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第二話『異世界への旅立ち』

「化け物め、今倒してやる」




右手で握りこぶしを作り、力一杯腕を振り般若形相目がけて拳を突き付けた。しかし、拳は瞬時に掴まれ、あっさりと体は吹っ飛ばされる。








くそっ…流石に一筋縄じゃいかないか…と思い前を見たが、背負い投げをした後のようなフォームをとっていたのは化け物の方ではなく、青髪美少女のほうであった。








「いきなり失礼ですね、初対面の相手に暴力を振るうなんて」




「は…?」








僕はぽかーんとするしかない。六十キロもある体をあんな華奢な美少女にあっさりと飛ばされた事にだろうか、それとも勝手に人の家にあがりこんだ不法侵入者共が自分に説教をしている事にだろうか。それは自分でもわからないくらいに気が動転していた。








「何かと思えばお前達、泥棒か…」




「はい?」








酔っ払いの問いかけに、美少女は冷たい言葉と視線で返す。そもそもこの部屋に入ったときから、この少女の目は好意的なものなどではなく、むしろ憎悪に溢れた目でこちらを睨み付けていた。








「とはいったものの僕の家そんなお金ないけどな、命も別にまあとっていいや、とりあえず僕はちょっと寝かせてもらうよ」




「………」








ぐっすりと眠りにつきかけたその時、顔の方から何やら冷たいものが…








「ひゃぁ!?」








今までに出したことのない声が出てしまった。、顔全体にかけられたのはバケツ一杯に入れられた大量の水である。そして酔いも醒め、改めて認識する、目の前にいるのは美少女と化け物だ。








「夢じゃなかったのか…ていうかこんな極寒の中に何してくれてんだ…ハァハァ、ハックションッ!」




「あちゃあ、相当酔ってたみたいだね~」








初めて口を開いたのは美少女の横にいた緑色の肌をした般若形相の化け物だ、化け物の癖して普通に日本語を喋っている。








「何者なんだよお前達…」




「自己紹介が遅れたようだね~ごめんよ、あんまり酔ってるみたいだからしても意味がないと思ってね~僕の名前はジン、よろしくね」








じん…?化け物なのにじんって名前なのか?








「そして僕の横にいるのが怜華ちゃん、本当は来たくなかったんだけど上からの命令でね、無理やりって感じで来たから許してあげてくれ♪」




「へえ、怜華って言うんだ…」








名前を呼ぶも彼女は完全に無視を決め込んでいた、何故だか知らないが怜華という女に僕は凄く嫌われているようだ。








「いや、そうじゃない!名前を聞いてるんじゃなくてお前達は何者かを聞いてるんだ」




「いや~僕説明下手だからね~ここは怜華たんに任せるよ~」








たんだと…化け物の癖に怜華さんにたん呼ばわりなのか…。








「では説明を、かつての私達の世界はこの世界と一緒で人々は平和に暮らしていました、しかしその平和はある人物によって一瞬で脅威にへと変えられました。そしてその人物は人々を快楽で次々と殺し、世界の人口はたったの二割にへと減らされました。」




「そうそう~そこでその壊滅しつつある世界を君に救ってもらいたいんだよね~」




「………は?」








何を言ってるんだこいつ達は、異世界?世界が壊滅?








「まあこんだけ言っても君は信じないだろうね~当然の反応だ、だから君をまず僕達の世界に連れて行ってから決めてもらう事にするよ」








般若形相の化け物は両手を合わせて合掌をし始めた、そして次の瞬間僕の家の玄関扉がブラックホールのような空間に変わる。








「…!?」




「さて行こうか」




「いやいやいやいや待て待て!分かった、信じる、信じます!」




「え、本当!?」








元々は僕の家に般若形相の化け物がいること自体異常なのだ、それに黙って連れていかれて勝手に世界を救う英雄扱いされだしたら堪ったものじゃない。








「いや~物分かりが早くて助かるよ~それじゃ早速来てくれるかい?」




「いや、行かない。僕明日仕事だし」








あっさりと断った。








「君は仕事なんかよりもっと刺激的な事をやりたいはずだと思ったんだけどな~」




「確かにその世界を救う英雄になれるっていうのには魅力を感じる、しかし何か物足りないんだよな」




「物足りないか、ん~…」








熟考した般若はふと思い浮かんだように言った。




「それじゃあ来てくれたお礼には何でも君の願いを一つだけ叶えてあげるよ!」




「シェン○ンかよ」








何でもと言ったってそう簡単には思い浮かばなかった。それならいっその事、玲…いかん!思わず欲求に駆られてしまいそうになった…。




美少女に化け物、後一つ何か足りないんだよな…。








考える末見つけた答えは「そうだ!僕を超能力者にしろ!」




「超能力者だって?」




「そうだ、美少女に化け物、後一つ何か欠けてると思ったら超能力だよ!」








「超能力なら私達の世界に来れば手に入ります」




説明を終わったと同時に沈黙だった怜華さんが口を開く。








「手に入る?」




「はい、私達の世界はこことは違って一人一人能力を得て、能力者アビリットになる事が可能です、もちろんあなたも例外ではありません」




「まあ僕達は君の能力アビリティが何かを期待して君を呼びに来たっていうのもあるからね~」








「これだけの美少女がいて、戦う敵もいて、超能力も使えるなんて…天国じゃないか異世界!!!」




「ははは…その戦う敵っていうのはもしかして僕じゃないだろうね?」








今日一日の出来事を振り返る。




朝は寝坊し、自分より若い社長に説教をもらい、夜は十時まで残業、そして明日も朝早くから出勤しなければならない。




「こんな腐った世界、アディオスするしかないじゃん」








玄関にある異世界の扉へと一歩足を踏み込み、握った右手を空高く上げた。








「待ってろよ異世界、今僕が世界を救ってやる!!!」








異世界に幻想を抱く僕を見て怜華さんの目つきは更に鋭くなった気がした。





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