第8話:騙る悪意
合流を終えた後、互いに初対面で主な戦闘方法もまだ把握出来てない中では、この先敵と遭遇した際の立ち回りに困るだろうというクロエの提案で、2人は現在移動をしながら互いに必要な情報の交換を行なっていた。
「まず、ワタシの武器はご覧の通りの大砲です。と言っても大砲とは大幅に構造は違いますが強いですよ、連射したら冷却する必要が出て来ますが、着弾すればドカーンです。爽快でナイスガイな一品です」
「ナイスガイ、男なの?この武器」
「絶世の美男子です、まぁそれは置いといて」
「1人で言い始めて俺ごと勝手に置いていかないで!?」
「貴方はこの世界に来て間もないとお聞きしております。ワタシの武器も魔力を介するのですが、ワタシの戦い方を説明する上で必要な解説があります。スキップしますか?」
「せ、説明をお願いします……」
「では、時間もないのであまりしっかりは説明出来ませんが、少し魔力と魔術についての説明をして差し上げます」
この世界における魔力とは空気中に常に漂っているエネルギーであり、枯渇しない無尽蔵なもの。
だが、その魔力というのは何なのか、それは魂の欠片である。生物が生きている間はそれの実在性を実感する瞬間を中々持つ事はないであろう精神の実体、その塊が欠けて、欠けて、その末にこの世界の中に漂い続けている。
その内にあった存在の修復は最早出来ず、出来るのは生きる為の有効利用。魂の欠片に残されたのは無念、怒り、憎しみ、羨望、それだけになる為、壊す力として使う方が親和性を持つ。
それらが時には自然と凝縮し、魔石となって特殊な魔力の塊となる事もある。
「そうか、だから集まると空気が重くなるんだ」
「はい、それが救助以外の意味でもここでの作戦を急いで終わらせなければいけない理由です」
「じゃあ何故ここの化け物は平気なんだろう、そこに順応した生物だからってだけ?」
「いいえ、彼等にも耐性の強弱はあります。強いほど成長してしまう事例もあります」
「成長、強くなるの!?」
「ええ、大きくなったりしますよ。時には魔術を行使したりね」
そうして、クロエはそこから先ほどの話の続きを口にした。
そこから魔術という指向性を持たせるにはどうするか。元が炎や氷を出す為にあるわけではないそのエネルギーに対して、夢の世界は意識を要としている影響か、想像を中心に置いた。
それを想像し、信じられる心が重要で、炎なんて出せるわけがないと思う限りは出せない。だが、そこで人にも放てると信じさせる言霊、詠唱が存在する。これを唱えれば、この術が発動する、そうした結びつきを生み出し、組み立てる事が出来るそれはこの世界における魔術には必要不可欠である。
そして、その想像を魔術として出力する為に魔力は自在に量が調整出来るのかと言えば、そこも人によるところが大きい。そもそもが、その人の意識の形で適性が変わる、身も蓋もない言い方をすれば才能という言葉になるだろう。
加えて、夢の世界にも環境があるからか、周囲の環境による影響を受けて使いやすい術式があるという事、故に魔術とは自由自在とはいかない。
「ワタシの使うこの武器、想撃砲はある程度誰でも術による攻撃を可能とさせる武器なんです」
実弾ではなく、魔力を充填して射出する。魔力を利用し、この武器を杖と定義するように媒体にして魔術を放つに等しい。
だが、その分の難点は存在する発動する術式は自在ではなく、決まった形で射出をする以外の使い方は出来ない。魔術を使う為の媒体というよりも、火を点ける為の道具、雷を発生させる装置、そうした物に近いものであり、術者としての適性の低い人でも使いやすい汎用魔道具としての側面を突き詰めた武器がクロエの持つ大砲の強みである。
