36話 いい加減い~え~よぉ~
そして又、この時点に戻って来た。ここで一先輩に状況を説明する。
「吾輩は毎回初回だ、合言葉を決めよう」
「彩先輩の恥ずかしい処と、お尻の狭い領域に、縦にホクロが二つあります」
「なっ、彩、吾輩は信じていたのに、・・・いや、彩が瀬楠などになびくなどあり得ん」
「・・・瀬楠、何回目だ、情報を教えろ」
「ふむ、なるほど。固有振動数と重力波か。ふーん。瀬楠、その話だと、5月のレイプ事件は回避した」
「だから、今回はOKしてくれると、思ってました」「しかし、違った」
この状況で僕が頼れるのは一先輩だけだ。
「事象を改変する前は、今回の父親の件は無かったんだな」「聞いてません」
「ん~、…なら、改変は成功だ。但し、新たな事象が発生したんだ。もう、今持っている情報は何の役にも立たない。ここからやり直しだ」
「どうすれば、許を助ける事が」
「まず、改変自体はたやすい、瀬楠は何が起こるか知っているのだからな。問題はそこじゃ無いんだ、瀬楠」
「じゃ、何が問題なんです」
「変わった後だ。変えたのだから、持って行った情報からずれる。当然だな。知っている情報と異なる結果を得ようとするのだから」
「変えなと、助けられないじゃないですか」「そうだ」「・・・だめじゃん」
「瀬楠、話しを聴け、改変はする。しかし、大きく変えると持っていった情報が無駄になる。だから必要なところだけを変更する」
「でも今の僕に1000万なんて、ありませんよ」
「う~ん、神楽坂君の場合は、始めに困窮したのが原因だ」
「それじゃ、過去に帰ってその原因を取り除けば」
「ダメだ。瀬楠と神楽坂君は、彼女が困窮していたからこそ、出会えたのだ。だから、そこは変えれない。発生するイベントも大きく変えると、先々でまた新たな問題を引き起こす。かもしれん」
一先輩は、二本の長短の針が動く、目覚まし時計を手に取った。
「瀬楠、この時計の針を見ろ」一先輩は、時計の針を12時に合わせた。
「この合わさった針を頭の中で、無限に長く伸ばして考えるんだ。何もしなければ、何処まで伸ばしても、重なったままだが」
一先輩は、5分進めた。
「瀬楠、どんなに小さな改変でも、先に進むと、どんどん離れて行く。だから持って行った情報を生かす為には、出来るだけ変えずに」
「問題の地点まで行って改変する」「そうだ。そう言う事だ、解ったか」「なんとなく」
「でも、まずお金ですよね」「そこだな。瀬楠、今どの位、稼いでいる」
「バイトですけど額面で、だいたい23ぐらいです」
「瀬楠の手元にはどのぐらいだ」「許が無駄遣いするからって、1ぐらい」
「よしっ、分かった。能力を使って効率よく稼ぐ方法からだな。隣に行って彩を呼んで来てくれないか」
「彩ですか」「瀬楠、彩言うな、君の先輩だ」「はいはい、彩先輩、呼んで来ます」
僕は、一先輩の部屋を出て、廊下を左に進む。奥の左手に扉がある。
コンコン。「彩先輩、一先輩が呼んでますよ」
ガラガラ。「一が、私を、やっと。・・・望君、一つお願いを聞いてくれない」
僕の肩を掴み、部屋に招き入れる。
すーーーーっ。「きゃーーーっ」
どたどたどた。「彩っ、何があったっ。瀬楠っ、彩に何をしたっ」
「ほぉ~~~~~、来たぁ~~~~~~~っ、彩だって」「僕は何もしてませんよ」
彩先輩が、駆け付けた一先輩に擦り寄って行く。
「はっじめぇ~っ、彩の事、心配だったぁ~」
「天羽君、吾輩の部屋に来て、瀬楠の相談に乗ってやって欲しい」
「ぇぇぇえええ~っ、我が愛の巣に来て、子作りの相談がしたいぃ~、きゃぁーっ」
「戯言は、いいから、部屋に来てくれ、瀬楠と神楽坂君の事なんだ」
「ご褒美、ご褒美くれるなら行ったげる」「一先輩、お願いします」僕は手を合わせる。
「…なんだ、何が欲しい」「いい加減い~え~よぉ~、ねぇ~」
「先輩、もういいでしょう。お願いです。助けて下さい」
一先輩が両手を広げ、ゆっくりと彩先輩を抱きしめる。
「えっ、えっと、はじめぇ」「彩」「はっ、はいっ」
「吾輩の傍に居続けて欲しい、君さえよければ」
「・・・・・・・・・」「・・・あ~、返答は」
「はい」「それは」「いるっ、います、ずっといます」
一先輩が天井を見る。天才も照れるんだなぁ。
「あー、…それじゃ、吾輩の部屋に」「まっ、まだ、日が高いし、心の準備とか」
「何を言っている、それは後だ」「そっ、そうよねっ、お風呂も入らないとだし」
「いいから、来るんだ」彩先輩の手を引く。
「ちょっ、ちょっと待って」彩先輩は服装を整える。
「はいっ」「仕方のない奴だな、急ぐんだ」
そう言うと一先輩は彩先輩を抱っこする。所謂お姫様抱っこと言うやつ。
返事だけを聞いて、相手が何を欲しているか分る。
プロポーズは必要なのかな。・・・喜ぶ顔が見れるから、あった方が良いかな。




