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永劫の勇者  作者: 竹羽あづま
第3部泡沫アクアリウム
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第53話: 憶い想え

 水の中に絵の具を落とした様に、川の深いその場所が赤黒い色で濁っていく。


「──」


 変化させ、棘の様になった指輪は、確かに葵の胸を貫いていた。手応えもあった、今のタイミングで回避も間に合うはずもなかった。

 だが、葵を甘い人間だと、ただそれだけだとまだ見くびっていたのかもしれない。或いは、彼を通して滝沢紅音のみを見て来た彼へのしっぺ返しだったのかもしれない。


「ご、ぐ、うがばあ゛あぁぁっっ……!!!」


 葵が突き立てようとしていた刀は、その一撃で怯む事も止まる事もなかった。水中の浮力に負けない様に喉に向けて立てた刃をより深く、抉る様に、確実に仕留められる様に。


(何度も取り逃がした)


 連理を倒し損ない、結果としてただ皆が消耗して終わった戦いもあった。仲間も死んだ。

 クライルを仕留め損ない、結局街の人々を巻き込んでしまった。


(原因は分かってる。それは俺の躊躇いのせいだ)


 躊躇う事が出来る、それはまだ地球にいた頃の自分に帰れるという事だった。だが、ライに言ったように殺す事が怖い、これからも怖いと思うであろうからこそ、自分がやらなければならない。


(だから、だから!!!)


 だからこそ、今度こそ躊躇ってはいけない。自分もまたこの世界に巻き込まれた被害者だと言う意識は今、消さなければならない。そうでなければ、この刀に込める力が弱まる。


 故に、一切の容赦なく、喉を刺した刀は遂に貫通する。


「が、ぁ、あ、ば、あ゛……ッ」


 これでもまだ、死なない。死ねないのはこの世界に適応してしまった者のデメリットと言えるだろう。

 元より水中とは言え、貫かれた部位が部位だからか、絶叫すらも叫びにならずに泡に溶けていく。見開かれた目は、どこにも焦点が合わなくなっていく。余裕の顔を携え、妄執に振り回されるまま回していた舌もろくに動かなくなり、嫌々ながら散々見て来た男の顔に確かな死が迫っている事を感じた。

 相手はこれまで何度も騙し、殺し、捧げ、それに対して良心の呵責など無かった男だ。素体、素材、そしてそれを水槽に閉じ込めて愛でる。本当に同じ時代の価値観で生きて来た人間なのかと戸惑いすら覚えるほどだった。


(それでも、止められなくなる程の望み。時間が経つ程望みを抱いた記憶が薄れるからこそ渇いて、そしてそれを叶えてしまうのが、この異世界)


 叶ってしまう事がなければ、異世界に来る事がなければ、こんな死に方する事もなかったかもしれないのに。同情する気持ちはなくとも、それとは別にそんな思いが浮かぶ。

 故に、人々が明日に思いを馳せることが出来るように、自分はこの刃を振り下ろせるようにならなければいけないのだと。自分の手で葬らなければならない。自分の手で斬る事がせめてもの手向けとなる。


 夜明けを記す、光の刃。葵の刀が黎明の色を宿し、クライルに介錯を施し、その魂を浄化する。


「──」


 苦痛は消えない。だが、クライルは自分の身体が突然軽くなっていく感覚を覚えた。


──何故?

──何故だ?


──冗談じゃないよ、だって、だって、こっちはまだ死んで良いなんて、死にたいなんて言ってないじゃあないか!!


 しかし、その光が止まる事はない。

 そう、葵は彼を介錯するが、彼への慰めの為の浄化を行うわけではない。心から死を望む者が、他者を生贄に好き勝手をするはずがない。だからこれは殺すという行為以上に、裁きの意味合いが強かった。

 裁くなどと、恐れ多い立場だ。言葉にするだけで恐ろしくなる。だが、葵はそれを下すのだ。


──夢があるんだ!!紅音と再会したいんだ!それと、最高の水族館を作って、それそれで


   それで?──



 男は、醜悪というほどの顔ではないが、どこか陰気で胡散臭さが抜けない顔の男。美しい物とはすなわち自分という人間の対義語だった。決して自分が最悪な醜さであるわけではないが、顔で勘違いをされる等の事が積み重なれば、あまり良くないのであろう自負は自然とつく。

 故に、彼は水族館が好きだった。手の届かない物の方が良い。綺麗なものは手に届いても触れる権利を持てない、言葉を交わす権利も、そういう物だから。水槽を介した魚はいつも綺麗だった、自由に泳いで、その身体の美しさを見せつけるように、なのに、外界の人間の視線からすぐに通り過ぎていく。

 なんて心地良いのか、なんて幸せなのか、美しい物が好きな男にとって、入館料さえ支払えば好きなだけ宝石を愛でられる事に等しい幸福感と、満足感が得られる場所だった。綺麗ではない自分を気にしない、ただ美しくあるもの、理想的だった。

