第8話
目の前に頬を腫らした元彼がいる。
人生で初めて渾身の力で人を殴ったが、不思議と後悔とか罪悪感とかが無い。
かと言って爽快感も無い。
あるのは「殴り足りぬ!!!!」というドロドロとした黒い汚い感情だけだ。
半分八つ当たりもあるけどさ。
宗佑の後ろにアンラとか言う赤い男がいなけりゃ、更に殴ってただろう。
人間って簡単にバイオレンスになれるのね〜
気絶したヒヨコは声をかけると、すぐに復活した。
そして、その瞬間から全力で動き出し、こちらが唖然としている間に「おもてなしの準備」を完璧にこなしていた。
メイドさんの鏡!
顔色がまだ良くないのが気になるけど。
可愛い上に仕事が出来る。嫁にするなら こんな子が素敵♪
「お前&%$#Bの癖に こんな良いお茶飲んでるとはな。」
言葉は通じなくとも悪口って伝わるのよねぇ。
悪意をビシバシ感じる。
『勝手に人を巻き込んでおきながら言える その神経がうらやましいわぁ』
笑顔で言っておいた。
両方の言葉が分かる宗佑だけが私達の間で青い顔をしている。
赤い男が通訳を求めているが、必死で首を横に振ってる。
「宗佑も召還された訳ね。で、後継者の花嫁?」
「華さん。僕は花嫁にはなれません。男ですから。」
そんな事はわかっとるわ!
なまぬるい視線を宗佑にむけると、あせって話し出した。
年をとっても性格って変わらないのねぇ。
「えっと。伯爵家に男子が産まれなくて、マティが爵位を継ぐにあたって配偶者を選ぶ時に どこにも繋がりが無い人の方が良いって事で」
「・・・。ちょっと待って。私達三人は一緒にこっちに来た訳じゃないの?」
ツッコミ所 満載な話だが一番聞きたい事を聞いた。
東北土産の赤い牛のように首をコクコクして話を続け出す。
「うん。あのすごい光の後、気づいたら一人だった。で、驚いて二人を2時間くらい探してた。そしたら また光って・・・。
気づいたら 知らない所に居た。」
しばらく無言で見つめあう。
宗佑もオマケで巻き込まれたかもって淡い期待は、あっけなく消え去った。
「それよりも華さんはどうして賢者の涙を食べてないの?言葉あんまり通じてないよね?まずいけど体に害はないよ?」
ポヨヨンとした顔で言っちゃったよ。この男。
情況見て悟れよ!
神様って本当に不公平・・・
そして私はこんな男のどこが良かったのだろう・・・。
人生の先達の言葉は正しかった。
男は顔で選ぶな
感想ありがとうございます!!!
うれしぃぃ!