第64話:御前にて、畏れよ
『全くお前には呆れたものだ』
この感覚は2度目だった。不安、恐怖、不理解、不快、究極的な孤独感を内包する声。
そして、それに対する本能的な拒絶感は自分に対する拒否感を想起させられる。その嫌悪の感情をまるで鏡で映されたかの様だった。
そして、当たり前の様にそれはそこに居た。以前と違う点があるとすれば、それの深い青色の瞳は、酷くつまらなそうに細められている事だろうか。
『恐れながらも、お前は力を選んだ。そう、お前の内に蠢くお前ではない存在達がその証左となっているだろう?』
長い髪を揺らしながら歩いて来た何かは、彼の心臓の位置に指を突き立てる。
心臓?上もなければ下もなく、暗く、深く、浮遊感のみがあるこの場所で、彼は自分という物体があると認識出来たのは何故か。確かに肉体はまだ感じられない、以前の様に視線と思考のみが剥き出しで置いてある様な感覚に変わりはないはずだというのに。
彼の疑問を分かっていたとしても、返事をする気はないらしく、それは言葉を続ける。
『しかし、それを有効に使わない。原始と呼ばれている時代の人類は道具の使い方を理解し、時には新たに作り出しすらした。だがお前はその域にいない。手にある道具に対する理解を深めず、それは使う為の物ではないのだと考えている』
そこまで言い終えて、暫くの沈黙を経て次に出た音は鼻で笑う音だった。
『これでは猿以下ではないか』
猿は賢い生物ではないか、馬鹿にする時に使われる表現として訂正をしてもらいたい、などと彼は考える。しかし、それすらも首を横に振られてしまう。大袈裟なほどに肩をすくめながら。
『そう、お前は何事も正面から見ようとしない。感情も正面から捉えない。自分自身の物などその最たる物。私を見てみると良い、そうだ、その狭い瞳でこの私を直視してみると良い。私とお前は以前よりも近く感じているはずだ』
目を背けたい。見たくない。彼は心の中で否定を続けていた。見れば確実に自分の中にある何かが剥がれ落ちる気がしたから。
もっとも、目を背ける事が出来るならば、この空間と対する存在についても、もっと考察出来る程度の余裕があったかもしれない。だが、ここにそんな自由は存在せず、それと目が合う。
万華鏡の様に映って見えた、気がした。彼の中にある恐れや、感情や、苦痛が、恐怖が、全て逆再生と再生を繰り返す。人を殺した、自分が殺された、化け物がいた、殺意を向けられた、怒りを向けられた、憎しみを向けられた、人の死を軽んじられた、誰かの代わりである事を求められた。そうした彼の置いて行こうとした感情や感覚が全て物体化して、彼の脳に大挙して這い回っているかの様な不快感が襲い来る。希死念慮が引き出される、宝探しの様に、悪意なく彼の中にあるそれが引き摺り出される。
やはり、これは目を合わせてはいけない存在らしい。この何かは、ただ彼に鏡を見せているだけに過ぎず、言わば小手調べの様な物をしているのだ。それでこの有り様なのだ。
『どうだろうか、見た感想は。そんなに恨みがましい顔をする事はない、私はそこにある物を見せただけ。感謝の言葉も必要とはしていない、私は思うままにしているまでなのだから。さて、そろそろ道具を使わない理由も、確と自覚出来たのではなかろうか?』
それを肯定は出来ない。何故なら、彼はあの力を道具と、自分の為の便利な力などと認識していない。自分の中に感じる魂があるからこそ、尚更物のように考えるなど出来はしない。
『お前はまだ、恐怖と向き合わないのか?分かっていない。その悔恨すらも、あるのは結果のみであり、過去に干渉する為の奇跡の力足り得ない。あるのは、お前がお前自身を慰めているという事実のみ。益はない。お前は溜めた水を見ながら、その中に生きる微生物に思いを馳せ、飲まずに腐らせているに等しいのではないだろうか?』