 それが──


「綺麗よね、この魚。グッピーって言うんだって」


 その日から、彼の欲望と、彼の中の何かか、きっとズレた。水槽の外からやって来た美しい者は、とても気さくに、前からの友人の様に接してくれた。

 滝沢紅音、滝沢紅音、滝沢紅音。その名前を思うほど、欲望の通りにしたくなる。彼女にこんな事をやっていると知られたらと考えたとしても、怖くはない、彼女のお陰で開かれた扉は、クライルの異世界での幸福な時間に繋がったのだから──


「それでも、君がいなかったら満足出来なくなっちゃったぁ」


 自分よりも醜い男達を従え、異形に堕とし、見込みのある女性を人魚にして、従わせ、それでも満足出来ない。渇いているのだ、最高の味を知って、食のランクを落とせなくなった人の様に。彼女でしか癒せない渇きが生まれた。

 だからこそ、運命的に感じていた。自分の目の前に現れたのは男でこそあったが、待ち人によく似た滝沢葵少年。彼との出会いによって時が動き出した感覚は、誰にも理解させたくなければ、誰も理解は出来なかった事だろう。

 そんな彼相手ですらも、口を開くほど違うのが分かっていく。


『貴方みたいな人がいるから、無作為に夢が叶う世界が必ずしも正解だとは思えないんだ』

──ああ、やめてくれ。やめてほしい。彼女と同じ顔で、わたくしを否定する様な事を言うなんて


 その姿以外はやはり違うのだと分かってしまう。


『っな、んなんだよ!気持ち悪い!!』

──戦いの最中だとしても、そんな汚い言葉を吐かないでおくれ。頼む、頼むから


 だから、渇いて、渇いて、その渇きを癒すことが出来ないのだと理解した。その結果やり口も、何もかも雑になっていったのは失望の末の諦めだったのかもしれない。滝沢紅音本人がこの世界に落ちて、自分の手に入れられたら違ったのだろうか、そんな風に考えたとしても、その渇きが、良くない結果ばかりを提示してくる。苛立ちすら生まれるその思考が、彼の中で最も俯瞰していた思考なのかもしれない。

 つまり、それがクライルという男の限界だったのだろう。



──そうだ


──そうだとも


──限界があったから。代わりを用意するしかなかった。代わりを作って、水槽の中を自由かつ優雅に泳ぎ回る君が見られたら、それを閉じ込めていられたらと思った


──でも、それを見て、きっと思い出すのは紅音、君の言葉なんだ


 あくまで高嶺の花。連絡先すら知らないままな、その些細なチャンスを逃して、いつか自分の元に、いつか会える、いつかこの異世界に、と受動的な再会を望み続ける事しか男には出来ないその結果、あの一度の出会い。あの時、心に録音された言葉を再生し続け、その言葉という記憶さえもいつしか劣化するのではないかという、恐れ、男を塗り固めた物を1つ崩せば何と脆い事か。

 その恐れを隠す為のメッキにはどれだけの人の命と、魂が使われた事か。男は、そうした自分の理想に対する腐食を理解する時が来たのだ。


──それとも、壊死していたと言うのか?完璧に作り上げて来たはずなのに。あと少しで完成するはずだったのに


──惜しいなぁ、惜しかったなぁ


──死ぬんだなぁ


 葵の顔に向けてもう片方の手を伸ばす。だが、その手が触れようとする事はない。そこに居るのは、顔こそよく似ていてもあくまで彼女との時間、その記憶を掘り起こす為の再生機器として優秀なだけの、違う物だから。


──ああ、全く冗談じゃあない


 そうして、光の粒子は葵の中へと消えていく。

 これまで斬ったシグヌスや異形達の様に、葵はその魂を等しく背負う。同じ人間として、同じ地球で生まれた者として。邪神の供物に捧げられてしまわない様に。その魂を弄ばれる事を是とする事は、この力を持ちたいと願った自分を裏切る行い。自分の願った、自分だけの役割に殉ずるために。

 彼もまた、いつかその命が巡る事を願って。葵はその光を受け入れる。


(……不思議な感覚だ)


 魂を複数受け入れ、その上で使徒の魂を受け入れたからだろうか。この能力に目覚めてから、これまで自分が殺して来た人々の想いを強く感じるようになった気がした。

 無論、たった今自分の手で葬ったクライルの物も含めて。


(失われた命は戻らない、魂に言葉は持てない)


 それでも、自分の内にあると感じる限り、その想いがある事に嘘はないと思えた。

 だからこそ、嫌な気持ちとも、複雑な気持ちとも思えた。自分を姉と重ねて見て来た男、自分を姉の代わりとして扱って来た男、葵にとって的確に嫌な接し方をし続けた相手だった。だが、紅音の事を心から光の様に感じていたという事実も理解した。いっその事それが、いつもの男の誇張や芝居じみたものであれば良かったのだが、そうではなく、ここまでさせる程の動機、その奥に確かにずっと彼女がいた事を感じた。


