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永劫の勇者  作者: 竹羽あづま
第3部泡沫アクアリウム
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第46話:第7位の使徒

 追ってくる異形の形状は細かい差異こそあれど、シグヌスと同様の形状や能力を持ったものがほとんどだった。一度戦った相手であり、単純な人間の弱点を突けば殺せる相手である事も分かっている。葵にとって、これは好都合だったかもしれない。加えて、葵の背丈を上回る体躯も、背から生えた腕も地下通路という限られた空間内では必ずしも優勢になるわけではない。

 葵を捕まえる為に向けられた腕は、あえて腰を深く落として爪の到達点をズラして回避し、そのまま利き足を軸に身を翻して胴体を斬り上げる。自身の足が地を離れた瞬間に異形の身を蹴ることで前進、それによって後ろで控えていた追手への迎撃を兼ねる。


「!!」


 そうして、先程蹴倒した異形が体勢を整えて追い縋ってくる。停止するつもりないであろう猪突猛進ぶり。葵はそれを利用して刀を逆手に持ち替え、刃の先端を敵に向けながらバックステップをする。異形の速度はその分だけ深く内臓に至るほどの深さで刃を受け入れる事となり、異形は結果的に自らの命を刃に投げ出す形となった。


「ふんっ──!!」


 異形が口から体液を吐きながら断末魔を放った事を確認した時には、葵はもう刀を引き抜いていた。この世界に来たばかりの時の様な身体の軽さは感じられないが、動きがこの世界に適応して来ている様な感覚ならばあった。その分だけ、より効率的に、確実に倒す方法が経験から引き出される。覚えのない程の幅の引き出しから。少しでも苦しめずに倒す為にもその技術と力が必要な今、この状態は好都合だった。


「リンド、この先は?」

【このまま真っ直ぐ。後少しよ】


 葵自身も確かに目的の場所が近い事を感じていた。濃い魔力の気配は、息を吸えばそれが喉から肺まで瞬く間に侵し、暴れ、肉体を破壊しそうなほどだった。あくまで感覚的なものとはいえ、葵自身もこの中に在りながら悪影響を受けていない事に驚くほどに重い空気が支配している。

 これではリンドが形を保てるはずもない。先程から端的に目的のみを口にしているのも力を温存する為なのだろう。そんな状態の彼女が今、外に出ればどうなるか、そのまま小さな情報の粒子に霧散して2度と戻らないのではないだろうか。葵の中の不安は、彼女にゼーベルアの時みたいな無茶をさせるわけにはいかないと言う使命感に変わっていく。


(そうだ、誰も傷つかせない……!俺が、守れるようにならないと!)


 しばらくして、遂に辿り着いたその場所は、以前水道から侵入した時の部屋と違って、最重要な施設であるだろうに、やけに長い下り階段があっただけで鍵どころか見張りすらついていなかった。ここへ来ると分かって招いている様にすら思える。だが、仮にそうだと分かっていても、それを避ける理由にはならない。

 緊張感を胸に、葵は扉をゆっくりと開くのだった──



「これが、リンドの言ってた……」


 部屋の高さはおよそ30mほど、教会を思わせる様な高さの部屋は地下には不釣り合いなほどに開放的で、部屋そのものも葵が入って来た扉の場所以外は、ぐるりと壁面の全てが水槽になっているのもまたそれを強調し、それ故に中央に配置された装置の大きさが圧迫感を強めていた。この街で主に使われていた色彩と異なり、台座は紅玉色に金の装飾が施された豪勢な見た目になっており、これでは人に見せる為のものだ。その上に煌々と輝く光の球も含めてさながら芸術品の様ですらあるが、これの本来の役割を知っていると恐怖症持ちでなくとも自然と鳥肌が立つ。