以前は、恐れ続けるのみである彼を責めも否定もしないと口にしていたが、何故こんなにも突き付けてくるのか。
答えは単純だ。彼が停滞している様に感じた事と、それが何かにとって笑い話だったからだ。嗤えるのだから、用意された通りに嘲笑っているだけなのだ。責める様な言い方をする事で、彼が改めて葛藤する事を理解しているから。何とも、意地の悪い。
『この世界は言わば報酬だった。ならばこそ、力で支配するも、俗物的な欲に溺れるも、己の負に宿る本能に任せ憂さ晴らしをするも、本当ならばそれすらも自由。そう、それこそお前は何者にだってなれる』
そう、滝沢紅音の弟でもなく、クラスに1人いる暗い子でもなく、いじめられっ子でもなく、その席に座っているだけの何かでもなく、自分にしか持てない物がこの世界にはあるのだ。
『そうだ、お前は無意識の内に私の真似事をしているのだ。悍ましいと思うか?否、それは羽化の為の工程なのだと理解すると良い。そしたら、此度の様なつまらない命の使い方などしなくなるだろう……故に、お前は自由を謳歌し、私にお前の道を見せてみろ。もっと、もっと、笑わせてくれたまえ──』
悪魔の囁き、と言うべきだろう。導きを象徴とする銀の女神と比べ、不安定な天秤たる彼に邪道を説こうとしている。人の痛い所、あえて触れられたくはない所ばかりを突きながら、こんな道もあるのだと耳元で刷り込んでくる。それも、聞き漏らす事が許されない。
こういう時こそ、聞こえなかったふりが役に立つのだが、それが役立つ程普通の状況ではない。
『滝沢葵、私は見ているぞ。その瞳で、ずっと』
比喩なのか、否か、考える暇すら与えられず、この空間から彼の意識が離れていく。目の前の何かが一方的に喋って終わるのは不満ではあるが、彼はそれ以上にやけに疲れていた。今は重たい目蓋をただそのまま下ろす事しか出来なかった。
薄れゆく意識の中で、僅かに見えた目の前の存在は、見下ろしながらただ、微笑んでいた。薄い笑みを気味悪く口元に浮かべて──
*
「うわああああああぁっ!!」
それはまるで恐怖という感情を押し入れに無理に押し込んだ後、その押し入れを開いて濁流と化した様に、葵の心身に恐怖が襲いかかっていた。
自分の心臓の音が耳の中で鳴り続け、いっそ心臓が止まれば静寂を取り戻せるのではないかと錯覚するほどだ。暑いのか寒いのか分からないまま汗は滲み続け、訳も分からず胸を掻きむしりたい衝動に襲われる。
(何を見た?)
息を荒くしながら、爪を立てたまま顔を覆う。
(俺は、何を見た?何があった?何を知った?)
湧き出る触手、複数の生物の口だけが集められた捕食者じみた口達、葵という物を構成する肉を貫いて、彼を構成する存在そのものを見通す様な奥の瞳。夢の中の瞳とやけに被って見える。完全に同一なのではなく、種として同じ様な感覚。
明確である事は、とんでもない物に目をつけられたのだという事実のみ。それが今になって実感として脳に到達してしまった。
(そうだ、そうだよ、俺が、俺があんなのと、あんなのを、俺が、倒すって、俺が)
呼吸が整わず、思考が鈍っている状態でも、その掲げていた目的がいかに人類には不可能なのかを正確に理解し始めていた。地下室で遭遇した存在のせいで解像度が上がってしまった弊害、その存在に対する理解の深まりは、むしろ逆効果だった。分からない方が、恐れずにいられたかもしれない。
今こうして、まだ生きているだけでも奇跡だと思えたのだ。アレは、命をただ殺す以外の恐ろしい事も知っているであろうから。
(生きて……いや、待て。俺は、生きていると言える状態ではなかった)
雪崩れる様に現れ、容易く葵の身体を潰した触手の波。あまりにも一瞬のことだっただけに、その痛みを覚えてはいない事だけが幸いだったと言えるだろう。
だが、その時のことを思い出すと同時に、葵は死ぬ直前の最後の記憶であるリンド達の姿を思い出す。
(そうだ!2人、2人は無事なのか!?)
