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永劫の勇者  作者: 竹羽あづま
第1部勇者、汝の名は?
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第6話:その名が背負うもの

「………………」

「アオイ」

「……………………」

「聞いてるの?アオイ」

「えっ!?あ、ごめん、聞いてなかった」

「んもぅ、あの話聞いてから口からずっと魂出てるじゃない」

「色んな考え事が喉につっかかって魂が飲み込めなくなってるかも……」

「お水で流し込みなさい」

「お水で飲み込めるかなぁ」

「じゃあゼリーに包んであげなさい」

「リンドは俺を薬を上手に飲めなくて困ってる子供か何かだと思ってない?」


 現在2人は艦橋ではなく、船の中にある緑の多い広場に来ていた。こうした所も含めて軍艦めいた雰囲気というよりもまさに客船、人の想像する安心と安全と癒しの夢が詰まっている様な場所だ、外で見てきた景色とどちらの方が虚構だと思えるのかと言う領域の話だろう。

 だが、そんな気が休まる場所においてもエレンに告げられた一言が回って離れずに葵の頭を悩ませていた。


『だって、貴方は我々の勇者だもの』


 エレンはそれに対してすぐその場で返事をする必要はないと言いはしたが、あの言葉の衝撃と混乱は大きかった。

葵はあくまで自己を多くの人間の内の一粒であると定義していて、その中でも特別な何かを持たない人間だと考えている。そしてそれは事実だった、幼稚園に通って、小学校に通い始め、中学校に行き、市内の公立高校に通い、大きな怪我や病気も経験した事のない4人家族。

 そうして生きてきた葵は特別何かを持たない事が決して悪い事とは思っていなかった、むしろ自分の様な人間に特別が課される状況などあってはならないとすら思っていた。それを背負える様な覚悟が自分にあるなどと到底思えない、だがそれはあくまで責任から逃げたいわけではなく、ただ自分にそんな器がどこにあるのかと思っているだけ。

 そこの境界が極めて繊細で、人からどう見えるかは置くとして。


「アオイは嬉しくなさそうね」

「嬉しいとか嬉しくないより……なんだろう、勇者はどんな苦しい旅も、戦いも、最後には必ず終わらせる存在。ちゃんと幸せになれる事もあれば、故郷に帰れなくなるという最後があったとしても、成し遂げるすごい存在。それが出来る勇者はあくまで俺にとってはフィクションの中の英雄だ」

「勇者が生まれつき勇者とも限らないのよ」

「リンドは勇者になって欲しいの?」

「貴方はなりたくないの?勇者」

「……こう、なりたいとか、なりたくないというよりも、ただすぐにそういう物だって思えていないだけなのかもしれない。冷静になってもどのみち今は分からない事だし、理解が後から出来るんだろうから、それもこれもひっくるめて受け入れたら良いのにとは自分でも思うんだ」

「自覚はあるのね、でも地球人だものね貴方」

「うん、生まれも育ちも地球人だから困ってる。こんな言葉を使う日が来るとは思わなかったよ」

「繊細で難儀な困った所有者ねぇ」


 苦笑を浮かべる少年、これまでは平時の際に多くを語っていなかったが、こうして考えを垂れ流す様に言語化しているのは、言語化するという形で思考力を割いて脳を落ち着かせようとしているのだろう。

 自分とは違う考えを持つ彼女に聞いてもらう事で、何か意見が出るなら耳を傾け、何もなくとも聞いてもらえるだけで助かる、葵は悩むという事でいかに脳が疲れるているのかを実感させられているのだろう。この世界に来てから最も過酷な労働を強いられてる部位だ。


