卒業したら
今年卒業する沢山の高校生が広いスタジアムのグラウンドに整列している。
各校毎に卒業式を行なうより効率を重視して、街中の高校の卒業生が集められ行なわれている合同卒業式。
グラウンドの正面の壇上で煌びやかな勲章を胸に沢山付けた軍人が、「卒業おめでとう!」と僕たち卒業生に声を掛けた。
でも、それに応えて「ありがとうございます」と言ったのは、壇上の近くの席に座る運が凄く良かった100人程の者たちだけ。
凄く運が良かったって言うのは、グラウンドに整列している僕たちも壇上の近くに座っている者たちも、全員が遺伝子レベルまで操作されて人工的に作られた子供だから。
そういう訳で能力は僕たちも壇上の近くに座っている者たちも殆ど同じ。
違うのは持って生まれた運だけだった。
だから運が悪い死んだ魚の目をして俯いて整列しグラウンドを睨んでいる僕たちは無言。
凄く運が良かった100人程の者たちは卒業後大学に進学する事が決まっている。
それに対しグラウンドに整列している僕たちは此れから4年間の兵役につかされるんだ。
今祖国は異世界からの侵略者と戦争の真最中。
兵役につかされる僕たちの約9割は兵役が解除された時には死んでいる運命。
残りの約1割の生き残りも運が良い奴で身体の数パーセント、運が悪い奴は身体の大半が義体に置き換わっている事だろう。
義体の身体とはいえ生き残る事が出来た者たちは、生き残った褒美としてバグる可能性があるアンドロイドでは代用出来ない仕事を斡旋される。
僕たちの此れからはもう決まっているのに卒業を喜べる訳が無いだろう。
煌びやかな勲章を胸に沢山付けた軍人が号令の声をあげた。
「出撃ー!」
グラウンドに整列している僕たちは出入り口から遠いところに並んでる者たちからノロノロと動き出す。
壇上の前に歩み寄って卒業証書の代わりに装備一式を受け取る。
それからスタジアムから出て重い足どりで戦場に向けて歩きだした。