「はぁはぁ、すまんな遅れてしまった」
息を切らしながら現れたのは、元攻略者ランキング4位の若織詩音だった。
「いや別に待ってねぇよ、さっき来たとこだしな」
嘘である。
本当は1時間ほど前からここに座っていた。
「そ、そうか、それで話ってなんだ?」
「ああ、幾つかあるんだがまずは、宗太郎が見つかった」
神宮寺は視線を若織ではなく空に向けそう話した。
「……兄貴か、あいつ生きてたんだな」
「元気だったぜ、ただなあいつは変わっち待ってたよ」
「そうか……」
「鶏鳴狗盗のメンバーだったよ、だから殺した」
「……そうか、大変だったなお前も」
名取が死んだことを話すと、若織は悲しいそうな顔をしたが、神宮寺の事を気遣い泣くことはしなかった。
そんな悲しいそうな若織を見た、神宮寺はため息を吐く。
「はぁ、殺したはずだが生きてたよあいつは」
「え?」
「いや直接見たわけじゃねぇけどさ、生きてるってなんか教えに来たやつがいてさ」
「い、意味がわからん、殺したのだろう?」
「ああそうだ、半端な事はしてねぇよでも生きてるって言われたんだよ」
「誰にだ?」
「なんか蘭方の母親とか言ってた奴にだよ」
「……う、嘘だありえない」
蘭方の母親というワードを出すと、若織はひどく怯え始めた。
「なんだよ、でもそうだって言ってたからさ」
「死んでいるんだよ、その人はもう」
「は?でも俺は確かに会ったぞ」
「2年前お前がいなくなった時、もう一つ事件があったんだ、深淵王の眠るダンジョンで起きた事故、当時はそこに誰も深淵王が眠ってるなんて考えもしてなくてな」
「あ、ああ」
「当時高校生だった蘭方は、その事件に巻き込まれて行方不明になっていてな、その時に蘭方の母親は息子を助けにダンジョンに行って、ダンジョンモンスターに殺されてるんだ」
若織は震えながらそう話す。
「な、なんだと……じゃあ俺が会ったのは」
「私は救助班に参加していたから見たんだ、蘭方の母親をはじめとした行方不明になった子供の親達の死体を、どうやら心配になった親達も無断でダンジョンに探しにきていたらしくてな、皆んなダンジョントラップで最下層に行き、殺されたんだ」
「マジかよ」
『スチャッ』
その時、神宮寺のサングラスがいい感じに下に落ちた。
「……わ、私は見たんだドラゴンに噛みちぎられた親達の死体を……」
若織はそう言うと両手で顔を覆い泣き始めてしまった。
「お、落ち着け、あっちに俺の車があるからそこまで行こう」
慌てて神宮寺は若織を自身の車へと誘導する。
「あいつは……」
軽く周りを探すが麗奈の姿はなかった。
「そうだジェットコースターか、後で迎にくるからあいつは置いていこう」
神宮寺は錯乱する若織を連れ車へ戻った。




