44話 施しは受けないわ
ケーキ屋さんで大はしゃぎのれんちゃんは、迷いに迷って、ショートケーキを10個買う事にした。
ご飯は結局、駅前のお弁当屋さんで4人分のお弁当とお茶を買い、そのままタクシーで僕の家に帰って来た。
運転手の人には、母親と子供3人に見えたに違いない。
「どうぞ」「あー家よりひろーい」「これ、恋、静かにしなさい。失礼します」
「お邪魔します」「ここは、あっ、おトイレ」「恋」「このお部屋は、ベットがある」
「れんちゃん、パソコンにはさわらないでね」「はぁ~い」「恋が妙になついているわ」
僕はカーテンを引いて、電気を点ける。
「先にご飯を食べますか、僕、お腹が空いて。れんちゃんもご飯食べるよね」
「ケーキ」「僕は良いけど」「あっ、そうね。恋、ご飯が先よ、お手伝いをして」
「え~~~」「恋、言う事利きなさい」お姉ちゃんの方が制する。「じゃ、早く食べよう」
「れんちゃん、ケーキは一旦、冷蔵庫に入れようね」「隠すの」
「隠さない隠さない、じゃ一緒に来て」僕はれんちゃんと一緒に冷蔵庫へ。
「見てて」僕はれんちゃんに見えるように冷蔵庫を開ける。
「はい、ここに有るよ。それじゃ、ご飯食べよう」「うん、分かった」
「妹さんがいるのかしら」「僕、一人っ子です」
「どうしてそんなに慣れているの、恋がなついてるし」「どうしてかな」
僕達は、コタツに入ってご飯を食べる。
れんちゃんがテレビの正面、でもこの時間はもうアニメはやってない。
その両脇にお母さん、お姉ちゃん(もっと話した)、僕はその隣に詰めてもらって座る。
そうしないとテレビが見えなくなる。
まぁ、当たり前と言えば当たり前、れんちゃん以外は喋らない。
でも、れんちゃんはコタツの熱と、満腹感で眠ってしまった。
手早く片付けたところで本題だ。
僕はなぜか神楽坂 許と言う、おそらく、女の子を探してる。
いや、探し出さなくてはならない、絶対に。
今、目の前にいる女の子は『ゆき』と呼ばれているが、苗字は神楽、一致しない。
「あの、君は中学生、私を買うの」
「僕にも良く分らないんです。ただ、助けないといけないと言うのがあって」
本当は、訳も分からず人探しをしている、とはさすがに言えない。
「私達は見ず知らずのあなたに、施しを受けるつもりはないわ、ママが嫌なら私を買いなさい」
「許、何を言うの」
「私も高学年になったし、学校でお友達とお話して、分かってるから。男の人が私を見ているのも知ってる。ママ、恋もいるの。それにママ、あの家に帰っても、乾パンも、電気も、ガスも、水道も、電話も、ネットも、全部、使えなくなった。この人が最後よ」
「でもね、許、あなたには」
「それだけじゃない。国民健康の証、借金が溜まって利子まで付いてる。金貸しより酷いは、金貸しはお金を貸してくれる。それで暫くはご飯も食べられる。でも、国民健康の証は、お医者さんに行くお金がないから使えない。なのに一方的に借金が増えるのよ。幾ら溜まってると思うの、ママ」
ゆきは凄くしっかりした子だ。
「ママ、このお金があれば、借金と利息を返して、暫くは食べられる」
「うぅぅぅぅっ、…御免ね。もう、ママには、謝る事しかできないの、うっぅ」
「ママ泣かないで。ママは頑張った。死ぬ以外の事は全部したわ。私が知ってる。だから私にも手伝わせて。それにこの前の様な人に連れていかれるより、私はずっといいと思うの。結局あの人は逃げたし。この男は私達を自分の家に連れて来た。通報すれば言い逃れは出来ないわ」
「許」「私、今日はここに泊まるから。明日は学校お休みだし」
「恋を連れて、家に戻って。ここの方が暖かいけど、それだと私が困るから。私で良いかしら、ママが良いなら」
ぶるぶるぶる、完全拒否。「ママ、ちょっと傷つくな」「それじゃぁ、私が残るから」
「あー、れんちゃんは隣の部屋で寝かせれば」「でも、私、ここで」「隣も借りてるんで」
「許どうしたの、真っ赤よ。調子悪いの。熱があるのかしら」「大丈夫だからママ、ぅ~」




