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伯爵令嬢の婚約破棄は教会の鐘と共に(9)

 二頭立ての馬車が三台が連なって道をバイアール城に向かって走っていく。

 その内の一台はとびきり豪勢な造りだった。


 馬を走らせていたウィリアムは速度を落として、その様を眺めた。


 海軍に在籍しているが、子供の頃から乗馬は仕込まれている。


 名高いバイアール家の名馬達に乗る機会などそうそうあるものではないと、ウィリアム毎日のように午後になると厩舎に来て違う馬に乗っていた。


 バイアール公爵は朝駆けがお好きなようで、乗馬を好む招待客の大方も、公爵にならって朝に馬に乗っていた。


 しかし、ウィリアムはせっかく揺れないベッドで眠れる休暇中に、早起きはしたくないと、朝寝を楽しんだ後に食事をを取ってから馬に乗っていた。

 おかげで、乗りたい馬に好きなだけ乗れる。

 昨日は比較的大人しい栗毛の雄馬。

 今日は文字通り、じゃじゃ馬の牝馬(ひんば)だった。

 乗り手の意向になかなか従わず、自分の行きたい方へ行こうとする。

 手綱を引くと、ウィリアムを振り落とそう前足をあげる。

「こいつは、面食いで公爵様しか乗せたがらない」

 と言っていた馬丁の言葉を思い出した。


 バイアール公の美貌には負けるが、俺もそこそこだと思うんだがな。


 それでも騙し騙し、バイアール城とドゥブルの町が良く見える丘の上まで来た。

 アンゲリアの、雲で覆われた鈍色の空。

 時折、思い出したように切れ目から青空が覗く。


 海軍に入ってから、様々な場所の空を見上げてきたが、この風景も悪くはない。


 ここから見渡す限りがバイアール公爵の領地なのか。


 羨ましくもあるが、この土地に縛られている公爵に同情する気持ちが大きい。


 ウィリアムが海軍を選んだのは、アンゲリア以外の世界を見たいと考えたからだ。


 貴族の息子、取り分け跡継ぎは、グランドツアーと呼ばれる遊学を行う習慣がある。西の海に浮かぶこの島国から、海を渡り、大陸にある国を巡るのだ。

 行き先は文化が花開くパリシアやエウロピア文明の黎明であるグリーク、偉大なラーム帝国の発祥の地、エルトリアを選ぶことが多い。


 ウィリアムも例外に洩れず、二つ違いの兄のオリヴァーと共に、パリシアからラーム帝国の首都ラムラスを巡った。

 二人一緒だったのは、旅費の節約のためだ。

 貴族としては、家柄はまあまあだが、収入は下方に位置するフロリッツ家が体裁を整えながら旅をするなら、一人より二人を同時に行った方が効率がいい。


 他には人の良いところがあるオリヴァーが、旅先で厄介事に巻き込まれないようにとの両親の配慮だった。


 寄宿学校でもオリヴァーは優等生と評価されていた。

 ただ、兄はときどき、善意で突拍子もないことをしでかすところがあるので、監督生には選ばれなかったけれど。


 反対に、ウィリアムは少々問題児だった。

 スポーツも勉強も出来たが、ラテン語やグリーク語を習い、古典中心の学習などナンセンスと先生に向かって嘯くような生徒で、十七を過ぎた頃には、ときたま悪所に出入りするようになっていた。


