反乱軍
敵軍の数は一万五千ほどになるらしい。
反乱軍内で内ゲバがあった影響で、数は想定よりも減ったがそれでも多い。
離反した者達もいる。
ゾポンドートの圧政に対する反乱であれば協力した者も、住んでいる土地を離れて遠征するとなると話が変わる。
見たこともない王都へ攻め込もうと言われても、付き合いきれないだろう。
賢明な奴らだ。
押し寄せる敵軍は、農民の寄せ集めで装備もバラバラだ。
武器種ごとの部隊の編成もできていない。
それでよく攻めて来れるなと、迎え撃つこちらが心配になる。
しかし数が多いというのは、それだけで脅威になる。
敵軍は大貴族ゾポンドートを打ち取ったという実績で自信に満ちている。
士気も高い。
だが無理やり徴兵された者や、周りに流されて付いて来ている者も多い。
そういった経緯で渋々参加している奴らは、早く帰りたがっている。
歪な構成の軍隊だ。
敵軍の行軍速度から計算すれば、二日後にはこの砦に到達するだろう。
まずは敵の勢いを物理的に止める為に、こちらは砦に籠り防御に徹する。
敵が到達するまでの二日間で、堀をさらに深く掘らせて、追加で柵も設置する。
弓を使い慣れていない兵士に、臨時で弓の稽古をさせる。
出来る準備はそのくらいなので、砦の指揮と敵の迎撃は騎士団長オルボスに任せて、俺はここから北東の位置にあるゾポンドート(弟)の屋敷へと向かう。
連れて行くのは親衛隊の騎士二十名だ。
ゾポンドート弟は戦死した兄に代わって、正式に家督を継いでいる。
そのゾポンドート弟から娘のティリアを側室に、との提案がなされている。
俺はその提案を受け入れることにした。
ティリアは親衛隊の騎士として、俺の騎馬隊に加わる予定だ。
積極的に協力関係を結ぶ方針に変わりは無い。
砦で戦闘が開始された。
俺は滞在しているゾポンドート弟の屋敷で、戦況の報告を受けている。
砦に到達したロブド軍は、特に工夫もなく力責めを開始した。
敵の農民兵たちは、大貴族に勝ったという熱に浮かされている。
この戦いでも、勝てると信じている。
しかし彼らがゾポンドートに勝利できたのは、ゲリラ戦に徹していたからだ。
今回のように、大軍で戦闘した経験はない。
農民兵たちはロブドの号令の下――
畏れることなく突っ込んでいき、雨のように降り注ぐ弓矢で射殺され、柵と味方に挟まれて圧死し、集団で堀に落ちて折り重なって、潰れて死んだ。
しかし勢いは止まらない。
どれだけ味方が死んでも、次から次へと押し寄せてくる。
農民は集団行動に慣れているから、行けと言われれば行くのだろう。
集団行動は周りに狂気が伝染しやすいしな。
狂気に染まって、恐怖を忘れた人の波が押し寄せてくる。
砦を守る兵士も、死に物狂いで応じなければいけない。
どっちも大変なことだ。
数優っていて勢いのあるロブド軍を、騎士団長オルボスが統率している砦の籠城軍は跳ね返し、耐えきった。
無理攻めが祟り、多くの死傷者を出したロブド軍は最初の勢いが衰えて、方針転換を余儀なくされた。
砦を包囲する兵糧攻めに切り替えた。
さて、ここからが俺が率いる騎馬隊の出番だ。
ゾポンドート弟も騎馬隊五十を出してくれた。
ロブド軍は防衛拠点の要塞を取り囲み包囲している。
特に重点的に人を割いているのは、アルデラン領へと続く西方面だ。
騎馬隊で手薄な東方面の敵軍に、背後から突撃する。
騎馬隊の突撃によって、敵軍は面白いように瓦解する。
突撃によって混乱状態になった敵軍から、素早く離脱する。
これを二組の騎馬隊でくり返して、包囲網をズタズタにした。
慌てたロブドは援軍を砦の東側に回したが、歩兵主体の農民軍では足が遅い。
その時にはすでに俺の部隊は、ゾポンドート弟の領地まで撤退していた。
そこを経由して休息を取ってから、今度は大周りに砦の西に移動して、騎馬突撃で包囲網に打撃を与える。
その後、再びゾポンドート弟領に入り休養を取り、敵の出方と状態を見極める。
反乱軍は度重なる騎馬突撃で士気が低下し、農民たちは我先にと逃げ出している。
彼らは国を相手に戦っても勝てると思っているから参加しているのだ。
騎馬隊の突撃を喰らい無残に跳ね飛ばされ、槍で粉砕される味方の姿を見れば、嫌でも我に返る。
――勝てるわけないだろ。
いまだに残っているのは、逃げ帰るあてのない無い奴か、いまだに使命感に突き動かされている狂人のどちらかだろう。
数は約千弱、最初と比べると十分の一以下にまで減っている。
ロブドは騎馬隊が、ゾポンドート弟領から出撃していることには気付いたらしい。
残りの千を率いて、こちらに向かっている。
こうなればもう袋の鼠だ。
砦に連絡して騎士団長オルボスに打って出るように命じて、敵を背後から襲わせる。
オルボスの軍と戦っているロブド軍の後ろから、俺の率いる騎馬隊が突撃して――
この戦いは終わった。
瓦解し逃げ出した敵軍の中から、ロブドを筆頭に反乱軍の幹部クラスを生け捕りにすることができた。
俺は主の存在しないゾポンドート城に入場して、この城を占領した。
城を占領してから一か月が経った。
城内や領地の整理も進んいる。
国王へは謀反人の討伐と反乱の鎮圧が完了したことを報告した。
折り返しの返信で、東の領地の委任状が送られてきた。
しばらくここで暮らすことになる。
俺の集めた人材をこの『イーレス城』へと呼び寄せる。
今まではなんとなく、城主の名前で呼んでいたこの城の正式名称は、イーレスというそうなので、これからはそう呼ぶことにする。
面倒だが、これからこの領地を立て直していかなければならない。
俺はこの地の復興の第一歩として、ロブドをはじめとする反乱軍の幹部クラス、十人を公開処刑をすることに決めた。
領内にふれを出し広間に処刑台を設けて、大勢の見物人が集まる前で反逆者の首を刎ねた。




