外伝3話 得られた幸せ
今回外伝3話を書きました是非見ていただけると嬉しいです
ノイルさんのところに引き取られてから、俺はノイルさんが経営しているバーの手伝いをするようになった。
最初は作られた物を運ぶだけの簡単な仕事だったけど、人前に立つことに慣れていなくて緊張し、食器を落としてしまうことも多く、そのたびによく怒られた。
それでも、どれだけ怒ってもノイルさんは優しかった。
俺がやらかしてしょぼんとしていると、ノイルさんはいつも決まって生姜焼きを作ってくれた。その味はとても美味しく、さっきまでの出来事を忘れるには十分すぎるほどだった。
そしてノイルさんは、いつも俺にこう言っていた。
「人生で大事なのは情報だ。いいか?情報一つで人の命をいくつも守ることができる。それともう一つ必要なのは勇気だ。勇気があれば、いついかなる時でも自分の身を守り、他者を守ることができる」
その意味が当時の俺には分からず、「はーい」と聞き流していた。
ノイルさんのもとに引き取られてから、俺の見る景色は360度以上変わったと思う。
ねずみの死骸、灰色の空、薄汚い路地。そんな世界から一変し、青い空、ノイルさんの美味しいご飯、のどかな風、そしていつも賑わっている店。
その時俺は、ずっとこの景色を見たかったんだと気づかされた。
あまりにも綺麗で、ただ景色を見ているだけで涙を流すこともあった。
そのたびにノイルさんは呆れたように「おい、こんなんで泣くなよ」と言う。
それに対して俺は、「だって!今までこんなに綺麗なもの見たことなかったもん!」と返す。
そんなやりとりが、いつの間にか当たり前になっていた。
ある日、ノイルさんに「なぁ、明日予定空けとけ」と言われた。
「なんでですか?」と聞いても、「いいから」としか返ってこなかった。
特に予定もなかった俺は、言われた通り身支度をしてその日は眠った。
翌朝、早くに起こされて「着いてこい」と言われ、眠い目をこすりながら後をついて行った。
「ねぇノイルさん?今どこに向かってるの?」と聞くと、「素晴らしい場所だよ。もう少しだから」と言われた。
しばらく歩いて、山の頂上に着いた。
「ここがそんなに素晴らしい場所なの?」と聞くと、「あぁ、あそこを見てごらん」と指を差された。
その先にあったのは、とても綺麗な日の出だった。
あまりにも綺麗で、思わず見惚れてしまった。
「どうだ?綺麗だろ?」と聞かれ、「はい!とっても綺麗です」と答えると、ノイルさんは嬉しそうに言った。
「おまえがここに来て初めての年越しだからな。ここの日の出は一番美しい。是非見てもらおうと思って、昨日から準備してたんだよ」
もう一度日の出を見つめると、冬の寒さとは別に、心が温まっていくのを感じた。
俺はノイルさんの方を向き、満面の笑みで言った。
「ノイルさん、俺、今とっても幸せです」
ずっとこの幸せが続きますように。
心から、そう思ったのだった。
次回も楽しみに




