42話 お金を稼げるだけ稼ぐ 7年前(二つの通帳)
僕は部屋を出て、居間に向かった。
と言っても団地だから、6畳の部屋が二つとキッチン、小さなダイニング、おトイレ、洗面、お風呂場、これで全部。
おっ、二人共いる。コタツでテレビを見てる。いや、これはじゃれてるな。
「ちょっと、パパ、やぁ~めぇ~て」「え~、パパ、なぁ~にもしてないよぉ~」
「足をこちょばしたぁ」「ぇ~」「ちょ、・・・ちょ、にゃははは、やぁ~っ」
「仲いいね、相変わらず」耐えきれずに割って入った。
「いいだろぉ~ぅ」「はいはい」「もぉ~」バッチン。父さんが母さんに叩かれた。
「おっ、入れ」「何食べる、望」「う~~~ん、さっきの見てて、お腹いっぱい」
バチン。「痛いっ」「余計な事言わないの、何食べる」「パン、つぅーね」
「あー、誰に似たの」「はぁ~い、パパだよぉ~ん」
「手、上げない。あ~、こんな子、お嫁さん来るかしら」
「俺にはこんなに素敵なお嫁さんが来たよ。だから大丈夫さ」「ならいいけど」
母さんはコタツから出て、パンをトースターに入れ、目玉焼きを作ってくれている。
僕も立って、自分のマグカップに粉を入れてコーヒーを作る。
チィ~ン。焼けたパンをお皿に乗せて、マーガリンと一緒に母さんが持って来てくれた。
マーガリンを塗っている間に卵が焼け、母さんもコタツに戻って来た。
「父さん、株をして、大儲けしたいんだ」「「はあーーーっ」」二人がこっちを見る。
「あのね、望。…賭け事は儲からないの、そう言う風になってるの」
「そうだぞぉ~、ママの言う通りだ。ぁ~しかしパパも考えてはいた」「えっ、そうなの」
「う~ん、泡の崩壊とか、るぅーまんとか、震災とか、色々あって派遣の給与は下がったまま。税収を上げる為、物価だけは上がり、望の学費や老後の資金を、今から考えないと」
「それで賭け事」
「でも母さん、テレビの人は、株はビジネスで賭け事じゃないって、言ってるよ」
「嘘よ。ただの自己弁護。投資と言うのがそもそも賭け事なの。損をする事があるから」
「じゃ、…会社は、おっきな会社が大きな損をしたって」
「望、先の見えないもの、結果が分らいものは、広い意味で全部、賭け事だ」
「じゃぁ、賭け事じゃないものは無いじゃない」
「あるよ、税金は違う。皆から搾取するものだからね」
「ふ~ん、でもその話だと、結果を知っていたら、賭け事じゃないんだね」
「まぁ、そうなるわね」「なら僕は大丈夫だ。僕は過去に戻れるから、結果を知ってる」
「お前、アインなシュタイン、全否定か。ママ、どのみち何か試さないと、じり貧だ」
「ん~~~、まぁ、パパがそう言うなら、良いけど。そんなに沢山のお金、出せないから。望も、お年玉を貯めた分ぐらいしかないから、後から困っても知らないからね」
「じゃ、やってみるか。ママ10万、税金面倒くさいから別の銀行に新しい口座作って」
「あーもっ。銀行が開いたら、行ってくるは。望も同じ銀行で良い、金額も同じね」
「そんじゃ、新しい通帳が出来次第、口座を開いてやる。あとで泣くなぁ」
「心配しないで、父さんのもやっといてあげる。僕、失敗しないので」
「望、怒られるぞ」「誰に」「さぁ~」
そして年末、父さんと母さんは、二つの通帳を見て、手が震えていた。
「望、悪戯は止めなさい。…母さん、怒るから、通帳で遊んで」
「そっ、そうだぞぉ~。パパも口座を開いた後、ほったらかしにしたのは悪かった。でも、通帳は大事なものだ。悪戯して良い物じゃない」
父さんと母さんは、僕が悪戯をしたと思ってる。
でも違う。僕は本当に時間を1日遡って、株の変動を知っている(結果を知ってる)。
その結果、10万円のお金が、一月毎に倍以上に増えてゆき、それぞれの通帳に18億。
税金を支払った後の金額を計算すると、約15億が入っていた。
ただ、ここに至るまでに取引の会社を、増やしてもらっていた。
「それ本当だよ。僕、失敗しないので。それでね、相談があるんだ」
「何、何でも言って」「出来る事は何でもいいぞ」
「僕、一人暮らしをしたいんだ」「ダメよ、そんなの」「そうだな」
「そのお金、僕が儲けたんだよね、そのぐらい聞いてよ」「しかし」
「ちゃんと学校は行く。けど、この取引を続けたいけど、ここガチャガチャしてて、集中出来ないんだ。父さんも母さんも、この結果を見れば、続けた方が良いと思うでしょう。父さん、これだけあれば前々から言ってた、植物工場を起業できるでしょう。母さんも、父さんと豪華客船で、旅行したいって言ってたでしょう。一人暮らしで、集中出来れば、まだ儲けられると思うんだ。続けて父さんの口座も僕がするよ。良いでしょう」
「ママ、これだけ儲けてくれたんだし、この額、俺が一生働いても無理な額だ」
「でも、ご飯とか、お掃除とか」
「あっ、それ、人を雇うよ。母さん後ろに来て、平気で掃除機掛けそうだから。それじゃ一人になる意味がないでしょう」
「ママ、要らないの」
「今までのご褒美だと思って、父さんと暫くゆっくりして。どのみち家を買って、ここ出てるでしょう」
父さんと母さんは顔の見合わせて、ニンマリ。正直だな。
「分かった。その口ぶりだと、もうどこか決めてるんだろう。保証人、なるよ」
「パパ、甘いっ」「ママ何処行きたい」「えっ、グレーノバリアリーフ」
はっやっ、母さん、行く気あるじゃん。
神楽坂 許を探す、 神楽坂 許を探す。
「あ~、ふらふらする。神楽坂許を探す、・・・許、・・・誰、・・・とにかく、どれだけお金を積んででも、神楽坂許を探さないと」