「……アオイ。貴方の気になってるであろう事の1つを教えてあげる」

「え?ありがたいけど、いきなりどうしたの?」

「疑問が山になってる様だもの、すぐに私が分かる物なら処理してあげる。その方が考え事もやりやすいでしょ?」

「それは、そうかも」

「ね、だから貴方の身体について私が見た事を教えてあげる」


 この世界に来て早々にこの世界が大まかにどういう物なのかを教えていたのも彼女だった。

 葵の今現在の悩みは彼自身の気持ちの問題である以上それに答えを提示する事は出来ない、それなら積み重なった悩みという名の宿題の1つを済ませる事が1番だと考えた。

 彼女がそうする理由は単純、ただスッキリするから。それも含めて彼女の行動指針は自分の為であるところは大きいがその為に葵の存在は欠かせない以上、彼が1人で潰れる事はリンドにとっても本意ではなかった。


「貴方、目を覚ました時に無傷で驚いたでしょ」

「う、うん。俺の記憶の方がおかしいのかって思ったほど」

「その怪我をした部位ね、服も含めてだったわ。暫くしたら勝手に治ったのよ」

「え──」


 思わず耳を疑う、彼女は何を言ったのだろうか?


「いや、だって……俺、ほぼ死んでたよね?多分撃ち抜かれてたら駄目そうな場所とか、いっぱい……」

「言っておくけれど、怪我をしても平気なんてこの世界でも当たり前ではないわよ。この船の人とかが貴方と同じ怪我をしたらちゃーんと死ぬわよ」


 自身の身体に触れてみるが触れたところで何か分かるものではない。しかし同時に分かったのはあの痛みと苦しみが決して嘘ではないという事。勝手に治ったというのが比喩ではない事。

 だが、この世界が何かおかしいのだとしても、普通は死ぬのだとしたら何が起きているのか。リンドもまた例外的に怪我をしても平気だった様だが、まさか彼女と同じ様な肉体になっているとでも言うのだろうか。

 しかし、そうだとしたら彼女自身の口でそうだと言う可能性が大きい、覚えのある様子だろうから。だとすれば尚更葵には分からない事だらけだ。


「そうね、正しくは再生成の方が近かったわ、巻き戻しというよりも、既存の記録を参照したって様子。分かる?」

「えっと、つまり……データをロードをした?」

「そう、その理解で良いわ。そうなっていたのよ、貴方」

「何で……君なら何でか、分かる?」

「……この世界は、夢の世界と言ったでしょう。だから皆は夢を見ている、意識だけで人が呼ばれてる世界。だから、現実では出来ない様な動きも出来れば、力も持てる」

「そういえば、夢の中だとすごく早く走れる事もあったり、パルクールみたいな動きが出来た経験もある、それと同じ事?」

「ええ、そうよ。いつもの夢との違いは自分のその力に指向性を持たせられる程度の違いしかないわ」

「だとしたらすごく便利な事に聞こえるけれど、そうではないんだよね」

「その通り、皆の身体は今も地球にある、つまり身体が要である事は変わらないからこそ致命的な脆弱性がある。意識が死亡状態になると永久的な意識不明の状態に陥る事、つまり生きるか死ぬかは現実と変わらないという事よ」


 そう聞きながら葵は自分の顎を撫でて思考する、夢の中ならどんな力でも持てる、それに指向性を持たせられるのがこの世界だと言うが、それ程の万能性ならば死亡の危険もそこまで大きくはない。例えゼーベルアの様な相手が現れてもどこまでも強い自分を思い描けば対処は出来るだろう、無論相手も同条件ならば相応の危機はあるかもしれないが、脆弱性たる要因。


「意識が要だと、逆にいえばどこまでそれに対して認識をちゃんと出来るか。そこに心の中で不純物が混じると何でも出来るとは限らないんだ、疑うと出来ない、戦えない。そしたら、この世界の化け物相手にだって元の世界の身体の様に容易く殺されてしまう」

「ええ」

「なのに、俺達の現実と違って命の危機が身近な世界。しかもこの船に遭遇出来るとは限らない……そうか、普通はほとんどの人は死んでしまうんだ」

「そう、だからこそ貴方はおかしいのよ。貴方はそのまま死んでもおかしくなかった、だけど何らかの要因で死ななかった……貴方は何か違う形でこの世界に囚われてるのかもしれないの」