「檻の中で大人しくしていれば良かったのにねぇ」


 そして、想像していた通りにその男は待っていた。台座の手前に設置された装置に腰掛け、そんな男の演出に使われているかの様に街の地図が、装置から放たれる泡の中に映り込んでいる。今から殺す人間の顔写真をわざわざ見せつけているに等しい行いだ。つまり、敵に装置を握られている危険極まりない状況だが、クライルが先にここに着いていながらそれを起動しなかった。彼の目的のお陰で首の皮一枚繋がっているに過ぎない。

 葵が檻から出たとどのタイミングで分かったかは知らないが、途中で把握してなお起動しない以上はここで葵と対峙する事自体が望みであったのは間違いないだろう。敵に与えられた情けに甘える様な物だが、今はそれを幸運と思うしかない。


「俺が出てくる事も、想定済みだったんだろう?」

「いや、それは予想外だったよ。だから、事が済むまではそこで大人しくしてもらうつもりだったのだけれどぉ、思ったよりお転婆じゃあないか?」

「その事っていうのが終わるまで待つわけにはいかない」

「本当にぃ?君は待つだけで良いのにぃ?しばらくしたら出してあげるしぃ、その間に頭も冷えるかなぁと思ったんだけどぉ」

「それは、貴方と戦う事に関して?」

「そぉ〜だとも。それが無謀だからとかじゃあない。君のお察しの通りこの街を生み出したのはわぁたくしなのでね、主を失えば文字通り消滅する街である事、分かっているのかぁい?」

「どのみち、貴方が裏で回していたシステムで成立している街である以上、貴方がいなくなったら続かない街なのは分かっている事だよ。物資も外から調達しないとあんなに集まらない。外の人を珍しがっていた事からも街の人が取りに行ってたとも思い難いし」

「その通りだぁよ。でもぉ、君はその上で本当に戦うつもり?こっちとしてはぁ、気乗りしないけどぉ」


 クライルと戦う事で、この街が失われる。そしたらここで何も知らずに生活している住人達はどうなるのか、川の中に皆投げ出されるのか、街の結界が消えてしまう以上異形や魔物も住人達を無視は出来ないのではないか、考えるほどに彼女達を皆殺しにする判断に等しいかもしれない。

 そう、見捨ててしまえば終わりなのである。守ると決めた罪のない人々を守り、助けられなければ勇者は名乗れない。故に、葵とて考えなしにここまで来たわけではない。


「これ以上、人の想いも魂も利用させるわけにはいかない。貴方はそれをやめないんだよね?」

「やめないともぉ、まだ目的は何も完遂していないんだからぁ」

「……やはり貴方は魔王の使徒で、敵だ」

「ふ、くひひっ。仕方ないねぇ、頑固なんだから」


 大袈裟に肩をすくめた後、装置に埋め込まれた水晶を撫でる様に触れ、浮かんでいた泡が弾けて消える。それが街の爆破の暗喩の様で、葵は一瞬目を見開くが、それそのものには特に意味はなく、クライルのこれまでと変わらない演出に過ぎない物だった。装置から降り、靴音をわざとらしく鳴らしながら開いたと思えば葵の前で足を止めて、右手を背に、左手を胸の前に持って来てのお辞儀。この状況下でまだなお、その姿勢であることに威圧されそうになるが、葵も会釈を返す。礼に礼で、挨拶を返すのは日本人としての癖の様な物であり、そうする事で使徒相手の勇者としても品性を保てる。


「そうだねぇ、君が負ければ君は滝沢紅音の素材になってもらうよ。ほとんど素材のまま使えるから一石二鳥だねぇ」

「そんな事はさせない、俺が勝つ!!」


 先制攻撃として霊体を展開し、マシンガンの様に鏡の刃達が放たれ、その瞬間には既にクライル目掛けて跳躍していた葵は、その刀を頭めがけて振り下ろさんとしていた。

 その最中にクライルも行動し始める。握り込んだ手を前に突き出し、蕾だった花が咲く様にゆっくりと手を開くとその掌の上には透明な正方形の箱が浮かんでいた。その箱を刃の来る方向に向けて指すことで、放出された箱は直線上に幾つも整列され、刃が箱に1つ目、2つ目3つ目と衝突していき、箱が破壊される度に刃の方は勢いを失い、最後には破壊しきれずに落下していく。防壁ほどの耐久性があるわけではない様だが、圧倒的な物量が守りとしての役割を果たしている。無論、ただ守るだけでは終わらない。