(ははは……)


 許せない相手だ、許す事のない相手だ。まさしく彼は敵だった。しかし、この能力のある種の代償めいた物だ。

 自分で決めた道に支払う通行料。殺してから、殺した相手の事をよく知ってしまうという物。それをもっと、分けて考えられる人間性だったならどれほど良かったことか。殺す相手の事を知っていくなど、背負うには重いのだと今更理解させられる。


(俺みたいな人間が持つには、なんて大きい。過ぎた力だ)


 そう苦笑しながらも水中に揺蕩い始める。身体の痛みと、疲労と、下がっていく体温によって意識が薄れ、目を閉じる──


『わたくしの事も、知らない方が楽でしたか?』

「!!」


 もしかしたら幻聴かもしれない。今ここにいる水の色彩が、あの街へと招いた少女に送った首飾りに、よく似ていたから走馬灯の様に思い出しただけなのだろう。


『そうですね。貴方を苦しめるぐらいなら……わたくしもその方が良いのかと思ってしまいます』


 だとしたら都合の良い幻だ。こんな言葉をかけてもらう事を、そう思ってもらえる事を、望んでいなければ幻はそんな言葉を言うはずがない。あんな別れ方をしたのだから、尚更だろう。


『でも、わたくしは貴方に自分の事を話して良かったと思っています。夢の話も、ちょっと情けない話も、なんて事ない話も』


 幻になった少女は、街を案内してもらったあの日と変わらない笑顔を向けている。変わらないのに、もうそこには居ない事も葵には分かっている。


『沢山の人を騙して、犠牲にして、貴方の事も同じ様にそうするつもりでした。貴方も、最初は同じでした』


 返事をしたい、彼女の最期に立ち会えなかった分だけ、せめて幻にでも言葉をかけたい。そう思っても、葵の声は出ない。


『でも、それでも……貴方に忘れられたくないと、心から思っています』


 自分の口にした我儘を恥じらうように両の手を重ね、葵の様子を伺いながら口元を隠す。


『そして、貴方はきっと忘れる事が出来ない方、忘れないで居てくれる方だと分かっています。貴方に苦しんでほしくないけれど、でもそんな貴方だから、わたくしは惹かれたんです』


 彼女の言う事は事実だ。忘れられる人間なら、知らなければ良かったと思う人間ならば、この能力に目覚める事もなかっただろう。


『だから……』


 数度、言いかけた言葉を飲み込もうとするが、意を決したように頷く。


『だから、一度貴方の敵として立ったわたくしは、貴方に最後にとても酷い事を言うことにしました』


 どんな言葉が来るのか、ただ、ただ、想像がつかない。憑き物が落ちたような顔をした彼女が、敵対していた時のように差し迫っていない状態で言う酷い事が見当もつかなかった。

 そんな様子が分かったのか、答え合わせとして口が開かれる。


『貴方の見て、知ったエリアの事を忘れないでください』


 助けを求めに来た、儚げな時のエリア。年相応にはしゃいで、ナイーブな一面を持つエリア。優しい家族の元にいたが、それでも足を引く喉の病気、それによる夢と現実の間での葛藤に苦しむエリア。そして、自分の夢の為に他を犠牲にした敵としてのエリア。思えば短い期間だったが良いところも、悪いところも、確かに、どれも見てきた。


『ずっと、忘れないで』


 エリアは言いたかった、ここで最後に残す彼への呪いの言葉として伝えたかったのは、愛の言葉。大好きでした、あるいは愛しています、言葉だけなら簡単で、音にすると複雑な言葉。

 でも、やめた。


(エリア、待って……)


 エリアは葵の能力で斬られたわけではない以上、その魂に刻まれるわけではない。

 だが、エリアの身が朽ちたとしても、あの日々が、言葉を交わした時間が、記憶を焼き付けられたら。


(エリア──)


 能力とか、そんな物に頼らずとも、彼の心の中に小さくても居場所を作ってもらえるのならば。


(エリア!!)


