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伯爵令嬢の禍福得喪は舞踏会の音楽と共に(54)

 メジャトに誰が扮しているのか?

 名前当てのゲームにコンラートがまず挑戦して、出来るならナターリアを当てて貰い、ゲームに弾みをつける。

 次いで、コンラートがゲオルクをゲームに誘う。


 クロヴィスは、少し離れた場所で、メジャト達を眺めるともなしに眺めている王太子に目を走らせた。

 仮面は彼の美を隠すどころか、際立たせていた。

 エギュプト風の衣裳と相まって、どこかこの世にはいない雰囲気だ。

 その超然とした佇まいと、ビヨンヌ伯爵が時おり、ゲオルクに対して鋭い視線を投げているので、王太子に声をかけて貰おうと、に積極的に近付く者はいない。


 茶話会の限られたメンバーだけでなく、子供の自分が参加できるこの園遊会で、ゲオルクを取り巻く輪を広げられたらいいと、クロヴィスは漠然と思っていた。


 クロヴィスの最初の計画は、アーサーの手で潰えた。

 しかし、かえってゲームは盛り上がったようだ。

 褒美を自ら与えると言うヘンリック陛下の機転配慮に救われた形だ。


 我らが王は話の解る方。

 クロヴィスはその事には、深い満足を与えた。


 コンラートはアーサーにナターリアの名前を当てられた事に不満を持ったようだが、マルグリッテ王妃が、彼のことを“愛し子”と呼んだことで機嫌を治したようである。


 今回だけしか、チャンスが無いわけではない。


 クロヴィスは頭を切り替える。


 しかし、フロリッツ家のオリヴァーがグレイシーを当てるのは予想していなかった。

 彼が名乗り出た時、当てるとしても妹であるとクロヴィスは考えた。


 オリヴァーの社交界での評判は、可もなく不可もなくである。

 海軍に入った次男の方がなかなか優秀らしいので、そちらの方が名前が挙がりがちだと聞く。


 でも、ユージェニーの兄上であられるわけだし。


 けしてオリヴァーは頭が悪いわけではなく、下の二人の影に隠れて目立たないということのようだ。


「誰かいないのか」

 オリヴァーの後に、誰も名乗りでないことに焦れたのか、ヘンリック陛下が辺りを見回す。


「ならば、世が挑戦しようか」

「ヘンリック陛下!」

 珍しくもビヨンヌ伯爵が驚いた。

 回りも、クロヴィスもだ。

 またもや意外な展開。

 ヘンリック王が名前当てに参加する。まさかそんな事を言い出すとは、誰も思っていなかった。


「私自身から褒美は貰えないな。世が名前を当てたら、誰が褒美をくれるか?」

 笑いながら、ヘンリック王が臣下達に問いかけた。

「では、わたくしからの口付けを」

 マルグリッテ王妃が申し出ると、「それだけか」と洩らした。

「まあ、わたくしの口付けでは不満ですの?」

 王妃は怒った振りをした。

「不満はないが、少し足りぬ気がするな」

「では、僭越ながら、わが屋敷の宝でございます、ヴァッテル料理長を差し上げます」

 ビヨンヌ伯爵が恭しく申し出た。

 ヘンリック王は以前からヴァッテルを召し抱えたいと口にしていた。

 ヴァッテルにしても、王宮の料理人となれば箔がつく。

 たぶん、このゲームが無くても、ビヨンヌ伯爵は園遊会が終わったら、ヴァッテルを推挙するつもりだったとクロヴィスは判じた。


「ふむ。それはなかなかの褒美だが」

 ヘンリック王はメジャト達に質した。

「メジャト神からの褒美はないのか?」

 クロヴィスはとっさに考える。

 だが、クロヴィスはまだ、子供だ。

 王に捧げられるものは、まだ無い。


 クロヴィスが答えに窮しているとゲオルクが口を開いた。

「我が父なる神々の王よ」

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