 だとしたら、勇者だと言われたのはそれに起因する物なのかもしれない。しかし、それだけなのだろうか、この世界における一種の不死性は確かに戦力として見たらとても便利だ、周囲と違いリスクを背負わずに戦える。

 死の恐怖や痛みの苦しみという点を除けば、だが。はたしてエレン達がそれだけを理由に、そしてそれにやる気を出してもらう為に皮肉めいた名称としてその名を使うのだろうか、葵にはそれが引っかかった。腹の底など分かったものではないのはそうかもしれないが、そうではない気がする。


──いや、違うな


 ただ、この安息の地に思える場所に疑念が湧く様な思いを抱きたくないだけなのかもしれない。疑えるだけの理由も、権利もないのにそんな事を考える方が嫌になるだけだ。そして、首を振って自分の考えを追い払えば、リンドの方に向き直る。


「……うん、ありがとう。とりあえずこれが当たり前ではない事が分かって良かった」

「混乱増してない?大丈夫かしら?」

「まぁ、大丈夫。謎は確かに増えたのかもしれないけれど、俺が何故か死ななかったお陰で君との約束を守れたんだから」

「……貴方、ふわふわのよろよろのくせに、たまに格好付けたがるのはどういう癖かしら」

「え゛ぇ!?い、いや、格好付けたつもりは……」

「ありがとう」

「え」

「貴方の言う通りだもの、あのまま私が所有者を得られなかったらどうなってたのか分からない、道具が持ち主を選べるなんて奇跡が与えられたのに、それがなくなる所だったもの。だから、本当に助かったわ。ありがとう、アオイ」


 元から気遣いの精神はあれど、女王様一歩手前の様な雰囲気が基本の彼女から真っ直ぐな感謝と、向けられる小さな笑みに思わず葵の視線は泳ぐ。自分の耳を触りながら、その温度の高さに困惑していた。

 だが、今感謝をしたいのは葵の方でもあった、この世界における自分がどんな立場なのかの一片をようやく知る事が出来た。思いの外彼にとってはそれが心細かったところもあった、他にも似た様な性質を持つ人がいるのかもしれなければ、いないかもしれないが、それは別にどちらでも良かった。

 分からないという心細さこそが問題だったのだから。


「……ところで」

「うん?」

「何のつもりかしら、ずっと葵を見てるあの人達」


 彼女に言われてからそこ視線の先に目を向けると、影から様子を伺っている子供達の姿があった。


「あのお兄さん?」

「あのお兄さんだよ、あのお兄さんが勇者だって」

「マントは?伝説の剣は?持ってないんだぁ」


 葵の方に向けていた視線は彼と目が合った瞬間に視線を逸らし、3人で固まって作戦会議の様な形になる。

 だが──


「君達、どうしたの?」

「「「びゃあ!!!」」」


 綺麗に声を揃えて3人一斉に驚く様子に苦笑を浮かべる、直前まで話していた内容から察するに葵が勇者として指名を受けている事はどうやら知っている様だが、この反応では幽霊との遭遇さながらだ。

 女の子が1人と男の子が2人、7〜8歳ぐらいの幼い子供達だ、好奇心旺盛なところがあるのだろう。


「初めまして、俺に何か用事かな?」


 改めて目線を合わせる様にしゃがみながら声をかけると、3人が顔を見合わせた後に同時に頷く。


「確保!!」

「確保からの!!」

「連行!!」


 葵の両の手を男の子2人が掴み、女の子が先導してどこかへと走り出す。

 元の座っていた位置から見ていたリンドは瞬く間に拉致される様子に一瞬目を丸くしていたが、暫くしてから大急ぎで拉致された所有者を追いかけ始める。


「って、アオイ!!簡単に連れ去られてるんじゃないわよ!!」



「到着!!」

「無事到着!!」

「3人怪我なく無事帰還!!」

「な、何が起きたんだ……」


 満足げにしている子供達の後ろで腰を叩いていだが、顔を上げるとそこは共有スペースの様な場所。木製の床に白い壁、机や椅子も木製で作られており、設置された観葉植物も温かみを感じさせる。共有スペースからは3箇所に扉が設置されているのはどうやら扉横に書かれている内容から一般人達の居住区に繋がっているらしい。

