第7話 世界変革は頭という心にあり
皆様、すいません。
普通に7話を投稿するのを忘れてました(汗)
魔王城の大きな扉が蹴破られた。
開けられたのではない、蹴破られたのだ。
開けるのと、蹴破るのとでは、全く違う。全くもって違う。
威厳のある、威厳しかない、威厳以外ない、魔王城の扉に足跡が付けられた。
「よう、相変わらず面白い顔をしてるなお前は」
落ち着いた声、その中に燃えるものがある、燃えたぎる何かがある、その男は人々から、民たちから、王たちから、こう呼ばれる、そう呼ばれる、ああ呼ばれる、どう呼ばれる、炎の王と。
見た目は夜兎や柳桜、恋莉や楽維と比べても決して、お世辞にも若いとは言えない。
4人が20代前半もしくは10代後半、高校生くらいと言っても過言ではない見た目をしているのに対して、40代前半という見た目をしている。
中年のイケメン親父、要するにイケオジというスタイルをしている。
王の中では高齢の部類に含まれるのは違いないだろう。間違いないだろう。
「炎真……」
おじさんの名前は炎真。
おじさんとは思えない若々しい名前である。
いや、いやいや、これはこのおじさんに限ったことではないはずだ。
いかにカッコいい名前を子供につけようとも、キラキラネームをつけようとも、ドキュンネームをつけようとも、必ず人である以上、歳を取り、年を重ね、おじさんになる。
その時の、この時の、あの時の、どの時の、名前と顔は確実に一致しない。
明日は我が身とはまさにこのことかと。
「まさか炎真まで魔王城に来てくれるとはな」
「その言い方だと、どうやら俺以外にも既に足を運んでいる王が何人かいるようだな」
「まぁな」
「だよな、お前は魔王になる前はかなり人気だったからな」
「今でも人気だろうが」
「色んな意味でな」
「色んな意味でか……」
なんとなく察しのついた夜兎はわざとらしく落ち込んで見せる。
この2人の間柄は、この2人のかけ離れた見た目とは裏腹に飲み友達という域に達していた。
「この陰気臭い魔王城での生活には慣れたか?」
「お前はオレを貶しに来たのか? だったら、帰ってくれると助かる」
「はっはっはっ、冗談だ。今日は別にふざけた話をしに来たわけじゃないんだ。…………酒を飲みに来たわけでもねえぞ?」
「知ってるよ! 早く本題に入れよ? お前が酒飲もうぜを最初の一言で言わない時は決まってちゃんとした話だからな」
「さすが飲み友だな、俺たち」
「違いないな」
炎真は夜兎の目を見る。
「お前、魔王になっても目は変わらないな」
「よく言われるよ」
「そうなのか?」
「ああ、腐っても王だからなオレも」
「そうだな、いつだってお前は多くが認める王様さ」
「というか、早く言えよ。気になって仕方ねぇよ」
「そうだった、このまま帰るところだった」
「おいおい、」
ふざけた空気を一変させた炎真が次にこう語る。
「花の王が襲撃された」
「はあ?」
花の王という言葉に反応する前に0コンマ、襲撃されたという言葉に反応するのに総合1秒、魔王城に殺気が走り抜けた。
「落ち着けよ、話はまだ終わってない」
「誰にやられたんだ、柳桜は無事なのか!? 七子ちゃんは!?」
「2人とも命に別状はない。柳桜ちゃんは軽い怪我で済んだようだ」
「七子ちゃんはどうした? まさか」
「意識が戻らない」
「なんでだよ? なんでそんなことになってんだ? 世界は平和になったんじゃないのか?」
「俺にもまだ詳しいことはわからん。七子ちゃんと柳桜ちゃんはどうやら人核の党の残党に襲撃されたようでな、その襲撃者の自爆に2人が巻き込まれてしまったようだ。幸い、2人とも傷の残る外傷はないそうだ。だが、爆風に飲み込まれた際に頭を強く打ち付けた七子ちゃんの意識が戻らない」
「…………」
「お前は動くなよ、いずれこの話は誰かを通してお前の耳に入ると思ってな。俺はお前に釘を刺しに来たんだ」
「なんだよ、オレを皆してのけ者にする気か?」
「そうじゃない、お前が動けば、動かしたくない奴らまで動く。勇者連合会がな。ただでさえ厄介な人核の党に加えて、勇者連合会もとなれば、わかるだろう?」
「わかりたくもねぇな」
「そう答えるのはお前らしいが、今回においてはお前らしさは不要だ。お前は魔王城で大人しくしていろ。この件は俺が片を付ける」
「お前がそこまで言うなら、任せる」
夜兎は魔王城の椅子に深く座り込むと、不服そうに、納得のいかない面持ちでそう答えた。
「人核の党………まさかまだ生きてたなんてな」
「おそらく党首は別の誰かが引き継いだんだろう。問題は、」
「相手が七子ちゃんの存在に気づいているか、か」
「思い出すな、まだ学生だった七子ちゃんを保護した日のことを」
炎真は昔を懐かしむように、慈しむように、過去を語る。
4年前---
人核の党への報復を開始した王たちは次々と、続々と、アジトであるビルに乗り込んでいった。
構成員たちの銃火器や様々な銃刀法違反を駆使した攻撃に対し、王たちは怯むことなく攻撃を続ける。
ビルの中はすぐさま死体の山となった。
人、彼らは人である。
人であって王である。
王の力はそれほどまでに強大で、強力で、強烈であった。
その場には夜兎も炎真も、そして柳桜もいた。
最初に中学生の少女を見つけたのは夜兎だった。
「君、名前は?」
「新代七子」
「君はどうして逃げないんだ?」
七子は何も答えない。
「?」
七子の手には拳銃が握られている。
その動きはあまりに自然で、あまりにも馴染んでいて、あまりにも慣れていた。
だから、それだから、これだから、あれだから、どれだから、夜兎は自分に拳銃が向けられていることに気付くのに時間をかけた。
銃口が向けられると、しばらくの間を置いて、発砲音が静まり返っていた、静寂に包まれていた、ビルの一室に鳴り響いた。
それが王たちと七子との出会いだった。
「世界変革は頭という心にあり」
これも結構言葉通り。
世界がつまらないと思うのも、世界が面白いと思うのも、結局は気の持ちよう、つまりは気持ち次第ということ。
心という描写はよく、心イコール心臓として、胸にあるように感じますが、考えているのは頭なので頭の中に心があるのかなと。
胸に手を当てて自分に聞いてみろと言われたら、頭に手を当てた方がいいのではないだろうか?
そうしたならば、頭痛いのか? と、なるのだろうか(笑)
またこれに類似した意味として、
「過去は変えられる」
というものもありますね。
これは別にタイムマシンがあるわけではなく、気持ち次第で過去と現在の結び付けを変えることができるということ。
「あの頃は良かったな」
と、過去の栄光に縋るということは今が上手くいっていないということ。
逆に、
「あの頃も良かったな」
と、なれば、あの頃も良かったが今も負けじと良いという気持ち次第で過去と未来は変わっていくというものですね。