2話 反則技
き~んこ~んか~んこ~ん。
「あ~、終わたぁ~。望、おまえどうするんだ。今日の俺、とっても寂しい、慰めて」
お尻をこっちに向けるなぁー、僕は女の子だけだ、・・・のはずだ。
「何悩んでるんだ。目覚めるなよ」「隆、僕、バイもいける」
「止めろっ、冗談だから、俺がダメ」「そう、そっかぁ~、残念」
「全然残念じゃねぇーよ。望にお尻を狙われる前に、彼女をつくる。夏休みが勝負だ。真剣、帰りどっか行かね。女の子に声を掛ける度胸は無いけど、ひょっとしたら、食パンを咥えた可愛い子と遭遇するかもしれない」
「いないよ隆、それは朝のイベント」「じゃぁ、空から降って来る」
「夢見る男の子。因みに魔法陣から、異世界召喚もできないよ。現実を見ようよ」
「じゃぁ、望はどうすんだ。普通に彼女欲しいだろう」
「僕はね、超現実的な方法を部活で検討中なんだ」
そう、僕は部活に入ってる。
と言うより、入学したての時、男の子の性を巧妙且つ、卑劣(彩先輩、御免なさい。とっても心地良かったです)、元い、心地よい罠に掛かり、成功研究部に強制入部させられた。
「えっ、おまえ、あの部活まだ行ってるのか。おい、あそこ、碌な噂聞かないぞ。詐欺紛いの方法で、生徒から金を集めてるとか。美人の副部長がなにやら怪しげな事してるとか。ちょっとそこ、俺的には気になるんだが」
「それはただの噂だよ。あそこはね、どうすれば社会的に成功できるかを、真剣に研究してるんだ。だから、その実証実験をするんだけど、皆それを誤解してるんだ。利益が出れば、ちゃんと還元してるよ」
「副部長の件は」「あぁ~、単にボキュッボンなだけだよ。たまに御相伴に与るけど」
「ほうほうそれで」「僕は控え目な方が萌えるけど、破壊力は凄いよ。頭の中真っ白になる」
「俺も」「止めた方がいいよ、部長の一先輩が好きなんだ」
「一先輩も彩先輩が好きなんだけど、逃げてる。彩先輩は、一先輩が告白するのを、ず~~~っと待てるんだて」
「なんだそれ、入る隙ないじゃん。両想いなのにまた何故」
「隆がそれを聞くの。隆と同じチキンなんだけど、先輩、天才肌で繊細なんだ」
「いいなぁ~、彩音ちゃん、もう少し待っててくれたら、俺も。この記憶を持って、時間を戻してぇー」
「それは無理って、アインなシュタインが言いてる。時間は不連続で不可逆、未来には行けても、確定した過去には行けないらしい。でももし、過去に戻れるなら、僕は大胆になれると思うんだ」
「そりゃまたなんで」
「過去に戻れると言う事は、今この場で何が起きても、過去に戻って無かった事に出来る」
「う~ん、具体的には」
「そうだなぁ~、あそこ。今この教室にいるのは、僕達と彩音ちゃんだけだろう。例えば、彩音ちゃんを二人で捕獲して、剥いちゃって、欲望の限りを尽くしても、過去に戻る事で、無かった事に出来る」
「俺の彩音ちゃんに何て事するんだっ」
「例え話だよ。そのくらい何をしても無効にできると言う事だよ。でも記憶を持って戻るから、失敗しても、次はその失敗に備える事が出来る」
「なるほど、反則だな」「そうだね。だから過去に戻るなんて反則技、神様も出来ないよ」
でも、そう考えない人もこの世の中にはいる。
「じゃあ、彩音ちゃんをこの目に焼き付けて、今日は帰宅部にするは」
「悪いね。僕は部活に行って、超現実的な方法を検討するよ」
「おっ、じゃぁーな」「うん、お疲れぇ~」
僕は少しの可能性を隆に残す為、先に教室を出た。