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僕は君を必ず助ける、お金から。  作者: パパスリア
 
35/55

35話 助けた、助けたのに、どうしてだよぉ

 どうして、どうして何処にもいないんだ。もう、残っているのは、…校舎の屋上。

 何故(なぜ)、また繰り返す。汗だくになって、(ゆき)を探す日が何故(なぜ)来るんだ。

 それとも、最後はハッピーエンドなのか。

「ゆ~きっ」

 (ゆき)が向かいの壁側に立っている。ここには何もない。

 (よご)れた灰色の床と壁があるだけ。直射の日差しに(さら)されたここにいると、輻射熱(ふくしゃねつ)によって焼かれてしまう。

 (ゆき)は何も応えてくれない。こちらを見てもくれない。またこの光景。

 僕は、ゆっくりと近付く。

「ゆ~き~」「近付かないで」

「どうして、ここは暑いよ、焼け死んじゃうよ」「そう、でも、ゆっくりは嫌っ」

「下に行こう、(ゆき)」「あいちゃん、いる」僕はスマホを手にした。

 あいちゃんが無音で入って来た。

「・・・」「どうして黙っているの、あいちゃん」

「そっちに行って良いよね」僕は近付く。

「・・・来ないで、(きたな)いの」

「そんな訳ないよ、だから動かないで」何度このやり取りをしたのか。

「何しに来たの」

 僕は右膝を床に突き、左膝を立て、ポケットから指輪を出た。そして(ゆき)の前に。

 今度こそ、もう障害は無い。

(ゆき)、結婚して、こっ、これ、5千円だけど、卒業して働いて、必ず本物渡すよ。今はこれで、・・・受け取って」

 (ゆき)は両手で口を押え、目からボロボロ、ボロボロ、涙を流している。

 障害はない。僕が助けた、・・・きっとOKだよね。


「どうして、・・・私だけ、・・・幸せになっちゃいけないの、・・・どうしてよ」

 嘘だろ、何故(なぜ)、そんな事を言うの、(ゆき)が後ずさり、更に壁に近付く。

(のぞむ)、私、・・・受け取る資格ないの、無いの、・・・ないのぉぉぉおおおおおっ」

「どっ、どうして、・・・いやいやいや、(ゆき)、そんなはずないよ」

「・・・うぅっ、生理が来ないの」「僕達の子供」

「・・・御免(ごめん)なさい。うっわあーーーーーーーっ、御免(ごめん)なさい、御免(ごめん)なさい、迎えに来てくれるの、わあーがってだのにぃーーーーっ」

(ゆき)、落ち着て、ねっ、何があったの、全然分かんないよ」

「ぎだなぁいのぉーー、(きたな)いのおおおおおおーーーーっ、皆皆皆、・・・全部中なのおおおおぉぉぉぉーーーっ」

 パンパンパン。(ゆき)下腹(したばら)を叩く。

(のぞむ)以外の子供はいらない。いらなよぉぉぉーーっ」

「・・・僕、(ゆき)がいれば」「私が無理、・・・くっ、ひっぐ」

(ゆき)(ゆき)っ」

「来ないで、私、幸せに、・・・なりたい」

 (ゆき)が後ずさる。

「神様に文句を言いに行ってくる」

「止めて、・・・待って、お願いだよ、待って、待って、待ってっ」


 (ゆき)が壁を乗り越え、後ろ向きに落ちた。どすん。

 ドシャ。スマホから水風船が割れたような、嫌な音がした。

「きゃーーー」「人が落ちた」「救急車、救急車だっ、早くっ」

「マスターに会うですぅ」あいちゃんが全機能を停止した。

 どたどたどた。「どうしたっ、何が起きた、()(くす)っ」

 助けた、助けたのに、どうしてだよぉ。

 何故(なぜ)何故(なぜ)だ。僕は助ける事が出来たはずだろっ、何だよこれっ。


 また、病院。

「お母さん、僕が、貯めた分を使いますから、心配しないで下さい」

「これ以上(のぞむ)君に迷惑を掛けれない」「僕のお嫁さんだから」

御免(ごめん)なさい」(ゆき)のお母さんは深々と、腰を折ってくれた。

 やっと救いだせた、そのはずなのに、何て無力なんだ。

 こうやって、(うなじ)(たれ)れていると。そう、ここで(れん)ちゃんが袖を引く。

「どうしたの、(れん)ちゃん」「お義兄(にい)ちゃん、こっちに来て」


(れん)、何処行くの」「トイレ」「すみません、お母さん、僕もトイレに」

 (れん)ちゃんは僕を非常階段に連れて行った。

「お義兄(にい)ちゃん、あいちゃんは」僕はスマホを見せた。

「まだ姿を見せない」スマホは、ごく普通のスマホのままだ。

「そう、あいちゃんから何か聞いた」「何も言ってくれなかった」

「お母さんは言わない方が良いって。(れん)は嫌なの、お義兄(にい)ちゃんには(わか)って欲しい。うぅ~ん、違うかな。とにかく、お姉ちゃんは悪くないの、私の身代わり、私を助ける為にこうなったの」

「何が、あったの」「6月の始めに、パパが突然帰って来たの」

「お父さん、失踪(しっそう)していた」

「そう、パパが借金取りを連れて来たの」「それで、どうして(ゆき)がこんな事に」

「パパのつくった借金を返せって、返せないなら、私を連れて行って働かせるって、金になる客を紹介してやるって。そしたらお姉ちゃんが、私の代わりに行くからって。お姉ちゃん、(きら)いにならないで、私が行けばよかったのおおぉぉーっ」

(れん)ちゃん、(ゆき)の今までを、一生懸命を、無駄にしてしまう事は言わないで」

「僕は、(ゆき)の事が今も、これからも、ずっと好きだよ。お父さんは、どうしたの」

「一緒に行って、帰って来たのは、お姉ちゃんだけ」

「お金、どの位、借りてたの」

「元は100万で、返すのは1000万ぐらい。お姉ちゃん、ひと月帰ってこなかった」

(ゆき)、・・・何も助けてあげられない。僕の事、(きら)にならないかな」

「ない、絶対ない。今年の誕生日から、お姉ちゃん、毎日毎日、ずっとそわそわしているの、結婚出来る年になったから、お義兄(にい)ちゃん、(のぞむ)が必ず迎えに来てくれるって」

(れん)ちゃん、有難う」僕は(れん)ちゃんを抱きしめた。

「あぁぁあぁぁぁぁぁーーーっ、ごめんね、ごめんねっ、のぞむぅ~~~~ぅ」

「・・・戻ろう」「うぅぅん」

 (ゆき)も、(れん)ちゃんも、僕が助けに行く。


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