「というわけでして、ワタシは後衛になります。敵をこれで殴る事は出来ますが、ご覧の通り機敏に動き回れる代物ではありません。加えて、魔術は不得手なのでそれによる支援は行えない事、そしてこの濃度の魔力を敵が利用するかもしれない事、それを念頭に置いてください」
「分かった、気をつける。俺が前を務めつつ、クロエさんが撃ちやすいタイミングを作ったり、クロエさんから敵の狙いを外してそこで一撃って感じだね」
「そうです、残念ながらここに出てくる生物はどんなものかは分かっていないので大まかな話になって申し訳ないのですが、このワタシ天才美少女戦士クロエちゃんにお任せ頂けたらフォローも完璧です。何とかなりましょう」
「心強いよ、俺はまだまだ未熟だから」
「ふふふーんです、ではそんな勇者様にお聞きしましょう。何か違和感を覚えませんか?」
「違和感?違和感って──」
その指摘を受け、今自分が走っている状況を思い返せば、外から見ていた通路以上に走らされている気がしていた。坂道を上っているせいで余分に長く道を歩いている時と似た感覚だろうか。
思考が巡る、落ちていたお守り、そこから見かけない要救助者、彼女の話していた魔力濃度の高い場所で成長する化け物。
葵は足元を見る、思考が巡るごとに今歩いている地面の硬さが何かの歯の上だからなのではないかと思えてきて思わず唾を飲みこむ。
「この辺りで良いでしょう」
答え合わせと言わんばかりに片手で葵に下がるように指示をした後、武器を足元に向け、想撃砲のトリガーを弾く。
「うわっ!?」
熱気、爆風、肌に熱風が張り付き、地面の振動が足を伝い、耳には轟音が鳴り響く。
人が持つ事を想定された武器とは言え、便宜上であっても大砲と呼ばれるだけあって、その一撃は重く、生身であればその反動と熱だけで身体がただでは済まないであろう事が分かる衝撃がそこにはあった。
その一撃に対して景色が反応を示す、地面だと思っていた場所が硬度を変えて柔らかくなり始める。
「これは……っ!?」
「通称、騙る者です。カメレオンのように擬態し、根気強く餌の油断を待つ暗殺者のような個体です」
驚く間も無く地面の皮を被ったまま騙る者が1人でに走り出す、痛みと作戦の破綻から2人を振り落とそうとしながら奥の方へと。
「逃がすか!!」
足元は安定せず姿勢を崩しそうになるが、逃げ出そうとするそれを黙って見過ごすわけにもいかない。
移動を始めた事でクロエが砲撃して焼けた箇所が葵の足元にまで来ていた、その身体の表面に刀を突き立てる。鱗のような質感だが先程の一撃が鱗を皮ごと破砕したのか、肉の弾力以外阻む感覚は特別感じる事なくそれは入り、耳をつんざくような咆哮が放たれる。
「っわぁああ!!」
「勇者様!」
咆哮と共に振り落とさんとする動きはより苛烈さを増し、葵ごと奥の部屋の壁へと突っ込んでいく。
「ぅがぁっあ!?」
石壁も砕く体当たりに巻き込まれて、刀も引き抜けるほどの勢いで葵の身体は叩きつけられる。
蠍との交戦の際に感じた肩の痛みがぶり返し、肩から背中にかけて熱を持っている。
だが、葵が地面に伏している時間は短く、刀を杖代わりに立ち上がる。まだ交戦しているとは言えない段階で倒れている余裕は今はなかった。
立ちはだかる騙る者の姿は額に妖しく光る石を埋め込み、コブラの身体に百足の足をつけたような大蛇の化け物だった。
土煙を巻き上げながら、怒りに震える大蛇は葵を喰らわんと牙を向けてくる。
「危なっ!くそっ、この世界の生物皆凶暴すぎる!!」
顔ごと突っ込んでくる攻撃を横っ飛びに回避行動をしながら口の端に刃が触れるように斬撃。
大蛇の牙は空を切り、勢いよく地面に齧り付く。
