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第八話「迫る恐怖、幻影狐vsビーストキャット」



「す、すげえ!何だよ今の!」


「うむ…」


「はぁ、僕もあんな能力が使えればなー」


「自分の能力を磨き続ければできる…」



なるほど、努力が大切なんだな。


思わず師匠!と叫び出しそうになる、これこそ僕が正に今欲しい能力だ。



「なあ、もっともっと見せてくれよ!」


「っむ…!」



僕の言ったことに答えてくれたのか、風見はもう一度狐を出してくれる。



「おお!これだ、これ!触っていいか?」


「危ない…」



その狐を触ろうとすると僕の手をひょいとよけ、肩に飛び乗ったかと思うと、またしても光速の速さでピカっと閃光の如く消え始める。


次の瞬間ガンッ!という鼓膜が破れるかのような轟音が響いた。


何が起こったのか、後ろを瞬時に振り向くと、風見の狐とライオンのような顔を持った猛獣が争っているのが見えた。


牙を剥いていたのは明らかに僕に対してだ、「うわぁ!」っと我ながら情けない声を出し怯えるように後ずさる。



「た、助けてくれたのか、ありがとう」


「うん…」



僕はその姿を一瞥すると脳裏から数時間前に見た記憶が蘇る、あれは間違いない、l資料で見たビーストキャットだ、ミゼッタ達が探していた筈だが結局こっちに来ちまったのか。


風見の狐は光の速さで猛獣にの懐へと攻撃を加えるが、その恵まれた肉体によってさらりと受け流され、繰り出されたビーストキャットの右腕が狐を吹き飛ばす。その大きい見た目の割りには狐に匹敵する程の素早さで、丸でライオンが獲物に飛びつくかのような光景だった。


あの分厚いライオンのような皮膚に狐はてこずっている、一方の風見も顔からは汗がぽたぽたと地面に落ち始め、息が荒くなり疲れが見えた。


その姿からして狐が自分の意思で戦っているというより、風見が操って敵と戦っているように思える、それにさっきまでの動きが嘘だったかのように動きも鈍くなっていた。


そして次の瞬間、倒れた狐の一瞬の隙を見逃す事無く、ビーストキャットは鋭い猛獣の腕の牙を狐の胴体に飛び掛り、狐は勢いのあまり猛獣から二十メートルの距離まで吹っ飛ばされた。


その姿を見て僕にでも分かった、もう駄目そうであると。


狐は倒れたままピクリとも動かず、猛獣の眼は狐じゃなくただ僕達二人だけに焦点を当てていた。


ゆっくりとゆっくりと、あの狐を捕らえれる程の速度を持っているのにも関わらず、何故かゆっくりこちらを威圧しながら近づいてくる。


僕は怖さのあまり動けないでいた、一方の風見もそうだ、足がガタガタと震えている。疲れを少しも見せないビーストキャットに僕達は舐められているのだと悟っていたのだ、ここで動いた所で無駄という事はお互いが分かっていた。


むしろ命を縮めると言ってもいい、僕達が動いた所をあの猛獣は見逃す筈もない。僕はここに来てから覚えたのは今まで恐怖でしかなかった。


恐怖で能力が発揮するなら嬉しい事この上無かったが生憎僕にそんな都合の良い能力は持ち合わせていない。


ゲームオーバー…ビーストキャットを見ながら思い浮かべたのはその一言である。


こんな事なら異世界になんて来なきゃ良かった。


「恍惚な回復!(スターダスト・リカバリー)」


半ば諦めかけていたその時、狐は神秘の輝きを放っていた。


そして、狐は光速の如く消え、油断したビーストキャットの胴体にへと一撃を加える。


完全に虚を衝いたその一撃に、ビーストキャットは思わず怯み始める。


「重力感覚!(グラビティ・フィーリング)」


怯み始めるビーストキャットは追い討ちをかけられるかのように、地面に体全身が地面に押し付けられる。


抵抗しようとするその猛獣を見る限り本望じゃない筈だ、その光景は何かにプレスをかけられているかのようなものがあった。僕はこの能力は身に覚えがある。ビーストキャットから目を離し、後ろを向くと立っているのはファイヤスターメンバー四人だった。


「ていう事はさっき狐が回復したのも能力によってなのか、一体誰が…」


「はーい!私です…」



恥ずかしそうに手を挙げたのはエルシーである、まさかそんな戦闘に役に立つ能力を持っているなんて、間近で見れば見るほど僕なんかと違ってこのメンバーの能力は段違いである。


「鷹の眼」


眼鏡を上に上げる動作をした後、アクロスは懐から尖った針のようなものを取



り出す。


「ポイズンスピア!」



投げられた針一本が綺麗にビーストキャットにぐさりと突き刺さる、名前からして毒が先端に付着しているのか、猛獣の動きはゆらゆらと酔っ払いのように足がおぼつかないでいる。



「今ですアレックス!」



アクロスに続きアレックスは背中に背負いっていたどでかいソードを両手で引き抜き、空高く掲げていた。



「行くぞ…究極奥義!激突する衝撃波!(クラッシュ・インパクト)」



ビーストキャットに振り下ろされた大剣が猛獣に触れ、荒野に響く爆音を鳴らと共にその猛獣は真っ二つに切り裂かれる、正に一刀両断だ。


黒焦げで真っ二つに分かれた姿に変わったビーストキャットを見るのは、慣れていない僕にとってはどこかグロてすくで、思わず目を逸らしそうになったがその死体はその場に残らず、塵に成り変わって視界から消えていた。



「ッフ決まったぜ」


「調子に乗らない!」



アレックスの決め台詞に呆れたような顔でミゼッタはツッコんでいた。


なんにせよこのファイヤスターの息はピッタリである、付け入る隙が無い程に。


命は助かったが能力の差といい、この先やっていけるか不安が募るばかりだ。



「残りの六十体は僕達が倒しておいたよ!今回の初クエストは終わりだよ、お疲れ様!まあこんな感じだけどどうだったかな遠矢くん」



どうもこうもあるものか、僕がやった事といえば十体のモンスターをべしべし殴り続けた事くらいだ、とてもじゃないが付いて行ける気がしない…。



「まあ最初のクエストは皆こんなもんだ、気にすんな」


「懐かしいですね、小学生の時は私なんて一匹も狩れませんでした」



初クエストは小学生ね、天然なエルシーさんの事からして嫌味じゃないと願いたいものだ、僕は実質二十七というプロ野球で言えば結果を残せず戦力外通告になってもおかしくない程なのである。



「それで風見、遠矢くんは何か掴みどころがある感じでしたか?」


「………」



風見はアクロスに親指を立て、グッジョブを作っている。


グッジョブなもんか、僕は何もしていない。


でも、風見の優しさは正直嬉しい、少しだが打ち解けたような気がした。


そして僕は疲れている、決して何も仕事はしていないけど、とにかくなんかもう、とにかく眠い、今すぐ風呂に浸かりたいし、ふかふかのベッドに今すぐにでも飛び込みたかった。



「それじゃあ目的も果たした事だし、社長に報告しにいこっか」


「そうだな」



僕達四人はアレックスとミゼッタの後ろに付いて行き、派遣社長の元へと向かった。


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