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第七話「能力発動!!!幻影の具現化(ソリッドファントム)」


「あちゃあビーストキャットだったか、ついてなかったなー」



ミゼッタが資料を見た後、僕を見てそういった。



「知ってるよ、強いんだろそのモンスター、どう見てもその怖い見た目でわかる」



「まあ僕の重力感覚を使ってる間に攻撃してもらえれば」



「嫌だよ!誰がそんな怖いやつに攻撃しなきゃならないんだ」



冷静に考えてみた。今から僕達が狩りに行く相手は色は白色だけど見た目も体格は虎とライオンを混ぜたに等しい猛獣である。


そして考えるべきは僕は無能力者同等ということだ、例えば武器も何も持たないで猛獣の檻に入れられたとしよう、間違いなく死ぬ。


人間の中ですら劣ってる部類だというのに勝算なんてあるだろうか、恐らく無い、ゼロだ。


まあせめてアレックスのような肉体があればと思い込むが、僕は身長百七十で、体重四十六キロと女子並みに痩せている様である。


骨格も細い、ミゼッタには負けるとして、おしとやかなエルシーさんにすら殴り合いで勝てる自信がない。


そしてそんな僕に使えるのは怒りで強くなるとかいう意味不明の能力だ。


なんかこう、違うんだよな、僕が欲しかったのは雷とかそういった系統の能力だったんだが…。



「そういえばさっき社長が言ってたポテンなんとかってモンスターはどうなんだ、強いのか?」



僕はふとした事を思い出し訊いてみる、初心者に朗報といってたのでもしかしたら僕でも倒せるレベルの弱い敵かもしれない。



「それなら大丈夫!あれなら能力を使わなくたって楽勝だね、そもそも攻撃自体滅多にしてこないよ!」



「へえーそうなんだ」



平静を装いつつ、内心ではきた!と喜ぶ。


まあ要するにそのなんとかってモンスターはド○クエでいうところのスライムのような敵なのであろう。



歩くこと十五分が経った、天界からはかなりかけ離れた位置にいる、帰りはまた歩かされるんだろうなと嫌々ながらミゼッタ達についていくが、目に薄っすらと何か紫色の物が。


いや、あれは間違いなくモンスターだ、近づくにつれその姿は明らかになってくるが、何十対とうじゃうじゃ気持ち悪いくらいに集まっていた。


更に見た目も気持ち悪く、ナメクジのようにふにゃふにゃと進み、フリスビーと同じサイズくらいの丸い目がついていた。




「っげ…これがなんとかポットってやつか…」



「ポテンポットだよ、試しに攻撃してみたらどう?」



「えぇ…気持ち悪いな…」



ミゼッタに言われるがまま、ポテンポットというモンスターの近くに近づき、一発拳でげんこつを入れてみる。



「ピーピー!」



「っひ!?…」



急に泣きやがった、頼むから黙って殴られてくれ…。



「早く!続けて攻撃しないと反撃されちゃうよ!」



攻撃を受けるのは嫌だったので、隙を作らないようひたすらポテンポットの体を両手で殴りこむ、八発殴りこんだ頃にポテンポットはぐったりと倒れ消滅した。



「はぁ…はぁ…タフすぎる」



「お前の攻撃がひょろいんだよ、もっと拳に力入れてみろ」



アレックスは僕が殴ってる姿を見て、半ば呆れていた。


僕はお前と違って喧嘩なんか一度もした事が無いのだ、一緒にしないでもらいたい。



「まあ良い運動じゃねえの、合計で四十体くらいはいるな、今ので一匹だ、ちゃんと数えて倒してけよ」



「じゃあ僕達はビーストキャットを探すから、素早いからそろそろ探し始めなきゃ日が暮れちゃうからね、念のため風見くんに付いてもらうから安心して狩りをしてね!」



アレックスとミゼッタがそう言うと、本当に風見だけを置いて四人で僕達から離れていく。


まあ確かに一人でいるよりはマシだけど、よりによって風見。


さっきから一言も喋ってないぞ、人見知りなのか?



