38話 彩先輩の提案
そして夕方。お弁当を三つ買って、再び先輩達の家へ向かった。
ピンポン、ピンポン、ガチャガチャ。「もう少し遅い方が良かったのにぃ~」
「そうですか。…彩先輩、顔、つやつやですよ」
「え~、判るの。・・・そうよねっ。とにかく上がって」「はい、これ、一先輩は」
「今お風呂。私の部屋には、ぜぇ~ったい、入っちゃダメだから」
「了解でぇーす」僕は靴を脱いであがる。
「おっ、来たか」左側からちょうど、一先輩がお風呂から上がってきた。
なんとっ。一先輩が、髭を剃って、髪を切ってる。
とんでもないイケメンに、男の僕が見てもそう思う。
「どっ、どうしたんですか」
「驚いた、私が切ったの。そ、れ、か、らぁ~一緒にぃ~、お風呂入ってぇ~」
「はしたないぞ彩」「嫌いになちゃったぁ~」「そんな事はない」「やっと素直になったぁ~」
「そうだ。瀬楠も先に風呂、入らんか。下着は吾輩のを使うといい。汚れては無いぞ、彩が洗ってくれてるからな。飯を買って来てくれたのか幾らだ」
「良いですよ」「神楽坂君はしっかり者だ。遠慮するな」「じゃ後で」
僕は一先輩の下着(新品)とTシャツ、ズボンを借りて、お風呂をもらった。
ダイニングは狭いし、エアコンがないので、一先輩の部屋でご飯を食べながら、話しを進める事になった。
テーブルは彩先輩の部屋から一先輩が持ってきた。
「それで、彩先輩」「はじめぇ~、あ~~~ん」「せんぱい」「分かってるぅ~」
一先輩も素直にちゃんと口に運んでもらっている。
「でね、この際ね、根本的な問題の解決を考えたらどうかな、と思って」
「しかしだな、彩」「ご飯付いてる」
一先輩の口の横のご飯粒を取って食べる彩先輩。
何だよ、もう、いちゃいちゃして、僕も許と、許と。
「どう言う事ですか」
「お金よ。話を聴くと許ちゃんは、お金が原因でトラブってる。許ちゃんも、その家族も、失踪していたお父さんも含めて、外的要因で生活が困窮する事になってる。元々は一般的な家庭環境だったのに、お父さん、お母さんが共に仕事を失ったから、だからいっぱいお金を作って皆助けるの。でも流石に時間がかかるわ。それがどのくらいの時期か聞いてる」
「詳しくは分かりませんが、今から、ん~~~、たしか6年前ぐらいだと思います」
「はい、あ~~~ん」「ふむ」「美味しい」「うん、まぁ~な」じ~~~っ。
「そっ、そぉ~、じゃ、7年前に戻って」
「うーんうーんうーん」一先輩が慌ててお茶を飲む。
「それは危険だっ、遠すぎる」
「何で、3日毎に遡れば良いんでしょう。あっ、そっか、セーブポイントが無いのか」
「待って下さい。7年前、僕が小6の時、丁度スマホを買ってもらって、嬉しくて、女の子のとっても素敵なショットを撮りまくってます。それから毎日」
「望君、…その素敵ショットって」
「透けてる、とか。パンツ、とか」「盗撮じゃん、許ちゃんに言いつけるよ」
「止めて下さいよ、僕のお宝なんですから。許にばれたらディスク自体壊されちゃいますよ、許の可愛いのも入ってるんですから」
「目ぇー覚ましたら、絶対言いつけるっ」
「でも、そのお陰でセーブポイントはクリアできます」
「いやいや、瀬楠、もっと根本的な問題なんだ」
「何々、どう言う事、あ~~~ん」「こっ、こら、今話してる」「もぉ~」
彩先輩は、自分の口に入れる。
「この宇宙の基本的な力、重力、電磁気力、強い力、弱い力の影響を少なからず受けるはずだ。最近はダークマターも影響している様だが」
「だからぁ~、何、どうしていつも、じらすのぉ~」
「瀬楠の能力が、どれの影響を受けるか分からんが、エネルギーは発生源から遠く離れ、時空間に広がるにつれて、減衰して行くことが予想される」
「3日です、そんなに大きな減衰しないんじゃ。これまでの事、ちゃんと覚えてますよ」
「彩、電卓取ってくれ」「あ~~~ん」ぱく。彩先輩が電卓を渡す。
「ふぁんばくろぐうご、がげう、なあな、2555日÷3は、851.666回。仮に一回の跳躍で、1/1000の減衰があるとしよう。掛ける851回、0.851、7年過去に跳ぶと、情報は8割以上失わると思うべきだ。これでは戻れても、自分が何しに戻って来たのか。その目的すら見失う。こっちに戻って来るにつれて、再受信して、少しずつ思い出すかもしれんが、それでは戻る意味がないだろう」
「「ぉぉぉおおおーーーっ」」「さすが天才っ」「もっかい、子種をよこしなさぁーいっ」
彩先輩が抱き着いて行く、お箸を持っているので危ない。
「こっ、こら、危ない、止めんか、怪我をしたらどうする、後だ後」「はぁ~い」
僕は今、否定されたところなのに、彩先輩の提案を実行できる、…何か、…何か、・・・何か方法は無いのだろうかと、思わずにはいられない。