追撃が届かない様に入り口を瓦礫で塞ぎこそしたが、それが意味を成す相手である確証もない。葵の呼吸を乱していたものが、あの生物そのものではなく彼等の安否に対しての物へと自然と変わっていた。
「急がなっ……!!」
しかし、そこでようやく気付く。自分の身体が自分の物ではないと錯覚するほどに、やけに重く感じるのだ。その結果、ベッドから飛び起きようとして、見事に頭から落ちてしまい、ズルリと遅れて身体も床にぶつかる。
「ベッド?」
辺りを見渡してみると、あの小屋を思い出す様な、木の床に木の天井の部屋の中である事が分かる。だが、小屋は私物が幾つかある以外は、最低限の物が置かれてるだけという印象だったが、このベッドルームには、手縫の刺繍が施された布団やラグ、レースのカーテンに花が生けてある花瓶等、どこか家庭的な印象を受ける場所だ。
だとしたら、ここはどこなんだ?と葵は考える。遺体を皆が見つけて集落に掻き集めてくれたのならば、疑問はすぐ払拭されるのだが、その前向きな可能性は潰される。葵が這う様に窓に顔を近付け、外を見たからだ。
「何だ、ここ……すごく灰色だ」
柔らかいレースカーテンの隙間から見えるのは、暖かな陽光ではなく、灰色の世界。空にはある1箇所目掛けて分厚い雲がかかっており、土地全体も色を雑に塗られてしまったかのように、草木も人工物も灰色か黒に染まっている。なにより、魔物が辺りを我が物顔で徘徊している。元より彼等の世界と言えるのだから、我が物顔というのも当たり前なのだが。
実に、奇妙な様子だった。この壁と窓を隔てて、そこから向こうが違う世界になっているみたいなのだから。
「何でこんな所にいるんだ……わざわざ知らない人が俺の肉片を掻き集めて、わざわざ知らない場所まで持って来たなんて事、有り得るのかな」
「なかったら、こんな事にはなってないんじゃないかしら?」
突然、聞き覚えのある声が扉の方から聞こえて来た。しかし、それは喜ばしい再会とは言い難い声で、互いにとってそうであろう事が、尚更に葵の緊張感を高めた。
「本当に、最悪ね。貴方の肉片を海の底にでも沈めたら流石に復活しなかったのかしら。だとしたら、惜しい事をしたわ」
その声の主は第6位の使徒、飛鳥連理なのだから。
「っ……!!」
「構えても無駄よ。ほら──」
そのまま、葵が瞬きをした時には既に連理の足は葵の頭上で壁にめり込んでいた。最後に見た時の彼女はボロボロだったが、すっかり元気になっているらしい。もっとも、敵同士かつ今の葵の状態から考えれば、それは決して喜ばしい事ではないのだが。
頭上で突き刺さってる足に流石に驚きながらも、どうやらすぐに殺すつもりはない事に安堵すら覚えていた。常識の範囲外の出来事から、常識の範囲内に帰って来て、思考が落ち着いたのだから。
「……君が、俺を連れて来たの?」
「気持ちの悪い事を言わないで。連れて来たのは違う奴、私ならアンタの身体が元に戻らない様にしていたところだわ」
「じゃあ、やっぱり俺を殺せない事はもう君達全体で共有されてるんだ」
「当然よ。クライルには共有する間はなかったけど、それはどうでも良いわ。でも、正直都合が悪い。アンタが死んだら、全部簡単に解決するのに」
葵さえ死ねば邪神への道は開かれず、地球側の勝利の可能性は存在しなくなる。だが、まるでゲームの詰みを防止する様に葵の死というものはこの世界ではないものとなっている。
しかし、今回の蘇生は前回と違う点があった。今回は意識を取り戻した後の身体の調子が悪い。最初こそ精神的な問題でそういう物なのかと考えていたが、身体を重く感じる状態がまだ改善されていないのだ。