「よ、よろしくな」


「ああ……………」


や、やりずらい………。



黙々とポテンポットを狩る中、もう十匹になっていた。


ふと疑問に思ったことが何を目的にこんな雑魚敵を狩らされているかである。


そもそも僕のレベルはなんなんだ?一なのか?


僕のレベルが一だとするならそろそろレベルが上がってもおかしくないのだが、レベルアップのマークも表示されない上、特に能力が発揮される事もない。


それにさっきから一言も会話が無くきまずい状況である。



「なあ、この世界にレベルってあるのか?」



思い切って訊いてみた、何より訊きずらかったのが彼が無表情だったからだ。



「無い…」



その一言である、こう応えられると次の話題を振るしかないのだ。


会話は何故かここで止まってしまう、口下手同士で二人きりになるのはどうも気まずい。いや、頑張ろう、まあ僕も口下手ではあるが話を振らない限り同じメンバーとしてお互いを知り合う事はできないはずだ。



「無いって、じゃあ何で僕はこのモンスターを四十体も草むしりのように狩らされているんだ?」



「さあ…」


くっそ…もう駄目だ、訊いているこっちが苦しくなってきた…。それに『さあ』って…。まあゲームじゃないしレベルが無いのは分かるが…本当に今狩っているこの時間はなんなんだ…?僕がいれば邪魔になるからこいつでも狩って留守番でもしてろって感じなのか。もう体もくたくただ、我ながら情けないが体力が無さ過ぎる。



「風見も能力って勿論持ってるよな、このモンスターを倒す事も簡単にできちゃうわけ?」



「余裕…」



「じゃあ見せてもらったりとかできないかな?」



「分かった…」



良かった、風見は意外とこういうズルに耳を貸してくれるタイプなんだな。


もしミゼッタだったら説教されて目標数を増やされかねない。


でも風見がどんな能力で戦うかは個人的には気になる。


じーと見ていると、ポケットに両手を突っ込んでいる彼からは何か緑色のオーラが体全体に浮き出て、纏わりついていた。



「幻影の具現化…(ソリッドファントム)」



風見が一言そう言うと、さっきまで纏わりついていた、緑色のオーラが風見の前に集まり、少しずつそのオーラは生き物のような形にへと変化していく。


あの形、あれは間違いなく狐だ、狐の形をしている。


風見は自身のオーラを具現化し、狐を作り上げたのだ。その姿は真夜中に見る蛍の光のように美しく、狐から放たれたオーラと同色の緑が辺りを乱反射するかのように光らせている。


僕にとってはそれがあまりに魅力的で触れてみたかったが、我に返りそれが何なのかを思い出し、一度出した手を引っ込める。その煌びやかに輝き放った物体は風見の能力だ、下手に触れれば怪我してもおかしくはない。


風見が右腕をポケットから出し、獲物の方に向けると、風見が出した狐は一瞬にしてその場で輝き始め、目で追う事は不可能なレベルで光速で消え始める。そしてその狐は僕の気づかない間にいつの間にか敵の背後に四本足で立っていた。ポテンポットの数は残り三十体である、その全員が狐とは逆の方向を睨んでいた。


しかし視界に写っていたポテンポットは、三十匹全員がしぼみ始め、一瞬にして姿を消し始める、驚きのあまり僕は口は口を開けながら呆ける事しか出来なかった。



「お掃除完了…ってか!」



風見が何も言わなかったので思わず僕が決め台詞を言ってしまった。


これが能力を使える快感なのだろうか…。


僕は自分自身が使ったわけでもないが、自分が丸で使ったかのような気分に浸っていた、風見はツッコむ訳でもなく僕をただ見ている。


そしてその狐が消えると共に僕はまたも我に返った、これは僕がやったんじゃない、風見がやったんだと。


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