 そして、その居住区の利用者である人々の憩いの場に連れて来られた葵は当然その人達の視線を集める事になる。


「ぅ……」


 皆の困惑の表情と、誰なのかという表情、それが自分という1箇所に集まるのが苦手な葵は人前なのに思わず顔を歪めそうになったが、前に立っている子供が手を広げる事でそちらに視線が向いてそれは防がれた。


「みんな!僕がゆーしゃ様を連れて来たよー!!」

「勇者のお兄さん連れて来ようって言ったのは、百合香だもん!」

「ルーイずりぃ!オレだもん!」

「翔も百合香もひどいよ!僕だもん!」

「ま、まぁまぁ、君達が力を合わせて俺を連れて来てくれたんだよね」


 葵にそう言われ、言い合いしていた3人は得意げな笑みを各々でしてこの場は丸く収まったらしく胸を撫で下ろす。

 そんな中、やつれた様子の大人の男性がゆっくりと葵に近づいて来る。続いて老若男女、様々な戦えないであろう人々が葵の前に集まってその姿を凝視している様子は、さながら品定めする様に、確かめている様だった。

 ここまで勇者とエレンに指名されているという事を知られている様では外堀が埋まり過ぎている、最初から断る可能性という道は崩落させられているのではないのだろうかと内心で葵は考えてしまう。

 だが、そんな考えを沢山の声が掻き消す。


「勇者様だ!!」「え、この子がかい!?高校生じゃないか!」「日本人かい?男にしてはちと小柄だなぁ!」「ちょっと、失礼ですよ!」「勇者様!良かった、私達は地球に帰れるのですね!!」「あ、握手して下さい!!」


 葵の今までの中でトップクラスに理解しきれない状況に陥ってしまい、作り笑いを浮かべながら握手に応じたり、頭を下げているので精一杯だった。


「えぇと、初めまして、滝沢葵です。皆さんと同じ地球人です、まだ若輩者の身ではありますが、よろしくお願いします」


 名乗るとまた質問のラッシュが激しくなる。考えてもみれば、無理もない話だ。帰れるのか分からない、帰り道すら分からない中でヒグマが大量にいる山の中の小屋に閉じ籠っていたような気分だったのだろうから。

 勇者という救世主の代名詞がこうして現れたのだとすれば、逆の立場なら葵もまた安堵していたのは間違いない。元より迷惑だと無碍にするつもりはなかったが、こうも眩しい顔を見せられては葵もまたそれらしく振る舞わねばともなる。