 泡になって消えても、例え夢であったのだと思われても、心の内にある限り、記憶だけは消せないのならば。

 直接的にこの想い刻めた方が、勝った気分でいられるから。


「エリア!!!!」


 幻になった少女の姿が、泡になり、瞼の裏で遠のいていく。

 彼女の声はもう届かない。葵の声は届かない。人魚は泡になったのだから。手を伸ばしても、それは空を切る、届かない。魂に言葉は持てない。閉じられていく意識の中で溢れる悲しみが、葵を覆って──



 葵は目を覚ました、瞼を開けたという事は、生きているという事なのだろうか?そんな当たり前の事を思いながら、視線をゆっくりと動かせば、見ている者を不安にさせる二重の月に、ノイズの走る黄昏の空。その光景は喜べる物ではないが、不思議と開放感があった。

 身体を動かそうにも、やけに重く感じた。びしょ濡れだからなのか、それとも血が足りないからなのか、要因が多すぎて頭の働かない葵には分からない。が──


「アオイ!!」

「葵さん!葵さん……っ!よ、良かった……皆さん、葵さんが目を覚ましましたよ!!」


 2人の女性の声によって、まだ朧げだった意識が現在に追いつく。

 芝生に寝かされていた葵の左右から、安堵した様にへたり込むリンドと、瞳を揺らしながら葵の手を握っているミアが顔を出していた。


「まったく、本当に懲りないんだから……死んじゃったかと思ったじゃない」

「私もそう思いました。でも、生きて、くれてます……ッ」


 生きてる事を確かめる様にリンドに顔を触られながら、そのくすぐったさに葵は力無く、だが嬉しそうに笑う。自分が生きてる事より、2人の手の温度が、儚く消えてしまわない温度が、今はただ嬉しかった。

 そして、ミアの呼びかけで続々と人が集まり始める。ヴィルガや、辛うじてまだ生き残っていた男性達。水辺からは無論、人魚達が顔を出す。


「マジか!?ははっ!マジだなぁ!ったく、安心したぜ。アンタがこんな所でくたばっちまったら後味が悪りぃからな!」

「ヴィルガの言う通りよ、貴方は警備隊の仲間であり、恩人だもの。本当に良かった……あっ、でもまだ返事とか無理にしちゃダメよ!身体、ボロボロなんだから!」

「真っ青になっちゃったわぁ。でもぉ、それに関したら、珍しく親衛隊の隊長さんに感謝したいところよねぇ」

「べ、別に私は当たり前の事をしただけだ!浮上に支障がなかったのだから尚更だ」


 浮上の最中に、何人かが葵が上がって来ない事に気付き、術自体は安定していると判断したシャミーがその中でも真っ先に救助に向かったらしい。その時点ではもう街は消滅が始まっていたから、人魚の術で覆う範囲に入れる総量が減り、1人だけ抜けても多少は問題がなくなっていたというのも大きい。


「あの、私、装飾品店の店員なんですけど……覚えてます?」


 シャミーの横から顔を出した人魚、忘れているはずがない。エリアとのやり取りを見ながら微笑ましそうに笑っていたのが印象的な人。何より、あの街で穏やかに過ごした時間の中に在った人、それを忘れているはずがない。


「まさかあの時の子が、あんな大きな物と戦えるだなんて、想像もつきませんでした。勿論、良い意味で、良い意味で、ですよ!」

「強調すると怪しいのよ」

「えぇい、お黙りなさい店員A!!」

「うわっ、人権を無視したひっっどい言い方!元の世界に戻ったら訴えてやる!!」


 元の世界に戻ったら、軽い調子で、あるいは冗談でその言葉が出たのだとしても、人魚であり、街の住人という立場である人から出た言葉である事に、葵は思わず目を見開く。


「えぇっと、ごめんなさいね脱線しちゃって。だから、私が言いたいのはですね……戦えない私達の為に、戦ってくれてありがとうって、それが言いたかったんです」


 あの街で会話していた時の様子が、そこに居た人達が、今もここにいて、それが当たり前である事を強く実感をする。

 そんな人から告げられた感謝。その後ろの人魚達の表情からも、全員が全員ではなくても、同じ様な思いを持ってくれているのが分かる。


 まだ死ねないと思った者も、死んだ後も忘れないでほしいと願った者も居た。だが、確かにここに居るのは生かす事が出来た人達だ。

 騙る者と戦った後の事を思い出す。だが、あの時の様に褒められて嬉しいと言う感情のみではない。混ざり合った悲しみや、安堵や、喜びや、それらが複雑に絡み合った感情に飲まれてしまう。どうしようもなく、必然的に。


「アオイ……貴方、泣いてるの?」

「い、痛いですか?もうすぐライさんが仲間を連れて戻って来ると思うので、船で治療を──」

「ううん……大丈夫。激しい戦いだったから、びっくりしたのかも……でも」


 沢山の生と死を感じた。この手で実感した。そして、これからもそれを思い続けなければならない。使徒と戦うという事は、人の命を背負うという事、そしてそれは奪う事。自分はそんな戦いを続けていくのだという、決意。そして、後戻りは出来ないという事実。


「俺は、クライルに勝ったんだ」


 この戦いの数多の死への手向けである涙。その中には無論、この戦いで倒した使徒の分も含まれている。

 同時に、地球にいた頃の何も知らなかったあの頃の自分への、弔いも含まれていたのかもしれない──

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