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金属を破壊する金属

作者: カケル

この世界は機械が当たり前となった。

人間の身体は機械に成り代わり、機械生命体となった者だけがこの世界を支配する世界へと変わった。

「……」

俺はゴミ山に訪れていた。

金属の山から使えるものを探して、自分の身体に組み込む。

そんな毎日を過ごして、日々自分をアップデートすることに勤しんでいる。

「……」

けれど正直、こんなことに意味があるとは思っていない。

ただ生身に機械を仕込んでいるだけの『遊び』だ。

本物の機械生命体は体そのものが機械だ。

こんながらくたを生身に組み込んで改造した人間を、機械生命体とは言わない。

「……」

使えそうなパーツを探し、脳力開発するためのチップを開発するために。

手にとっては捨て、手にとっては捨てを繰り返す。

ただのごみを宝物にするために、よりよい世界へと羽ばたくために、機械生命体と同じ景色を見るために。

「ん?」

液体の入った小さな箱を見つけた。

滑らかで美しく輝く銀色の液体。

液体金属だ。

見た目は水銀やガリウムに似ているのに、中身はまるで違う。

「……」

聞いたことがある。

金属を破壊する金属が存在すると。

曰く軍事開発された兵器だとか言われているが、正直都市伝説みたいな話である。

「……」

馬鹿馬鹿しい。

俺はそれを適当に捨てた。

遠くでパリンと割れる音が聞えたが気にしない。

使えるものを探すべく、俺は続けてゴミ山を漁り続けた。

「……?」

遠くで溶けるような音。

俺はそちらに視線を向けて、眼球のレンズを調整して拡大する。

さっき液体金属の入った箱を捨てた方向だ。

そちらに歩み寄ると、そこには溶けた金属があった。

「?」

溶けた金属の周辺には箱の残骸。

俺が投げた物と一致する。

「え?」

音を立てて金属を溶かしていく液体金属。

四方にその液体金属は伸び縮みして、金属の山を呑み込んでは破壊している。

俺は慌てて、その金属に触れてしまった。

怪我によって失った右腕を機械化している。

その右腕が液体金属によって徐々に溶かされ、制御が利かくなってきたのだ。

「くっ」

右腕を切り離し、下に転がるそれ。

しまいには完全に溶けてなくなり、原形が無くなる。

「な……」

四方八方に伸び続ける液体金属の破壊。

『それ』から距離を取りながら、頭部のチップを用いて被害を計算する。

「そんな……」

すぐそこの街が数日で消えてなくなる。

等速で動き続け、近くの金属を手当たり次第に溶かして破壊し続けていた。

「お、俺のせい?」

液体金属を開放したのは俺だ。

日ごろから、こんな世界無くなってしまえとは思っていたけれど――。

急に怖くなり、俺はその場から走り去った。


――


数日して。

あの街が未知の液体金属によって破壊しつくされたニュースが世界に知れ渡った。

未だこの金属の進行を食い止める術は見当たらず。

今なお広がり続ける液体金属の脅威によって、この世界は混乱の渦へと巻きこまれた。

俺は街を捨て、ゴミ山を捨て、遠くへと足を運んでいる。

壊れた腕の代わりはまだ見つけていない。

人知れぬゴミ山の中で、俺は液体金属の破壊が治まるのをただ祈るばかりだった。


――


だが数か月経ってなお。

世界の半分以上が消えたこと以外、進捗はまだ見られていない。


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