1話 人には性別がある
「あーーーつぅーーー」今は七月、やっと休み目前までたどり着いた。
瀬楠 望、男子、又このクッソ暑い季節がやって来た。
この時期僕は、虚ろな思考で、繰り返し、繰り返し思うのだ。
今年は、生き延びる事が出来るだろうか、と。
しかし僕は、恨み言など言わない。さっきのは事実を述べただけ。
これが僕の性なら受け入れて、付き合って行くしかないのだ。
風が吹けばなお暑い、じっとりと湿った熱風が肌の汗をそこに留め、薄い生地の衣服がべったりと張り付く。
太陽がギラギラ、ギラギラと照り付ければ、少しでも体温を下げる為、服を脱ぐ。
朝、学校へ向かう途中、シャツが汗で張り付いて、下着が透けるのを気にしながら、職場へ急ぐお姉さん達。
不用意に、上のボタンを外し、胸元を曝け出す同年の女子群。
きゃっきゃ言いながら、戯れ行き交う女子中学生は、信号待ちでスカートをぱたぱたさせる。
その下の女の子達が、校庭で元気いっぱいに遊んでいると、時折見える膨らみかけが、そしてパンツが。
あーっ、低学年は範囲外、あの子達はただただ天使、癒やしてくれる。
でも、純粋で無垢であるが故に、グサッと、何かを突き立てる。
「この先輩のパンツは良いです良いですよ。出来ればもう少し右のほうがぁ~」
がらがらがらがら。「・・・」・・・じゃーーーーーーーーーー。
まだ、二限目の休み時間、クラスの女子の太腿を見ていたら、我慢できずに速攻でトイレ、洋式便器の個室へ飛び込んだ。
そしてスマホを取り出し、今朝、収穫したばかりの、大きく育った上級生のももを、脳内でたっぷりむみゅむみゅしたり、押し広げて見たり。
だがこの辺りからデータ不足になる。
しかぁーしっ、大丈夫、僕の脳は、この時空間を遥かに凌駕する。
あーーー、でも、現実の時間(休憩)は余りにも短い。
とにかく、大急ぎで服装を整え、手を洗って、教室へ引き返す。
「おい、望、まだ二限が終わったとこだぞ、男の俺でも引くわぁ~」
こいつは中学時代からの、唯一の悪友だ。
「仕方無いだろう、生物として当然の反応だよ。僕は無宗教だし、何者にも囚われないよ」
「だからってお前、一日に何回やってんだよ。お前今年こそ死ぬぞ、本物を知らずに」
「なっ、なんて不吉な事言うんだよ。じゃぁ、隆は、この情景を目の前にして、なぁ~にも感じない不能者なの」
この学校の、女子のスカート丈は短い。
僕的には大歓迎、ちらちら、ちらちら、見えそうで見えないそわそわ感。
階段を上がる時、思わず、『隠すくらいなら、そんなのはくなよ』と、心で叫び、女子の視線を気にしながら、『気づかれないかなぁ~』と、思いながら恐る恐る見上げる。
ちょっとスリリング。しかし、その隠そうとする仕草がいい、萌え。
隆は、この状況で反応しないのか。
「おまえねぇ~、聞くまでもないだろう」「なら僕と同じだろ」
「いや、違う、全く違う。お、れ、は、制御できる。今日の彩音ちゃんも、お家にちゃんと持って帰る。速攻で行動に出さねぇ~」
「彩音ちゃんに教えてあげよう。毎晩、色々されてるよぉ~て」
「こら待てーっ、望、〆るぞ、きゅっと」「よるなっ、近いよっ、隆暴力はいけないよ」
「はぁー、バカなの。望殺すのに、刃物も腕力もいらねぇーよ。今、この場で、さっきトイレで、なに、をしていたか、・・・女子にバラすだけでおまえの人生は、TEH END」
「なっ、なぁ~、僕たち親友じゃないかぁ~、そう言うのは止めようよ。お願いだよ」
「ならおまえも、この件には触れるな、いいな、裏切るなよぉ~」
「あっ、そう言えば、彩音ちゃん、他校の彼氏が出来たらしいよ。さっき女子トークが聞こえて来た」
「なんでだよぉー」
「隆がチキンなのが原因らしい。彩音ちゃんさぁ~、入学の時から待ってたらしいよ」
「じゃ、今から」
「止めなよ今更かき回すの、可哀想だよ。チキンな自分を恨もう。そして次こそ射止めよ」
「慰めになってねぇ~よ、おまえも道連れだーーー。言いふらしてやるぅ~」
「止めてくれよぉーっ、僕のはやり直しがきかないんだぁーっ」
「おーーーい、そこっ、何騒いでる、もぉーぅ始まってるぞぉー」