「ふうぅ、鱗みたいなのが見えたのは蛇だったからか、それにしたって硬いけれど……」
「うぅっ……」
「!?」
葵の背後から聞こえたか細い呻き声に振り返ってみると、小学生ぐらいの女の子が倒れている。恐らく彼女がここへ逃げ込んだ一般人だろう。
細かい傷は見えるが、大怪我を負っている様子はない。だが、この場所そのものの影響で衰弱しているのか起き上がる事も出来ない様子だ。
「早く地上に連れて行かない、とっ!?」
少女を抱えている間に大蛇の尾が鞭のように葵と少女を狙って振り回される。庇いながらなんとか走り抜けて入り口側に転がり込む。
ある程度は受け流すように背の角度を変えたりしていたが、それでも全てをかわし切れたとは言い難く、背中から肉の裂けた鋭い傷が葵を苦しめていた。
無論、尻尾は牽制。敵は動きの鈍った獲物を捕食せんと大口を開けて葵達に正面から襲いかかってきていた。
「っぐ……!痛くない!全然平気だ、かかってこいよ!この子は俺が守ってみせる!!」
下ろした少女を背に大蛇を見据えながら刀を構える、勝算あっての言葉ではないが、やらねばやられる。自分のみならず、力を持たない少女まであっさりと殺されてしまう。
それだけはあってはならない、皆の前で勇者と名乗った以上どれだけまだまだ未熟であってもその責を果たさねばならない。
なにより、今回は危機を越えねばならないのはたった1人で、ではない。
「勇者様、耳を塞いでください」
1人の影が部屋に滑り込み、大蛇を砲門で捉えていた。
「クロエさん!」
右目を狙って魔力による圧縮弾が放たれ、着弾の瞬間に大蛇の顔がその衝撃で揺れる。
だが本命はその後、この武器の破壊力を味わう事になる前に、警戒心からか大蛇が首を少し後退させるが、それでも訪れる。
爆発という破壊。
「遅れに次ぐ遅れ、取り戻します」
爆発の影響で右目の周囲が鱗越しに水ぶくれと皮が裂けているのが見える、そのダメージを受けた分の反撃として複数の鋭い足で刺し殺さんとクロエに向けてくる。
だが、1番先に到達する足を砲で弾き、2本目、3本目と足を横っ飛びにローリングして回避をし、4本目を側面から蹴りを入れて1番目の足にぶつける。
「勇者様、貴方の近くにある足を弾き飛ばしてください!」
「了解!」
そうはさせまいと狙いの足を葵にも向けてくるが刀を両手で握り、先端を受け流す様に払い、地面についたところを足の側面から全力でバットのようにぶつける。
クロエの指示通りに弾き飛ばすと足同士がまたぶつかり、足の束が出来る。それを確認したクロエは地を蹴り、壁を蹴って高度を稼ぎ、足の上に降り立つ。
関節に向けて放つ爆裂弾、どれだけの硬度を持っていたとしても足の中でも細いその部位に至近距離で爆発が起きればタダでは済まない。
「ファイア!」
容赦のない爆破、その反動に任せてそのまま葵の側に着地した合流するクロエは小さく息を吐く。
焼け爛れ、半ば千切れているその足達の痛みに雄叫びをあげる大蛇、自分からその不要になった足を切り落としている様子を横目に2人は手短かに次の方針についての話し合いをする為に顔を寄せる。
「た、助かったよ。クロエさん」
「いいえ、こちらこそですよ。その子を保護してくれて助かりました、ありがとうございます。救助対象でしょう?」
眠っている少女の呼吸は浅く、顔色も悪い。時間の余裕はあまりないのだと目視すると、自然と鼓動が早くなる。元の世界にいた頃の自分のままだったら、きっとそうなっていた、沢山の元の世界の自分がこの世界に迷い込んでいる。
急がなければと、自身の胸に手を置いて深く頷く。
「うん、でもかなり弱ってるんだ。今すぐあそこから脱出しよ……」
2人が同時にその為に動き出そうとした、その瞬間──
