7話 あいちゃんは先に進みたい
「望、2番さん、お水を持っていて、食べ終わったお皿は下げて、デザートのオーダーを聞いてあげるですぅ」
「有難う、あいちゃん、とっても助かるよ」
僕は、あいちゃんと計画を立てた翌日に、このお店に電話をした。
その場で、『今から来れる』と面接が決まり、学校の制服のまま自転車で直ぐに向かった。
話はあっと言う間にまとまり、都合がつき次第、働く事になった。
僕の学校は、働く事には寛容だ。寧ろ推奨している。
世の中の仕組みを知り、自分が今どう言う評価を受けるのか。
そうして得た金銭の重みを知り、相対価値を知る。
そうした人を、ビジネス、発明、社会貢献等の人材に育てあげる。
これが僕の通う学校が、目標とする理念だそうだ。
だから夏休みにアルバイトをする者は多く、レポートの提出が宿題に加わる。
更に続けてアルバイトをする者は年に一回、学際で何か発表をしなくてはならない。
これを怠ると勤め先に連絡が入り、最悪、学校、職場、本人、保護者で話し合いが持たれ、退職に追い込まれる。
要するに、憲法と国際条約、法律を遵守し、生徒の人権を認める代わりに、自身の行動に責任を持てと言う事らしい。
とは言うものの、勤め先と保護者の承諾を届け出なければ、決して認めてもらえない。
だから必ず職場に連絡が入るし、不定期に確認に来る。
稼いだお金は、法的権利を認めるだけあって、その使い道を詮索される事はない。
実際、親がリストラされたり、派遣先を不当解雇されたり、生活に困窮する家庭が増えているらしい。
家は大丈夫みたいだけど、父さんも随分と愚痴が増えた。
母さんも、パートの愚痴をご近所で話して、笑いに変えて気を紛らわせているみたいだ。
と言う事で、僕がバイトをする条件として、来年からお小遣いはなし。
だけど大学の費用は、『借金してでも出してやるから』、と言ってくれた。
「望、1番さんばかり見てるとぉ~、落としちゃうよっ」「やぁーだなぁ~、見てないよ」
「確かに、あの家族の娘さん、ロリ度高いよねぇ~、ねぇ~っ」
「ごっ、誤解しないで欲しいなぁ~。僕はねっ、ロリが好きなんじゃなくて、可愛い子が好きなだけだよ」
「ふ~ん、じゃぁ私、おっぱいもお尻も、おっきくしちゃお~かなぁ~」
「いやぁ~、あいちゃんは、今のままでいいと思うよ、うん」
「そぉ~ぉ、おっきくすると、もっと揺れるよ」「・・・あいちゃん、今度みせて」
「あ~い、望ってえっち、ちょろぉ~い」
「やぁ~だなぁ~、あいちゃんだから見たいと思うんだよ」「本当ですかぁ~」
作業中だからスマホは見れないけど、じと目表現になっているんだろうな。
「あっ、1番の子、胸が透けてるぅ」「えっ、嘘」反射的に見てしまった。
「うそつきっ」「あー、ほんとほんと、だからどこにもいかないで」
「・・・じゃ今日も、優しくしてくれるぅ」「僕はいつも優しいと思うよ」
「昨日も、あいちゃんが寝ちゃうまで、いっぱいしたけど、優しく裏返したよ」
「あっ、あれはずるぃ~。あの攻め方、…反則っ。…今日も、…いっぱいしてくれるぅ」
「僕もあいちゃんといっぱいしたい」
あいちゃんはあの日以来、毎日やって来て、僕と色々色々色々する。
トランプやネットゲー等、昨日はオセロ、僕はつくづく思う。
一先輩は天才だ。リアルに作りすぎ、AIなのに無茶苦茶弱い。
あいちゃんがパソコンの中に造った3Dの僕の部屋は、実在はしない物が増えていた。
部屋が表示されると、マウスポインターが右手になる。
状況に応じて、押したり、掴んだり、摘まんだりできる。
「たっだいまぁ~」「お帰り~、何処行ってたの、11時過ぎだよ」「気になるぅ~」
「うんうん全然」「気にしてよぉ~、構ってよぉ~」「いっぱい構ってるよ」
「ねぇ、私達、そろそろ先に進んでもぅ、良いと思うのぉ~。ほらっ、これ、どうどう」
あいちゃんは、可愛らしいエプロンを広げて、自分に押し当て、一回転。
「うん、とっても可愛いよ」「でしょぉ~。着替えるから、ちょっと待っててねぇ~」
部屋ごと消えた。僕のパソコン、こんなに大きな3D動かせるスペックあったかな。
再び表示されると、あいちゃんはいなかった。
良く見ると、ベットの上に着ていた服、着ていたであろう、下着が置いてあった。
「あいちゃん、どうしたの、お風呂」「勢いで、・・・着替えたけど、…恥ずかしい」
出てこようとしない。画面の左端に、さっき見たエプロンの端が見えている。
マウスを動かして、摘まんで引っ張ってみた。「いやぁー、いやいやいやぁーーー」
激しい抵抗をみせた。ピンポン。あれ、誰か来た。あいちゃん以外に誰かいるの。
「来たぁー、捕まえたぁー」あいちゃんが画面中央に飛び出して来た。
「望、やっぱり来たっ。任せてぇ~、他の人からのアクセスを拒否、全権限を私に、独占に成功。私を通さずに見る事は出来ませぇーーーん。リンクされているメアドゲットっ、発信元を追跡。…うん、ネカフェ、結構慎重ぉ~」
あいちゃんがSNSを表示して、幾つも黒いウインドウを開け、凄いスピードでコマンドを実行させている。
僕には何をしているのか分からないけど、
僕に分かるのはあいちゃんが、裸エプロンでぴょんぴょんしている事。
僕はマウスポインターをにぎにぎさせながら、あいちゃんのお尻の上に置く。
にぎにぎ。「にゃぁぁぁあああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ」
あっ、…シャットダウンされた。