「お兄さん、百合香たちね、お兄さんに会える日をいっぱい待ってたの!船の人がくれた絵本、これに描かれた勇者様に会える日をいーっぱい!いっぱい待ってたの!」

「読んでみて良いかい?」

「うん!勇者様もこの絵本好きになってくれたら百合香嬉しいな!」


 葵を連れて来たうちの1人である子供、百合香が共有スペースの本棚にある絵本を取ってきて差し出していた。

 絵本に詳しいわけではないが、見慣れない物であるのは確かだ、なにせ書かれている内容は地球を守る勇者、夢の世界の冒険、そうしたこの世界を示唆する内容だからだ。


「夢じゃなかったの!だからね、百合香達嬉しいの!」

「この子達は中でも勇者様の為に何かしたいって張り切ってねぇ、鶴を折ったり、勇者様の絵を描いたりして待っていたんだよ」

「俺を待って……」


 子供達の頭を撫でながらふくよかな女性が微笑み、続いて他の大人達も口を開いていく。


「これだけ一斉に話しかけてびっくりさせてしまうのは悪いなとは思ったんだ、でも皆我慢出来なかったんだ、会えて本当に嬉しいんだぜ!」

「本当だよ〜あたしはねぇ、最初は勇者なんているわけがないと思っていたけれど、こうして直に会うとやっぱり違うねぇ」

「思ったより子供だったけど、まぁ勇者ってそういうものだよな!」

「いやいや、そういうものってどういうものさ……」


 この場所に連れて来られてから葵は何回勇者という単語が聞いた事だろうか、聞き取りやすい範囲でもおよそ9〜10回ほどは短い間に言われている気がしている。

 だが、それだけ勇者と呼ばれる彼に明るく話しかけ、勇者という言葉に興奮しているのは、その分だけの積もりに積もった焦燥と不安があったからこその裏返しめいた部分があるのだろう。


『貴方はなりたくないの?勇者』


 リンドの言葉が彼の頭の中で響く。この状況下だからこそ尚更に思うのだ、なりたいかなりたくないかの話ではないのかもしれないと。

 ただ、大仰な言い回しのようだが、避けれ得ない向き合うべき事柄が眼前まで来たのだろう。人生という未知の終わりに向けて駆け抜ける為に、この世界に囚われるという理不尽を相手に、生きる為に必死になる時が来ている。

 葵はそれを握り、背負わねばならなくなった。彼と言う小さな存在に大きな意味が与えられる。役割しか持てない者に与えられる役割が、使命が、眼前まで来たのだ。


「…………」


 葵が胸に手を当てて、それでも微かに俯く。どうしようもない不安や自身への疑念がそれで晴れるわけではない。

 しかし、ある種の決断を迫る様にそんな最中に慌ただしく走ってくる足音が後ろから2つ。振り返れば、葵が連れて来られた時みたいにミアの手を引っ張って走ってきたリンドの姿があった。


「アオイ、緊急事態よ!」

「はぁ、は、た、滝沢さん!す、すみません!お力を、ぜぇ、お貸しください!!」

「ど、どうしたの!?そんな息を切らして」

「アオイの場所をミアに聞かれたから案内するついでに引っ張って来たのよ、最高速で」

「Gに耐える感覚を初めて知りましたよ……いえ、そうではなくて!息を切らせてる理由なんてどうでも良いんです!お願いします、力を貸してくださいっ!」


 ミアの様子を見た葵は黙って頷く、この船での自分という名の理由を思えば、力を貸してほしいというものがどういう事なのかはすぐに分かった。


「分かった、皆の前で聞くのもアレだから移動しながら聞くよ。行こう」

「はい!こちらです!」


 ミアの後をついて行こうとしたが、少しだけ足を止めて、不安そうな顔をしている人々の方を振り返る。


「皆さん大丈夫です、何とかしてみせます。自分は、勇者ですから!!」


 それだけを告げて急いで走り出す。それを聞いた人々の表情は分からない。だが自分の役割がそこにあるのならば、それが自分の役割だというのならば、彼等がそれを実際に聞いてどんな顔をしようとも構わない。

 それに──


「勇者様!僕達勇者様を応援するよ!」「百合香も応援してる!」「勇者様!頑張れよ!!」「勇者様!!」


 後ろから聞こえる声援だけは確かなものだ。彼等から見たら勇者としての確証もなければ、もしかしたらただの高校生がそう息巻いてる様にも見える可能性もある、だが勇者であると信じてそうした言葉を掛けてくれる。

 まだ勇者としての実績を出せていなくとも、彼等がそう期待するならば、勇者というその役割が、いつかそれが彼の思う自分の意味にも繋がるはずだろう。


──戦わないと、皆を地球に帰す為に


 葵はそうして、勇者になる為に走り出す。

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