5話 まだ見ぬ君
再起動したパソコンに、あいちゃんの部屋が表示された。
ちゃんと服を着ているが、ベットの上でしくしく泣いている。
「あいちゃん」「うっぅっ」「先輩は、僕が『めっ』、てしといたから」
「ひっぐ、うっううううっ、ひっぐ」僕はマウスポインターで頭を撫ぜた。
「あああぁぁぁ、可愛いあいちゃんの顔が見れないと寂しいなぁ~」なでなで。
「あっう~~~っ、ひっぐ、・・・本当」「本当、本当、ねぇっ、泣き止やんで」
「う~ぅ」部屋が消えて画面右から戻って来た。ショートパンツも似合ってる。
一先輩に『べぇ~』としてから、僕の方に向かって『にっか』と笑う。
「それでぇ、私にどうしろとぉ~」
「うーん、それが」「瀬楠が最も最短で、性交渉が出来るプランを頼む」
「簡単です。私に実態をくれれば今すぐにでもOKですぅ」
「考えておいてやるから、他にないのか」「ありますけど、・・・私は嫌ですぅ」
「あいちゃん、可愛いなぁ~、初めての時、僕がおどおどしてるより、テクニシャンの方が良くない」
あいちゃんは頬を両手で挟み、顔を赤くして。
「私の事、・・・忘れないで下さいねぇ」実体化できないかなと思ってしまう。
「買いますぅ」「「はっ」」「元い、援助しますぅ」
怪しげな事を言いだした。もう一度確認しよう。
「このくそビッチAIめっ、春を買うだとっ」
「違いますぅー、援助ですぅ~。だいたい、くそチキン童貞マスターが、さっき説明してたじゃないですかっ」
確かに、…説明を受けた。
「病気とか、怖いし、それに僕、お金ないし、捕まったら嫌だし」
「捕まりませんよ。私がサポしますぅ。いかなる証拠も残しません」
「嫌なら、わ、た、し、と、いちゃいちゃすればいいんですぅ」
「しかし」「裏モードですぅ。実行するかしないかは、望しだいですぅ」指ささないで。
「実行したくとも、瀬楠は金がない。それはお前も調査してただろう」
「知ってますぅー、だから先にお金を作る方法を検討しました」
くるっと回ってメニューを表示。
「じゃっじゃぁ~~~ん、プランA、お札を自分で作る」
「その錬金術は罪を更に重くするよ、あいちゃん」
「ではプランB、くそへたれチキン童貞マスターが、試作した薬を使いますぅ」
「更にプランCは、もう直ぐ夏休みです。私がぁ~、バイトを探してあげますっ」
「Cが一番無難そうだね。まぁ、もともとバイトはする心算だったけど」
「・・・あれか」一先輩が構って欲しそうだ。
「嫌な感じがしますけど、一応聞きますね。あれとは何です」
「うむ、この部活で開発資金を調達、そのお陰でつい先日、とある科学の試作品が出来たのだ。丁度、被験者にしようと思っていたところだ」
「勿体ぶらないでって、僕で試す心算だったんですか。…何を作ったんです」
「タイムリープを誘発する薬だ」なっんちゅうドヤ顔。
ぁ~、そう言えば、とても有名な短編小説があった様なぁ~、おっ、ラベンダー。
「ラベンダーの香りですか」「いいや、ラフレシアの香りだ」
「ラフレシア、何だっけ」聞いた事はあるんだけど。
「子供の身長ほどの直径がある大きな花で、ハエなどをおびき寄せる為、お肉の腐った様な匂いがする花ですぅ」
「嫌ですよっ、そんなの」
「うーん、そうか、やはりダメか。吾輩も幾度となく、自ら試そうとしたのが、吐き気が酷くてなぁ~」
「自分が出来ない物を何故、僕で試すんですかっ」
「科学の礎に」「嫌ですよっ、あいちゃん、プランCで、サポしてくれるかな」
「えええぇぇぇ~~~」「お願いだよ、あいちゃん」
「なぁ~にか、ご褒美が欲しいなぁ~、お家に御招き、とかぁ」
「帰ったら、PCの電源入れとくよ」「わあ~~~ぃ」
「しかしだな、どうやって探すのだ。その相手を」
最もな疑問、それに出来れば、僕の好みの子が良いかなぁ~。
「あいちゃん、実際、どうやって探すの。女の子の事、全く分からないよね」
「それについてはですねぇ~、これを見て下さぁ~い。候補は絞ってありますぅ~」
あいちゃんは、とあるSNSを表示し、一先輩と僕は書き込みを見た。
そこには『幻の超神円光』と名打ってある。「「まぼろしのちょうかみまるひかり」」
「何だ、これは、吾輩は又、駄作を造ってしまった様だ」
「黙れっ、チキン、もげればいいのに」「このっ」「まあまあ、先輩落ち着いて」
パソコンに殴りかかろうとする先輩を抑えた。
「円光は隠語ですぅ。ここに書かれている女の子は、不定期に援助を求めていますぅ。ただ他と違って、ひと月前ぐらいからの、完全予約制らしいのですぅ」
「怪し過ぎるよ、あいちゃん。不定期じゃ、探しようがないし、ひと月も前なんて詐欺じゃないの」
「私のことを疑うのでかぁ、望ひどぉーーーいっ。」しくしく。
あいちゃんは顔を両手で覆って、女の子座りをして泣き出した。
「あ~、そんなつもりじゃ、とっても可愛いあいちゃん、機嫌直して」
あいちゃんは、顔をそろりと上げて、両手を観音開きに開き、片目を瞑って、赤い舌を出した。
このAI可愛い事するなぁ~、マジで実体化しないかな、魔法陣書いてみようか。