「ん?あぁ、なに?怖くなった?ろくに身体が動かないんだものね。私がアンタを一度殺したぐらいじゃどうしようもないほどに憎んでる事も知ってるものね?」
「でも苦しみを与える事って、それそのものに価値を求める行為ではないと思うんだけど……どのみち趣味が悪い話だけどさ」
「お生憎様。私は翼を殺したアンタが苦しむ事には価値があると思ってるわよ」
その証拠にと言わんばかりに連理の回し蹴りが葵の横っ面に入り、ナイトテーブルの角に頭をぶつけて崩れ落ちる。これ以上の痛みには何度も遭遇したが、やはり痛いものは痛い。葵はうずくまりながらも、見下ろしてくる彼女を必死に睨みつける。
「結局、アンタが目覚めるまでに蘇生に関する解析は進まなかったけど、アンタを好きなだけサンドバッグにして良いチャンスが与えられたのは丁度良かったわ」
「っ、俺の身体が、やけに重いのって、君達が何かしたのか!」
「人聞きの悪い事言わないで。意識のない間に調べただけなんだから、むしろ人道的だと感謝されたいぐらいだわ。どの程度で再生するか、魔力が通る為の器官は優先して再生されるのか、そもそも再生途中の妨害で遅延するのか再生が完全に停止するのか、とか。まぁそんな感じ?ま、アンタみたいな人でなしには良い薬になったと思うわよ」
つまり、身体の再生途中の解析作業による妨害のせいで、身体が完全に好調な状態ではないまま、損傷をある程度した状態で目覚めた事になってるらしい。自分自身でもよく分かっていない過程を、敵の方がしっかりと調べたのだとしたら、良くないのは確かだ。
しかし、それに対する危機感よりも、彼女が葵の精神的な消耗も狙っているのだとすれば、出す可能性のある葵の仲間や関係者の話が出ないということから、リンド達はここに連れて来られたりしていないのは間違いないという確信を得た葵は、口数の多い連理にいっそ感謝をしたいほどだった。
「人でなし、はそうかもしれないね。君の仲間を俺は殺した」
「仲間、なんて認識はないけどね。クライルのやつだってそうよ、利害の一致ってだけ」
「そして、君も俺の仲間を殺した。それも、1人だけじゃない」
「……で?お説教でもしたいの?」
「説教なんて、偉そうな事出来ないよ。俺は誰も殺していない異形を殺したし、そうでなくとも、人だった人達を殺した。そんな俺は褒められた人間でも、ましてや天国に行ける人間だとも思っていない」
「よく分かってるじゃない。だけど、それなら尚更気に入らないわ。そんな奴が私に何を説こうって言うわけ?」
「説くわけじゃないけど、君も俺と離れた人間ではないってだけ。俺の仲間を殺したし、邪神に魂を君は捧げてるはずだろ?君にとっての翼君の様に、俺にも家族がいる。君は、俺の家族を供物にするだろう」
「……で?だからアンタは翼の事を正当化するの?」
「君は復讐を大義名分に俺以外も殺し過ぎてる。俺だけを殺しに来たら良いじゃないか。邪神の方が正しく見えるのは、君が邪神に奪われる側じゃないと思ってるからだ」
口にする程に、葵の中で湧いた邪神への恐怖心と勝てないという気持ちは、彼の中にある勇者としての怒りが押し返そうとする。時間が経過したから多少記憶が劣化しただけなのかもしれないが、邪神の手下とも言える人間に対して思う感情は、それ即ち邪神に向ける怒りに等しい。
理不尽に命を奪う事、名も知らずに捧げる事、それを許容出来ないからこそ戦うのだと、敵になるのだと、再確認する様だった。
もっとも、連理の目から見れば、部屋に入った時点では現状に対して顔色を悪くしていた葵が、それを吹き飛ばして怒りを込めた感情を向けてくるのは気味の悪さすら感じる事だろう。
