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伯爵令嬢の禍福得喪は舞踏会の音楽と共に(59)

 ユージェニーは、ゲオルクが王の抱擁を受けるために離れたのを幸いに、兄のオリヴァーに近寄った。


 ゲームの決着がつくと、麗しのレディ・エマには紳士達が殺到して、オリヴァーは押し出されてしまっていた。

「兄上」

「おお、我が妹よ」

 ユージェニーが声をかけると、オリヴァーは肩の荷を下ろしたような表情を浮かべていた。

 レディ・エマのお相手は、兄には荷が勝ちすぎたらしい。


「なかなかお見事でしたわ」

「そうか?」

 まんざらでもない顔でオリヴァーは顎に手を当てた。

「どうしてグレイシー様だと判ったのですか」

 ユージェニーはゲオルク殿下にもした質問を兄に投げ掛けた。

「バイアール公爵が声をかけた時点で、メジャトがユージェニー達だとは、ここにいる大半の者が判ってはいたと思う」

 フロランス嬢やミフィーユ嬢も近くにいたしね。とオリヴァーは続けた。

「バイアール公爵が跪いただろう?だからそれにヒントがあると思って、僕も跪いてみた。そしたら、見覚えのある靴があった。だから、それがお前だと判ったのだけれど、お前を当てるのは芸がないだろう?」

「グレイシー様とレディ・エマのお二人を見分けたのは?」

「お一人だけ少し背が高いし、離れて立ってらした。加えて白い衣の下からユージェニーと同じ色の裾が少し見えたからね。だったら、グレイシー嬢しかあり得ない」

 ユージェニーはそういう事だったのかと納得する。おそらくバイアール公爵は、十中八九はナターリアを見分けていたが、最後に跪いて、ナターリアを確認をしたに違いない。

 幼い頃からナターリアを知っているバイアール公爵は足を見れば、彼女だと判るのだ。たぶん。


 そう考えてから、ユージェニーは顔を赤らめた。

 自分を含めて淑女、四人の足をバイアール公爵とオリヴァーに見られたのだ。

 淑女の足は隠されるべきもの。


 いえ、大丈夫。バイアール公爵は跪いて、ほぼ間を置かずにナターリアの裾を取って口づけた。

 他の女性の足を見てはいない。

 それに、今日は園遊会だから、しっかりしたブーツを皆が履いていた。

 ちらりとレディ・エマの方を確認すれば、足は爪先しか出ていない。


 兄も見覚えのある靴と言っていたではないか。

 慌てた心が静まっていく。


 ゲオルク殿下が同じ確認の仕方をしなくて良かったとユージェニーは安堵した。


 あの金を帯びた琥珀色の瞳に映ると思うと、例え靴だけでも、何か気恥ずかしい。

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