9話 東北遠征③
ダンジョン内で拠点作りは結構簡単だ。
このダンジョンビジネス時代、国内にある9割のダンジョンは1~2層くらいまでは一般解放されているくらい安全なため、ダンジョンでキャンプをする人は結構いる。
そのためダンジョンアイテムもかなり充実していおり、簡易キャンプセットだけでも沢山の種類があり、日夜研究が進められているわけだ。
「よし、各自テントを作れ!」
若織さんがそう言うと各パーティーが簡易アイテムを使いテントの設営に入った。
「柴崎さん、私達はどんなテントを使うんですか?」
「ああ、俺たちのテントはこのダンジョンライフが新しく販売する予定の、"これでダンジョンでも安心!楽々キッド3"を使うよ、はいこれ國枝さんの分ね」
そう言って俺は國枝さんにもダンジョンライフ製のキッドを渡した。
「ありがとうございます、あのこれ本当に安全なんですよね」
「……さぁね」
「え、なんですかそれ、てか視線逸らすな」
前にこれの旧式である"これでダンジョンでも安心!楽々キッド2"を使った際、ゴブリンの群れに襲われ、説明書にはいかなる衝撃にも耐えますと書いてあったのだが、無数のゴブリンが体当たりしたせいで壊れてしまい散々な目に遭った。
まぁ、想定が1~2層だからそんなもんなんだけどね。
「大丈夫だよ國枝さん、今回は各自がテントを張った後、さらにそれを囲むようにこのSレアダンジョンアイテム、見えない城壁使うから」
Sレアダンジョンアイテム、見えない城壁。
半径20メートル程のを取り囲むように高さ4メートルほどの城壁を作り、承認を受けていないものの侵入を阻むアイテムである。
「ならいいですけど……もしなんかあったら覚えてろよ」
國枝さんは最後に何か物騒なことを呟いて、去っていった。
どっちが本当の彼女なのだろう。
彼女の父の牧田さんはとても優しい人だったのになぜ娘の國枝さんはああいう性格なのだろうか。
「柴崎パーティー、テント作り終えました」
「あ、柴崎さん、どうぞ中へ」
テントを作り終えた俺は若織さんのテントに報告しに来ていた。
若織さんのパーティーメンバー、篠田さんに案内され中へ入ったが、めっちゃ広いなここ。
若織さん達のパーティーは、市場に流通していない組合専用の4次元アイテムのテントを使用しているため、テントの中はとても広い。
あとどうやらパーティーメンバー各自に個室も割り当てられているようで、沢山の部屋がある。
ちなみに、俺と國枝さんが使ってるのは市販のやつなので、至って普通のテントだある、國枝さん連れて来なくてよかった……。
俺はテント内にある14畳ほどのリビングに案内された。
「待たせたな」
「い、いえ」
リビングの奥の通路から若織さんがやって来た。
「まぁ座れよ」
「失礼します」
そう言われて俺はリビングの大きなソファに座った。
なんだこの高そうなソファ、こんなのまで持ってきているのか。
流石は高給取り、規模感が違うな。
「お前には先に話しておくが、この探索に東條さんは来ない」
「え?」
いやどういうことだ、今回の遠征の参加者に東條さんの名前があったはず。
もしかして何か理由があって来られなくなったのか。
「正確にはこのダンジョンには来ないだ、遠征には参加しているよ」
「どういうことですか?」
「ふっ、東條さんはなウチらとは別行動をしててな、今、単独で青森第3ダンジョンに行ってるよ」
「なっ!青森に!いや危険すぎますよ」
「おい拓真、落ち着けよあの東條だぞ、SSSレアダンジョンアイテム4つ持ちのチート野郎、1人で十分だろ」
東條蘭丸、攻略者ランキング1位。
通称、天下無双。
S3攻略者にして、おそらく史上最強の攻略者。
SSSレアダンジョンアイテムを4つ、SSレアダンジョンアイテムを9つ所持しており、国家戦力並みの強さがあると言われている。
「ま、まぁあの人なら大丈夫だとは思いますが、俺だけでも行ったほうが……」
「お前はここに必要だ残ってくれ、それとお前がいっても足手纏いだろう、まぁ誰がいっても足手纏いだろうけど」
「そうですけど」
「まぁ気持ちはわかるがここは従ってくれ、今回の遠征でやるべき事は2つ、1つは竜人族との交渉、もう一つが青森第3ダンジョンの攻略だ、青森は奴に任せて、ウチらがやらなきゃならないのは竜人族との交渉だ」
りゅ、竜人族との交渉?
どういう事だ、なんでダンジョン内の種族と交渉?ていうか交渉内容はなんだ。
一体これから何が始まるっていうんだ。
「なぜ交渉をするんですか?」
「味方作りだよ、魔族との戦いに備えて強い味方を集めておきたいんだ」
なるほど味方作りか。
でもダンジョン内で生活している種族がダンジョンを攻略しようとしている俺達の味方になんてなってくれるのか?




