111話 白石区
ーー札幌白石区、防衛線にて
「目標確認!500メートル先に複数体魔族を確認、こちらへと向かって来ます」
「了!念のため、投降を呼びかける」
大隊長鈴木は、部下からスピーカーのマイクを受け取る。
司の守っていた最前線を抜けたルシファーの一団が、ここ白石区防衛線に到着しようとしていた。
「一応防衛線のようなものは用意してあるのですか、流石にあの攻略者1人に全てを止めさせるわけではないか」
前方に控える自衛隊の大隊を見て、ルシファーはそう呟く。
祭の作戦では、最前線は攻略者で抑えてすり抜けた魔族を自衛隊に任せるつもりであった。
しかし祭の身に起きた不慮のトラブル(前日のお酒)があったため、作戦が大幅に狂ってしまう。
そのため後方部隊の予定であった自衛隊が前線にでて、後方には何もない状態となっていた。
『こちらは陸上自衛隊です、こちらに向かってくる魔族達よ、投降しなさい』
「ほう、こちらはあのクソ攻略者と違って律儀だな、兵士達よ挨拶してやれ」
ルシファーの掛け声により、10数名の魔族が前に出る。
『エンドスキル発動、破断』
そうして前に出た魔族達は、一斉に黒弾を放つ。
「攻撃!攻撃です!」
「なに!?返答もなしにだと」
『ズドドォン』
攻撃に備える間もなく、鈴木国忠率いる自衛隊に無数の黒弾が降り注ぐ。
「ぐはっ」
「助け、誰か助けてくれー」
『グシャ』
「隊長、退避をここは危険でーー」
『ズシャ』
鈴木国忠を逃がそうとした隊員の頭に黒弾が命中し、頭が吹き飛んだ。
「な、なんて事だ」
「隊長!こちらも反撃しましょう、このままでは抵抗できずただやられるだけです」
「あ、ああそうだな、第一隊攻撃を開始せよ!」
『了!』
鈴木からの射撃許可をもらい、配置していた第一隊は魔族に向け銃撃を開始した。
「こちら第一隊、鈴木大隊長からの命により前方の魔族に対し射撃を行います」
『ガチャ』
民家の屋根上に配置していた隊員達は魔族へ向け銃を構えた。
「撃ち方はじめぇ!!」
『ズドドォン』
そうして人類史上初、魔族へ向けての発砲が始まった。
「ぐはっ」
「いってぇぇ」
「怯むな兵士達よ、俺たち魔族に弾丸の効果は薄い、頭を守りながら全軍突撃!!」
ルシファーは、自衛隊に向け黒弾を撃つ部隊と突撃する部隊の2隊に分け、前線の部隊に突撃を命じる。
「ひゃっほー!」
「噛み殺してやるぜクソ人間ども!」
「うひょー!」
魔族達は奇声を上げながら突撃していった。
「く、来るぞ」
「怯むな撃て!
迫る魔族に怯えながらも隊員達は、魔族へ発砲し続けた。
その光景を後方から眺めているルシファーは、薄笑いを浮かべながら口を開く。
「足掻けよ人類、ただな脅威は俺たちだけじゃないんだぜ」
ーー白石区上空にて
『魔王よ、ここで大丈夫だ降ろしてくれ』
魔王は黒龍に姿を変え、札幌上空を飛んでいた。
その背中には2人の魔族と1人の英霊が乗っていた。
『構わん勝手に降りろ』
『そうさせてもらおう』
魔王からの了承を得たその英霊は、背中から飛び降りた。
『ギュオ』
「た、隊長!空から何かきます」
飛び降りた英霊を1人の隊員が視認し、鈴木にそう伝える。
「な、なんだあれは……人か?」
『ズドォン』
英霊は鈴木大隊長のすぐ近くに着地した。
『……多いな、100、200……いや400近くか』
英霊は静かに自衛隊の数を数える。
『ジャキッ』
英霊は先日、槙島から回収した魔剣を右手に握っていた。
『我が名は深淵王、元"人"であるが訳あって魔族側だ、すまんが君達……死んでくれ』
SSSレアダンジョンアイテム、深淵王。
先日、無理やり適合者したランキング17位の攻略者の肉体と同化し、深淵王は自力での顕現が可能である。
「死んでくれと言われてもな、ここは日本で俺達は自衛隊、国を守らずして死ぬ訳には行かんのだよ」
『そうか……良い信念だ、だが脆く儚いな固有スキル発動、深淵の渦』
『グンッ』
深淵王は魔剣を鞘から僅かにだし、そこから藍色の渦巻きを出現させた。
「な、なんだこれ、す、吸い込まれる」
鈴木大隊長をはじめ、何人かの隊員達がその渦に呑まれていく。
深淵王の渦に呑まれたものは、底のない海に永遠と落ち続ける。
「隊長ー!!」
「私のことは……ごふっ、心配するな、国を、札幌を守れ」
鈴木の名を隊員の1人が叫ぶが、その声も虚しく鈴木は渦に呑まれていった。




