第一話
口と鼻と耳に水が入ってくるのが分かった。
苦しくて必死にもがく。
「がはがはがは」
乙女なのに、沼から這い上がる化け物のような声が出た。
しかたない。死ぬところだったのだから。
しかも、必死にもがいたのに水深が膝の所までしかない浅い池だったのは悲しい。
浅い池に落ちた・・・。
おかしい。私は人生初修羅場を体験していたハズ。
辺りを見渡して驚いた。
今までいていた場所と違う。
何処かの庭園(?)のよう・・・。
「へっぶしゅ」
加藤茶を超える会心のクシャミが出た。
取りあえす池から出よう。
「ここどこ?」
頼りない細いソプラノが聞こえてきた。
ヤツだ。ヤツの声。
「桜子。あんたも居たの?」
幼馴染が可憐な姿で芝生に横座りしていた。
私は池。ヤツは芝生。
人生って厳しい。
「華ちゃん!ここどこよ!」
「知らんわ!!!!」
間髪入れずに答えた。
私は目先の事でイッパイイッパイよ。
とりあえず、ずぶ濡れのスプリングコートを脱いでしぼった。
中に着ていたカットソーも、もちろんデニムもずぶ濡れ。
「%&#”|〜!!」
訳の分からん声が聞こえてきた。
桜子と目を合わせる。
「何だか変な声聞こえたよ〜」
大きな黒い瞳をウルウルさせて桜子は私のカットソーをつかむ。
本当は抱きつきたいのだろうが、私はずぶ濡れ。濡れるのが嫌なのだろう。
私はそんな桜子の計算がイラッとして抱きついてやった。
「ダイジョウブデスヨ。サクラコチャン」
「イヤー!!華ちゃんの意地悪!!濡れちゃったじゃないのよー!!」
ポカポカ殴りかかってくる。
「%&#$”$%&&’’’〜=)?>{O!!!!!!」
殴りかかって来る桜子に気を取られていたら、いつのまにか髪の毛の青いおっさん達に囲まれていた。
「さ、桜子〜!!!!」
「華、華ちゃ〜ん!!!」
二人で抱き合って叫んだ。
おっさん達は太陽の光をキラキラと反射させる剣みたいなのを私たちに向けている。
この間見たレッドクリフの映像とダブる。
「は、華ちゃーん」
恐ろしさに大きな瞳をウルウルさせて震えながら静かに泣く桜子を抱いて私は・・・。
私は号泣していた
「ザグラゴ〜!!ここどこよ〜!!!!!」