「ぅぐっ!?」


 彼が今の状況を理解した時には吹き飛ばされ、地に全身を叩きつけられていた。そこから遅れて腹部の痛みがやってくる。


(あの箱をぶつけられたのか!くそ、何だ、あれ!?)


 これまで遭遇した使徒の心器は靴に拳銃と、能力に結び付かずともどう使う物なのかは一目瞭然ではあった。それだけに箱という物体が奇妙だった、装備する類の物ではないのだから。

 当のクライルは刀を掠めた跡のある額を指で呑気になぞっていた。しかし、そのもう片手は葵が体勢を整える前に頭上に向けて指を振り下ろしていた。無論、甘んじて食らうわけにもいかず踏み込んでキリキリで回避、その背後に出来た壁面を蹴って側面からの刃による波状攻撃を加える。箱の生成のリソースはここに裂かれるはずだ、と。


「君のその霊体のせいか。君の刀に気を取られると射程を見誤るってわけだぁ。刃の方は心器持ちには豆鉄砲だね、1発1発に霊体のリソースを使うのに当たらない牽制?非効率的だねぇ。その霊体はパワー寄りに思えるのに」


 しかし、その刃も先程と同じ手段で防がれてしまう。そう、クライルはこの最中ですら葵の能力を分析し始めていた。直近で拾った情報を基に彼の戦士としての部分の長所も短所も飲み込む。そうした情報収集を行うための時間稼ぎが可能なのもこの能力の強みだろう。葵からすればクライルの方は正体の分かり辛い能力という以上の情報量がまだないという事に、理不尽さすら覚えてしまう。

 だが、それで狼狽えてる場合ではない。箱が刃とぶつかる以上は、普通に触れられる物質であり、質量のある物なのも確かである。現時点で推測出来る範囲で行動するしかない。


「っらあぁぁ!!」

「!!」


 クライルの放った箱が刃を防いでいる間にその内の1つを膝で打ち上げ、そのまま刀で弾き飛ばす。葵の飛ばした刃と衝突して火花を上げる箱の連なりの影響で、クライルの視界からはその動きを把握するまでに一瞬の隙が生まれ、それを避けきれずに顔面で受ける。


「ぐ、ぶっっっ!?」

(当たった、当てられるんだ!!)


 箱は刃を受けていた。心器の様な超常の装備相手にのみ有効な防御手段とは思い難い、もしそうであったのならば自分に対してのみ通り抜けられる物体になっていた可能性が高く、格好がつかないが自分そのものを何重にも箱で覆った方が守りとしては最適だからだ。そうではない以上、この街を覆う結界の様な形の方が汎用性は高い。もっとも、心器が汎用性や有用性を重視して顕現する物ではないという大前提はある。現に、ライの銃の能力を最大限に活かそうと思えば、彼自身は何らかのリソース、安い物でも生爪等を支払う必要があるのだから。それらを踏まえた上で、箱そのものはクライルの手で消したり出現させたり出来ても、そこには操作という工程を必要とする点も考慮すれば、箱は心器であれど、同時に箱という物体。こうしてぶつけたり跳ね除けたりと、物理的な接触が可能な物。相手の物であるのならば、隙さえ作ればこうした攻撃にも利用出来るだろうと。

 クライルの受けた一撃は重くないが、眉間に受けた影響で視界は明滅し、軽いふらつきが起きる。そう、もう一度隙を作る事こそが目的。その瞬間を見て、葵は展開した鏡の中から滑り出てくる。