「っ!!」
土煙を裂いて2人の間を目視出来ない速さで何かが通り抜けた。遅れて通り抜けた風が、重量のある物が複数落ちる轟音が発生する。
それが何なのかが分からないままに、視線だけを落とすと、掠めた葵の髪束が音を立てる間も無く黒い塵となって風に舞っているのが見える。少しでも立ってる位置がズレていたらどうなっていたか、それを想像して冷や汗が伝う。
「勇者様、出口が破壊されました!」
「えぇ!?」
何かが通り抜けた先を見ると通路の入り口側が崩れて瓦礫で埋まっている。
葵の内心ではどうしなければいけないかという焦燥と、どうするのが正解かという混乱と、こんな悪い状況が立て続けに訪れる理不尽に対する怒りとで頭の中は整理のされていない引き出しのようになっていた。
だが、そんな考える隙を与えないように半ば突進するように大蛇が突っ込んでくる。クロエは少女を抱えながら反対方向に走り、葵はスライディングで地面と大蛇の隙間を潜り抜けて回避を行う。
「クロエさんの大砲で破壊は?」
「可能ですが、既に脆くなっているあの場所での爆破は賭けになります。加えて直線の通路です、この子を守り切りながらその作業を終えられるかも賭けになります」
「じゃあ、他に手は!?」
「あります、ですが出来れば瞬間的に大量の乱れていない魔力を確保したいです」
「その心は!」
「地面に向けて最大出力で砲を発射して、上の光の出ている場所から脱出します!」
この場所自体魔力の濃度が高いとはいえ、この場所はあの大蛇という主が先ほどの何か、熱線と思われるもののように敵が術を乱用していては魔力が分散し、ムラが発生する。
魔術のみを使用するならばそれでも問題ないが、この想撃砲の場合出力に影響を強く受ける。彼女の考えている事を実行するとなれば、この化け物を仕留めて魔力の乱れを鎮めるか、それか──
「うわっ!っ、クロエさん!あの蛇の額についてる宝石ってもしかして、魔石なのかな」
突進の後、その足を生かして這うように壁を移動しながら2人を追跡してくる大蛇はその体躯もあってか思いの外速度があり、追いつきそうになる度に首を伸ばして喰らわんとしてくる。
少女を片手に抱えてもう片手に武器を持っているクロエのフォローをする為に、わざと後ろにいる葵は速度を時には落として気を引いたりしているがいつ追いつかれるか分かったものではない。
だが、その分だけ大蛇の顔を見る機会も多い、だからその石について推測を立てることも。
「恐らくそうかと思われます、魔石の出来る条件の1つとして高濃度の環境はやはりあるので、融合した可能性は大きいです。ワタシも同じ事を考えていました、アレを利用すればいけます」
「なら、頭の方に安全に移動出来れば良いんだね!分かった!」
その言葉を聞いたのか否か、大蛇が走るのをやめ、その身体を持ち上げたかと思えば、全身で押し潰すように倒れ込んでくる。まるで挑発するようだ、容易く潰せる程度の大きさの生物を相手に。
2人ともがスレスレのところでその影から飛び出し、葵は蛇の側面に刀を逆手に持ちながら側面を斬り裂き、クロエは蛇の足の関節目掛けて砲を放ちながら距離を取る。互いにその目的の為に動き出す。
「出来れば早く倒れてくれ!」
クロエに撃たれた足が変な形に曲がったからか、一瞬動きが緩んだ瞬間を狙って足元に近付き、細いその足先を払うように刀を振るう。
それによって、足が一瞬浮いたのを見てから足の上に飛び乗り、1回、2回、3回と同じ場所を斬りつけてから突き立てる。
だが、額の宝石が赤く光ったと思えば今度は拡散した光の弾が葵に向かって意思を持つかのように放たれる。熱線よりも速度は遅いとはいえ、自分を追尾してくる弾を回避し続けなければならないのは体力的にも厄介だ。
