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 怖い話と言えば。そうそう。

 ドッペルゲンガーね。あれなら、遭ったことがあります。

 いや、遭ったって言うと変だな。友達が私のに出くわしたんです。はい。

 それがまた妙なドッペルゲンガーでして、なんかこう、普通じゃないんですよ。


 会社で仕事してたら、急にフリーターの友達から電話が掛かってきて。

 最初は無視してたんですが、あまりにしつこくコールするので、思わず出てしまったんです。そしたら、

「お前、財布忘れてったぞ」

 って。

 話を聞くとそいつ、どうにも昼間から酒を飲んでいたらしくて、そこに私も居たはずだ、って言うんですよ。

 私はもちろん会社に居ましたし、飲み屋に居るはずがありません。

 そもそも、そいつとはここしばらく遊んでいませんでしたから、私の財布を持っているのがおかしいんです。

 でもヤツの遭った私は、会社を最近クビになったから、昼から飲み歩いていたことになっているらしいんですよ。

 私もこの辺りで、段々頭がこんがらがってきて。

 しかもそいつの私は、髪まで染めていたって話でした。私がそれを否定するために、黒髪のスーツ姿で、会社の喫煙所に居る写真を送ると、ヤツは酷く混乱した風でした。

 だから言ったんです。

 お前、酔っ払ってるだけじゃないのか。

 ひょっとすると、酒の飲みすぎで頭やられたんじゃないのか。

 お前が私と遭ったってんなら、その財布とやらの写真を今直ぐ送れ。

 できないなら、タチの悪いイタズラってことになるぞ。

 流石に業務中です。喫煙所に長く居座ることもできませんし、話の通じない相手に、ワケの分からないことを言われ、私も少し苛立っていました。

 ヤツから送られてきた写真を見て、それは益々増しました。

 私の財布では、あったんです。

 ですがそれは「型だけ」で。

 同じメーカー、同じ種類の、色だけが違う財布。

 そんな嫌味ったらしい、手の込んだこと。裁判風に言えば明らかに「計画的犯行」です。

 私は激昂して「こっちは社会人だぞ、だからお前はフリーターなんだ」とか酷いことを言って、電話を切ってしまいました。


 それだけなら、単なるイタズラとして済んだんですが。


 もうお察しかと思いますが。

 その電話があった以降、私の身の回りでは、「似たようなこと」を言う知人が続出しました。

 いずれも、私が居るはずのない場所で。

 ときには県を三つも四つも跨いだ場所での目撃情報があがってきました。

 しかも奇妙な共通点がありまして。

 どのドッペルゲンガーも皆、私を騙るようなんです。

 街で見掛けたとか、そういうのは全然無くて。決まって、話しかけられるというか。直接会話しているんですよ、皆。

 有給を取っているから休みだとか、出張でこちらに来ているとか、そんなもっともらしいことを言って。

 気持ち悪いですよね、まるで、私に成り代わろうとしているみたいで。

 でも、意外と騙される人は少なかったんです。

 話が噛み合わないとか、昔話をすると怪しいとか、そういう部分もあるんですが……。

 ──違うみたいなんです。

 髪色、目の色、ときには身長や体格が違ったり、顔付きが微妙に変わっていたり。

 騙されたのは、それこそさっきの居酒屋の友達くらいなもので。

 まるで敢えて「偽物らしさ」を残した偽物が、私の居場所を奪わおうとしているみたいで。

 なかには人種も何もかも違う、別人にしか見えないような外国人が、私を名乗って近付いてきた、と言われたこともありました。

 それ聞いたとき、思ったんです。

 ドッペルゲンガーが、もしも私の知り合い以外に声を掛けたとき。

 あるいは知り合いが、私のことを忘れた状態でドッペルゲンガーに話しかけられたとき。

 その人たちのなかで、本物って、どっちになるんでしょうかね。

 今はめっきり頻度が減りましたが、忘れたときにそんな連絡が入ってくるので、気が気じゃないんですよ。

 まあ、それだけの話です。

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