表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕は君を必ず助ける、お金から。  作者: パパスリア
 
9/55

9話 二次嫁に夜のお勤め

「あー、疲れたね、あいちゃん」「夫の職場の上司や同僚に愛想(あいそ)笑い、疲れましたぁ」

「あいちゃんが皆の前で話し出すからだよ」

(のぞむ)が私を、『妻のあい』ですっ、て紹介するから、職場の人だし、無視はできません」

「いや、僕は確か『AIのあい』ですって言ってよ。妻とAIは絶対間違えないよ」

「いいえ、はっきり『つ、ま』て、言いましたぁ~~~」

「『つ』と『A』じゃ、母音すらあってないよ」

 今日は忙しかった。深夜のシフトに病欠が出て、急遽(きゅうきょ)僕がギリギリまで入る事になった。

 今は23時前、晩ご飯は(まかな)いが出た。

 ピンポン。「ふうぅぅぅぅぅっ、あの女からのメールですぅ」

「あいちゃん、女の子って言ってたのに、嫌な感じだよ」「うーん、御免なさいですぅ」

「あいちゃんはそう言う、素直なところがとっても素敵で可愛いよ」

「やっ、やだぁ~、もぉ~~~、そうでしょぉ~」「手順通りだと、予約の完了かな」

「そうですねぇ~、『確認しました。21日ごろに再度メールします。都合が悪い時は早めに連絡を下さい』だって、何かドキドキするね。僕の事は伝えたけど、どんな子かな、あいちゃんはもう知ってるよねきっと、教えてよ」

「やですぅ、はぁ~~~、楽しみにしてて下さいですぅ」

 なるほど、あいちゃんは本当に素直だね。

「そうだ23、24、シフト入れない様にしないと、明日もあるからお風呂入って寝よう」

「ダメですよぉ~、・・・(のぞむ)には、まだ夜のお勤めがありますからねぇ」

「あい、僕は今日とっても疲れているんだ。今度(こんど)にしてくれないか」

「約束したじゃない。その、・・・3回、私、そろそろ赤ちゃんが、・・・欲しいの」

「と、言う様な会話は、成立しない。と思うんだ」

「します、ぜぇ~ったいしますっ」「そうかなぁ~」

「・・・じゃぁ~、あの子に逢った時の為のぉ~、しゅみれーしょん、とかぁ」

「あい、今夜は寝かさないよ」「何ですかぁっ、それぇーーーーっ」


 あれから一切、連絡はない。僕からもメールをしない。

 日々、熱中症を気にしながらバイトを続け、これまでと同じ様に、何一つイベントが起きる事も無く、順調に消化して行く。

 ただただ、女の子のあられもない姿を見つけては、一喜一憂(いっきいちゆう)する。

 そして今日、八月二〇日、夏休みに入る前から始め、一日も休まず働いた成果が銀行に振り込まれた。

 税抜きで23万強、僕はかなり頑張った。

 そして今も、可愛い女の子を見かけては、目で追いかけるバイトの帰り。

「あいちゃん、有難う、目標額以上を達成だよ。何か(おご)るよ」

「メモリー、メモリーとSSDとグラフィックボード希望っ」

「あいちゃん、それじゃ、全部なくなっちゃうよ」

「んーーー、じゃぁ~、せめてメモリーと外付けSSD」

「あ~、でもお金足りるかな」「私がチョイスしますから、大丈夫ですぅ」

「これでもっと、色々な体位(たいい)(ため)せますぅ。激しくしないでねっ」

「そうだね。あいちゃんが壊れちゃうと困るからね」「壊れてやるぅ~」

 ピンポン。僕は足を止めて、通行の邪魔(じゃま)にならない処に身を寄せた。

「あの子からですぅーっ」「え~と、時間と場所だ」

「ふん」「あいちゃん、消さないで、表示して」

「あーんもう」「有難う、ちゃんとメモリー増設するよ」「SSDもですぅ」

「時間は、・・・10時、ばぁ~しょぉ~は、国立南洋美術館前」

「『都合が良ければ、返信で携帯の番号を教えて。明日、12時までに返信が無い時はキャンセルとします』だそうですぅ、・・・(のぞむ)自律(じりつ)神経(しんけい)も、心拍(しんぱく)も変ですぅ」

「もう3回寝たら、可愛いリアル女子といちゃいちゃ出来ると思うと、緊張しちゃって」

「はいはい、二次元でわるぅ~御座いました。そぉーですとも、(さわ)れませんよっ。所詮(しょせん)データですからっ、緊張なんてしませよねぇー、ねえーーー」

「そっ、そんな事ないよぉ~、あいちゃんの言動は、色々な人の間で、僕を緊張させるよ。とっても心臓に悪い」

 最近、バイト先であいちゃんの存在が知れて人気者だ。

 その一方で僕は、二次嫁に毎晩、夜のお勤めをする変態さんとして認知される様になっていた。

 あいちゃんが僕との関係を、色々と(あや)ういものであるかの様に話すのだ。

 その所為(せい)で幸か不幸か、女性には安牌(あんぱい)とされ、気軽に話かけて貰える様になった。

 しかしそれも後3日で変わる。

(のぞむ)、『(あと)3日で』とか考えても無駄ですよっ、全力阻止(そし)ですっ」「あっ、あーーーっ」

 僕のスマホが、小っちゃいあいちゃんで埋め尽くされ、何も操作が出来なくなった。

「ふっふん、これで返信できませぇーん、キャンセルですぅ~。嫁をいじめるからですぅ」

「こんな手は使いたくないけど、あいちゃん覚悟はいい、泣かしちゃうよ」

「私には(さわ)れられませぇーん、べぇーーーっ」

「僕は今からバイト先に戻るよ。今晩のシフトには小泉さんが入ってるんだ」

「ひぃっ、まっ、さか、そんな事しないよねっ、ねっ」

 バイト先の先輩の小泉さんは、あいちゃんを大変お気に入りで、スマホを貸してあげると、とにかくあらゆる場所を(さわ)ろうとする。そう、あらゆる場所だ。

「そのまさかだよ、あいちゃん。ふふふっ、『一晩預かりたい』てっ、言ったからね」

「いやぁぁぁあああーーー、止めて止めて、御免なさいっ、許してぇ~。あの人、全身(さわ)るのぉ~」

「泣かなで、僕が悪かったよ。誰にも渡さない」「…ほんとう」「ずっと僕の(そば)にいて」

 …あれっ、(わな)、かな。・・・スマホが通常に戻った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