「っ、ゆっくりしてられないってのに!」
1本足を潰し終えた葵は次の足に掴まり、一度広さのある背中に飛び乗る。
正面から、頭上から、背後から迫る魔法弾を駆けながら眼前まで来てから首をそらして、時には前に転がり、上半身を低くして、引きつけてから回避行動を続けていく。
全てがスレスレでその様子ほどに葵に余裕はなく、呼吸が乱れる、攻撃が出来ないのに体力だけ奪われることは苦しい。
一方のクロエも魔法弾に追われ、少女を庇いながら走っている為か細かい擦り傷が目立ち始めている。だが、会話していた時と同じように表情を変えず、物理攻撃を仕掛けてくる時には砲撃し、魔法弾には大蛇の身体を盾にして躱しつつという事を要求されていた。
加えて、この場所の魔力濃度はクロエにとっては毒、時間をかけられない事情は幾つも重なっている。
だが、首を振って敵の動きを注視していたら、敵の動きが少し変わった事に気付き葵の方に向けて走る。
「勇者様!壁へと移動するつもりです!一旦降りてください!落とされますよ!」
「ごめんなさい!でも、このまま壁から魔術を一方的に撃たれたら危険だ!俺は蛇に張り付いてそれを阻止する!」
「危険です、下手したら死にますよ!」
「大丈夫!だから、クロエさんは引き続き援護を!」
「っ、賭けますよ!」
敵の動きは素早い、壁であろうと地面であろうと自在に動き回る事を今までして来なかったのも一種の挑発じみた行為の延長線上だったのだろう。だが、それを止めた以上これまでより戦い方は得意の魔術中心となるだろう。
葵は立てないほどの角度になる前に鼻先に掴まり、間も無く大蛇は壁を這い始める。
「う、ぐぐぐっ!!」
手に最大限の力を込めて鼻先に飛び乗る。
外れた顎のダメージはあれど、それでも眼前の餌であり敵である葵の行動の自由を奪うのに最も適していたのは喰らいつくこと、バランスの悪い足場では実際それは効果がある。
加えて──
「っあ゛あぁあ゛うぁ!!」
目視不可の熱線。
揺れが幸いして直撃を避けられたが、左腕が掠めただけで瞬く間に焼け焦げ、抉られる。
肉の色が露出し、剥げた皮はその周囲で赤黒く変色している様子を目にしただけで血の気が引き、痛みを実感し始め、脈打つ動きすらもその部位に痛みを訴えてくる。
痛みを軽減させようと呼吸を短く繰り返すが、それでも治まってはくれない。そう、今はそのゆとりはないのだ、だから──
「痛くない!!痛くなんかない!!落ちろ!!落ちろよ!!」
代わりに葵の身体が半ば本能的に動いていた。怯んだ瞬間を狙って伸ばされた長い舌を左手で無理やり鷲掴み、刀を振り切り舌を分断。
壁に張り付いたまま全身が波打ち、痛みを払い、葵を振り落とさんと動きは苛烈になる、そうなる事は分かっていた。それでもクロエの警告よりもこちらを優先した分、完遂しなければ彼女に申し訳が立たない。
「勇者様、撃ちますので揺れに気をつけてください!」
瓦礫の一部を踏み台にして大蛇の足に当たるように壁に向けて放ち、着弾と同時に破裂した魔法弾は鋭いその足を置こうとした壁が崩れ、それによって発生する足を踏み外す一瞬が大蛇の巨体のバランスを揺るがす。
そのチャンスを逃さない、狙う箇所は1つ。ここから葵が足を狙っても機動力は奪いきれない、口の中は地獄に自分から飛び込むようなもの、ならばどこか。この生物の基本の形状が蛇である事、それを思えばそこが脆いのは確かであった。
「今だああぁぁぁあ!!!」
蛇の脳のある位置、1度深く突き立て、次には身体ごと半ば突っ込むように頭蓋を貫きながらその刀を脳天に叩き込む。
葵の叫びと大蛇の断末魔はその洞窟内に響き渡った。