第2話
暗いです。
今回だけは暗いです!
目が開かない・・・。
無理に開けると、もう見慣れたトイレが見えた。
知らない場所で、訳の分からない言葉を話す青い髪のおっさん達に連行されて学校みたいな所に連れて来られて桜子と離れ離れになった。
桜子と彼と三人で修羅場体験したのが、すごく昔に思える。
鉄格子のはまった窓から月のような物の光が薄く差し込んでいる。
月と呼んでよいのかも分からない。
何せ6つもある。
そのせいか、星は見えない。
6つの月をもう30回は見ている。
一ヶ月たったのかな?
ここは1年が365日なのか1ヵ月が何日なのかも分からないけど。
自嘲気味な笑いがこみ上げる。
私はずっと泣いていた。
ここは窓とトイレしか無い。
最初は訳が分からなくて大声で叫び、泣き喚いた。
誰も来ない。何も起こらない。
ただ、6つの月が無くなって周りが明るくなってきたら壁に開いた小さな穴から食べものが やってくる。
パンみたいなのが1つと水。
随分とやせた。
気にしていた二の腕と太もも。下腹。
あのプニプにが懐かしい。
また涙が出てきた。
声は出ない。
掠れた悲鳴みたいな音が出るだけ。
臭いにも慣れた。
公衆トイレの臭いを濃縮させたようなヒドイ臭い。
慣れるまで何回も臭くて吐いた。
硬い床にも慣れた。
ベットも布団もない。
そんな所で寝ていたので体中痛かったのに。
それでも涙は止まらない。
私は泣かない女だったのに。
父さんと母さん。お姉に弟。ばあちゃんにじいちゃん。叔母ちゃん。叔父ちゃん。
友達達。
楽しかった事を考えても涙は止まらない。
桜子はどうしているんだろう・・・。
あの子は私よりも適応力が無い。
枕が替わっただけでも眠れない子なのに・・・。
桜子の心配をしている自分に泣ける。
「ヤツが彼を取らなければ こんな事にならなかったのに。」
掠れた声で言ってみる。
涙が止まらない。
桜子のせいじゃないのは分かってる。
私の物を欲しがるあの子。
「嫌だ」って言えば良かったのだ。
なのに、私よりも似合う桜子を前に言えなかったのは私。
似合わなくたって大事な物なら守れば良かった。
彼だって、本当に好きなら、もう一度 体当たりすれば良かった。
彼が桜子を選んだって諦めなければ良かった。
今ならそうする。
だから神様。私を元の世界に戻して下さい。