そのせいもあるのだろうか、憎い気持ちも、殺意も、変わりはしないが、怒りが以前ほど最高潮には達してくれない。一度大きい怒りをぶつけた後では、ただの繰り返しに感じて、1人でに徒労にすら感じるのだ。ましてや、目の前の相手に一度負けたのだという事を思い出せば、負け惜しみじみているから。
「遅いぞ、アスカ。何をしている」
加えて、連理は彼に対して怒りをぶつける為に来たわけではないのだ。
「ギュンター……ちょっと憂さ晴らしをしてただけ。でも、このクソ勇者の妄言を聞いていたら興が削がれたわ」
「そうか、それなら良い。敵対勢力とは言え、好き勝手に暴行を加えて良い理由にはならない。お前は馬鹿ではない、分かるな?」
「……分かってるわよ」
ギュンターと呼ばれた長身の男性。ショートヘアの金髪だが、左側の横髪だけが胸辺りまで垂らされており、何かの拘りなのかと目を引いた。
服装は喪服の上から黒いマントを羽織り、同じく黒のハットを被っている。そして、左目を覆う布製の眼帯がまた、彼から漂う死の匂いを強くさせていた。ターコイズ色の瞳も、いまいち生気を感じさせない。彼自身の死の匂いというよりも、彼の辿った周囲の死を纏っている様な空気感だ。
だが、それ以外は一見マトモに見える。いや、これまで会った使徒の中で、いかにもな見た目をしていたのはゼーベルアぐらいだった。少なくとも葵の認識としては。
だから油断ならない。葵も分かってはいる。分かってはいるが──
「すまないな。頰が少し腫れているようだ、冷やした方が良いだろうか?」
「え、い、いや、大丈夫、です」
「そうか。だが、不調があればすぐに言う事だ。放っておくと後が面倒だぞ、怪我ってやつは」
クライルの時の様な不気味な紳士さではなく、自然体で年下の少年と接している様子なのだ。それだけに、警戒をしようとしても崩されてしまう。
「さて、少し来てもらいたい場所があるんだが、歩けるか?」
「な、なんか杖とかあったら辛うじて、多分。でも、こんな事聞くのはアレかもしれませんけど、どこへ連れて行くつもりなんですか?」
そこが葵にとって不都合のある場所の可能性の方が高い。何せ、ここは敵地。葵を殺せないと分かってはいても、無力化という手は取れるかもしれない。そのリスクを考えたら、普通は大人しくついて行かないだろう。
「言っておくが拒否をするとしても、ここから逃げ出す算段はあるのか?アスカの速度による追撃から逃れるほどの余力は、今の君にはない。駆け引きにすらならん」
「っ……」
「だが、少なくとも君を害する為に連れて行くつもりではないとは言っておこう。信じるも、否も、自由ではあるがね」
「簡単な事よ、アンタに選択肢はないの。無駄な時間をかけないで、大人しく言う事を聞くことね」
先程自分で言った通り、杖のような掴まる物がないと歩くのも苦しい中で、万全の使徒を相手に暴れても返り討ちにあうだけなのは目に見えている。それならば、もう一度死体に戻されて連れて行かれるよりは、自主的に赴いた方がマシなのは確かだ。幸いな事に、思考は正常だ。
「──分かりました。ついて行きます」
「理解頂けたようで嬉しい限りだ」
「でも、俺がどこに連れて行かれるのかはやっぱり教えてください。心の準備が俺には必要です」
「ふむ、それもそうだな。すぐに分かる事だから良いか」
葵を害する為ではなくとも、仲間に不利な事が起きる何かの可能性もあれば、害されずとも良くない事はいくらでも起こり得る。本当にこれは心の準備のみの問いかけだが、何も考えずに行くよりは価値があるはずだと葵は考え、その答えを待つ。
「魔王様の元だ」
心の準備をしていても、それを驚愕が砕いてしまうのもまた、あまりに容易い事だった。