「──おやおや」


 場にそぐわない声が出された時に感じたのは相手の白旗宣言の感覚よりも、気味の悪さ、爬虫類が首を這う様な生温さとベタつく感覚が葵を襲う。何か来る、何かしてくる、ほぼ確実に。これはただの直感だ。しかし、これまでの使徒と違って相手がどういった人格なのかをゆっくり知る機会があったからこそなのだろうか?彼は確信していた。

 クライルの首に接触していた刀の刃は、そのまま押し込まれる事もないまま、刃の先端の方で首の側面を薄く切るだけで止まり、逸れた狙いの分は肩を切り裂きながら葵の身はクライルの後方に飛ぶ。


「っ──!?」


 葵がそのまま攻撃を行なっていた際の位置に、先程までと異なる長方形の箱が出現し、落下していた。そして、何より異質だったのは、その落下した箱は地に当たると同時にクライルの手で消されたが、中から水が音を立てて落ちていたのだ。


(水、水?ただの水か!?いや、そんなわけない、さっきの感覚からして──)

「ふひひっ、君の戸惑いを感じるよぉ」


 葵の立っている場所に向けて、水で満たされた長方形が地に刺さる様に落ちてくる。彼が転がり、走って避けた場所にはそれが必ず足跡の様に落ちてくるものだから、まるで追い込んで狩りをしている様ではないか。


「これまで体験してもらったこの街での出来事、そしてそれを用意した相手、そんな相手に君はどうしても全ての行動き警戒をしなければならない」

「手の内が分からないのは、お互いのはずだけれどね……!」

「君よりは分かってるよぉ、見たまんまだしぃ。ほら、避けないと危ないんじゃあない?」

「っわ!?」


 その警告に嘘はなく、上半身を逸らしたと同時に服から飾りが落ちる。葵の身代わりになったその飾りは水に満たされた箱に閉じ込められ──


「ご覧、手品だよ」


 箱の中のそれが突如として泡立ったと思えば、藻に変化したのだ。それだけでも葵を驚かせたが、先程と同じ様に水だけを残して箱が消えたと思えば、その藻が意思を持った縄の様に葵を拘束せんと伸びてきたのだ。

 無論、それを甘んじて受けるわけもなく飛び退いて回避する。


「っな、んなんだよ!気持ち悪い!!」

「手品にはぁ、拍手を返して欲しいんだけれどねぇ」

「趣味の悪い芸に何で拍手しないといけないんだ!!」


 そこでふと思い当たる。透明な容れ物、中身は満たされた水、その中で眠る人魚。彼が箱を出せる量はまだ判明していないが、彼等の能力はとある条件下で強化される以上、出せる量を仮に50とした時、常時10を使用していたとしても残りで対応は可能だろう。

 そして、特定の条件下。思えばそれでしか説明が出来ない場所だった。


「そうか……ッ!この街そのものが、クライルの作り出した領域で、人魚達を作り替えていたのも、素材にする手段も、その能力。領域内だと君達の心器は強化されるから、人魚達を改造しながらも戦闘にその力を使えるだけのリソースが残るんだ!!」


 葵のその指摘に思わずクライルは自分の口元を片手で覆い、そして目元は嬉しそうに弧を描いていた。見せつけておいて、チラつかせておいた側である以上マッチポンプの様でもあるだけに、何がそんなに可笑しいのだろうか、と。


「ひひひひっ!あぁ、あぁ、そうだとも。だからね、だからね?君はエリア嬢に呼ばれた時点で不利な戦いを強いられるのはぁ、決まっていたんだよ」

「勇者を倒す為、だね?」

「無論。君があの洞窟から出る所も、見ていたとも。あそこで死んでもらう予定だったわけだし、この街でも何度も君を殺す手段は用意出来た。罪のない人々、だったかな?君にとってのそんな感じの彼女達に仕事をして貰えば幾らでも、何ならエリア嬢にもやる機会があった」

「俺を狙う為に、俺を殺す為に散々、散々、貴方はそんな手を使って人の心を弄んで来た。でも、彼女達が俺の命なんかで人殺しにならなくて良かったとは思うよ」

「そう、君の命で彼女達が人殺しになったのならば許せなかったろうねぇ。こんなに紅音を近くに感じられる存在を、命を殺すなんて、とんでもない」

「……」

「あの笑顔が、あの言葉選びが、あの立ち姿が、あの声が、あの瞳が、あの揺れる髪が、ああ、何度思い出してもそれは夢の様だった!現実にお互いいるのに、会えない、2度と会えない。運命の出会いなのに2度目がない!そぉんな悲劇、やっぱりね、納得出来ないわけなんだよ。水槽の中よりも気を取られた水槽の外の人間。そんな人が水槽の中で、触れられないのにこちらを見つめてくれるのなら、どんな薬も、どんな夢も、全ての物を追い越して、至高の景色が生まれるだろうとも!滝沢紅音は夢で、幻の人、でも存在するなら今度こそあの美しさを永遠にしてあげたい。わたくしだけの水槽で見つめ合いたい!伴侶なんて、恐れ多い。わたくしはわたくしは、至高の美の殉教者でいたいのだよぉ!!!」


 きっと、この街という舞台も至高の人魚、彼にとって至高の美である紅音の為の場所なのだろう。きっと、触れられない事を強調するのは魚を観る時と同じスタンスである表明と、自分の釣り合わなさゆえの諦観。彼の周囲の男達は、確かに一般的に見れば顔が良いとは言い難い男が集まっていた。

 彼なりの芸術観のみかと思えば、彼の諦めの詰まった場所だ。紅音を作ろうとしている事も然り。


「だからこそ、君が必要なんだよ。葵くん」

「俺が全然紅音じゃなくても?」

「いいや、よく似ているとも。言葉の間の取り方からしてそう、それってそう簡単にただの他人では似ないんだよぉ。その髪もそうだ、丁度彼女と同じくらいの長さだねぇ。それにその瞳、紅音よりも少し目の色は薄いけれど目尻まで余さずよく似てるとも、その唇、その細い身体もそうだ、手は紅音よりも少し骨ばっているし背も彼女より3cm程は高いし、彼女より肉付きも少し悪い。でも、あまりこちらで調整する必要もないほどにその程度の違和感で済むとも……あぁ、口にするほど、君は完璧な紅音の材料だ」


 悍ましい、気も悪い、こんなにも肯定されているというのに、それを褒め言葉と当然受け取れるわけもない。なにせ、葵の尊厳に対して何も配慮はない。あれば人魚や男性達は犠牲になる事などなかった事だろう。加えて、誰かの代わりとしての質の高さ、ましてや姉の代わりとしてと言われれば、葵の中の不快感はより強まる。

 元からリミッターのない男なのか、どうなのか分からないが、確か事は彼は葵を殺さない誓いを立てるほどに、葵を通して紅音への想いに焦がれていた。


「俺は姉さんじゃない、俺を過大評価して、勝手に貴方の物差しで姉さんの代わりにしないでくれ」

「いいや、何度でも伝えよう。君は紅音によく似ていると。胸を張れる様に、何度でも君を肯定して差し上げよう」

「そんな肯定不要だ!!俺が、俺自身を、肯定出来ないのに、姉さんを重ねた俺が肯定されても、それは俺への肯定になんかならない!!」

「ふうぅぅうん?やれやれ君も随分と、困った人だね。君は我が強い。でも、大丈夫だともぉ、時間をかけてでも認めさせてあげるからさ、この戦いに勝って、ね」


 クライルにとって、自分から滴り落ちる血に最早興味はなかった。目の前には彼の命よりも大切な目的のゴール地点が、逃げも中断も許されない、死ぬか手に入れるかの2択しかない中立っているのだから。

 そうして、彼は両手を広げる──


「魔王の使徒にして序列7位、クライル。ようこそ、我がアクアリウムへ、夢に溺れた者同士、この戦いで仲良くなろう。滝沢葵君」

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