 良く放校にならなかったものだ。


 たぶん、学長が創設したばかりのボート部の初期メンバーだったことが配慮されたのではないかと思う。

 ボート部は大変だったが、ボートの練習のため学外に出ることも多く、楽しかった。

 城と町の間を流れる川を眺めながらウィリアムはチームを組んでいた同級生の若い顔を思い出していた。

 卒業してから、十年近くになる。

 海軍の士官学校に進んだウィリアムは、大学と、ボート部に所属していたのに何故か陸軍を選んだ友人とは大分ご無沙汰している。

 ウィリアムが所属している部隊は、イベレス半島の先端にあるジブロルタ半島と海峡の守備を担っている。

 今世紀の初め、エスパニアとの戦争で獲得した領土だ。

 同じエウロピア内の領土なので、東洋や新大陸の領土から比すれば、アンゲリアとは目と鼻の先ほどの距離ではあるが、一度艦に乗れば、半年は本国に帰れない。

 ウィリアムとしては、軍に入って演習で一度だけ行った東洋方面を希望していたのだ。


 遠くへ、より遠くへ。

 世界を見てみたい。


 今時、跡取りを軍へ好んで送る貴族はいない。


 それを考えれば次男も悪くはない。


 ビスケットに巣くうコクゾウ虫との格闘はいただけないがな。


 ウィリアムは声を立てて笑い、馬に拍車をかけた。


 バイアールの城に戻ると、裏玄関で、馬の上から見かけた馬車の地味な方の二台が荷物を下ろしていた。


 厩舎は裏玄関からの方が近いので、利用していたウィリアムだが、今は使うのを諦める。


 大層な荷物だな。


 ウィリアムは運ばれていく荷物を横目で見ながら、正面玄関に回って城の中に入る。


 すると、ドレスを着た二人の女性が従僕を従えて立っていた。

 玄関が開けられたのを気にしてか、二人はウィリアムに顔を向けてきた。

 彼は軽く会釈をした。

 挨拶の言葉は出さない。

 正式に紹介された事がない女性だったから。


「ミス・レイチェル、こちらへ」

 下級執事が二人をサルーンへ案内していく。

 背の高い方の女性が先に立って。


 二人の姿が消えてからウィリアムは呟いた。

「あれがレイチェル・カーランドか」

 二頭立ての豪勢な馬車でバイアール城に到着したカーランド家のレイチェル。


 美人とは言えない。

 背も並みの女性より、かなり高い。

 大女と呼ばれる類いだ。


 背が高い女は、それを気にして、猫背になり勝ちだが、彼女はそうじゃなかったな。


 むしろ、背をそびやかすように歩いていった。かなり、気が強そうだ。


 今日はじゃじゃ馬と縁のある日らしい。


 ◇◇◇◇


 メアリーアンはバイアール家のパーラーメイドと午後のお茶を楽しんでいた。


 格式ばった昼食とは違い、会話ができる気楽な集まりだ。


 ゴールディア家では、日曜日しか行われていない家事使用人達の昼餐の儀式が、公爵家では、毎日行われていた。


 バイアール家は公爵家の、それも本拠地であるカントリーハウスの昼餐とあって、厳格な段取りとルールがあった。

 昼餐には厨房を司るシェフやキッチンメイドを除いて全てが集まる。

 ただ、集まるのではない。

 まず下級使用人が使用人(サーヴァンツ)ホールに集まって、細長いテーブルの定位置に立つ。それからホールボーイがハンドベルを三回鳴らす。

 すると上級使用人達が家令とハウスキーパーを筆頭に二人づつならんでホールに入る。

 滞在客のお供の使用人達も含めて。

 メアリーアンもロバートと共にその列に加わる。

 メアリーアン達は最初の日に、昼餐前に上級使用人達が集まる家令室を教えてもらっていた。

 家令が合図をすると給仕をするホールボーイ達以外の者が着席。

 ホールボーイが肉料理を持ってくると、家令が取り分けて、ホールボーイに肉を配らせる。

 テーブルには野菜が置かれている。

 料理を食べ終えると、家令付のボーイが恭しい態度で空の皿を下げ、上級使用人達が、序列に従ってホールを出て行く。

 肉料理以外の料理がでれば、家令室で食事の続きをしてから、ハウスキーパーの部屋へ移動して食後のお茶を飲む。

 メインディッシュを食べている間は会話をしない。

 上級使用人達は、家令室に下がってから会話を始め、下級使用人達は上級使用人がいなくなってから会話をする。

 これを毎日繰り返す。

 今日の肉は羊だった。


 ゴールディア家では、昼餐の時も、多少の会話は許されている。もっとも内容は仕事に関して、改善の提案などに限定されているけれど。


 それから、午後のお茶まで働く。

 使用人のお茶の時間は四時と決まっていたが、接客をするパーラーメイドの一人キャロラインは新しく到着したカーランド家の令嬢にお茶を差し上げていたので、時間がずれた。

 同じように、ナターリアのドレスの点検を入念にしていたメアリーアンも時間に遅れて、キャロラインとかち合った。


「それにしても、たくさんの荷物だったわね」

 メアリーアンはゴールディア家の二倍の量を運んできたカーランド家に驚いていた。

「ご両親やアーチボルトご夫妻よりは少ないですよ」

 キャロラインはにこやかに返してきたが、かすかに眉根をよせている。なんでも、カーランド夫妻は六台、アーチボルト家に至っては八台の馬車を連ねてやってきたらしい。

 過剰な荷物は使用人達の負担になることは間違いない。馬車が多くなれば、荷物だけでなく、御者や馬の世話もしなければならない。

 ゴールディア家は、移動の負担も減らすために、最小限の荷物にしている。

 ナターリアのドレスの数も少ない。そのドレスをアレンジするのはレディースメイドのメアリーアンの腕の見せ所だ。


「それに前の公爵様、ウォレス様がロンディウムに行かれるときは、一ダースの馬車で向かいましたから」

 それは、約半年間のシーズンをロンディウムで過ごすため、使用人の一部も移動するからだ。

 ゴールディア家も領地との往復は七台から八台の馬車を使う。

 それと同じほどの荷物をカーランド家とアーチボルト家は持ってきたのか。

 生活に必要な物はバイアール家が用意するので、荷物の大半は衣装だ。


 親子共に着道楽なのかしら。


「今日の晩餐にどのような衣装を着ていらっしゃるか、楽しみだわ」

「それが、今日はお疲れになったそうで、正式な晩餐会は開かれないそうです」

 キャロラインは少し声をひそめた。

「繊細な方なのね」

「ご健康そうなお見掛けでしたけれど、馬車にお酔いになる(たち)の方もいらっしゃいますから」

 そのお詫びとして、レイチェル嬢は明日、ピアノを披露するという。令嬢が楽器の腕前を披露するのは良くあることだった。


「アーサー様は音楽を好まれますから。お喜びになるでしょう」

 キャロラインはそう言ったが、メアリーアンはナターリアや他の令嬢も楽器の披露を請われるかもしれないと思った。ならば、楽器の扱いに適したドレスを選ばなければ。


「明日は素敵な夕べとなりそうですわね」

 メアリーアンはお茶のお代わりをカップに注いだ。ゴールディア家の使用人用の紅茶も良い物だが、公爵家のお茶のほうが、香りが高い気がする。

 メアリーアンがそう感想を述べるとキャロラインは少し自慢げな顔をした。

「こちらは、アーサー様も好まれてお飲みになるものです。毎年、東海インディア会社から直接に茶葉を仕入れているのですが、新しくした時に残っている茶葉は私達に下げ渡されます。特にこちらは、カラの高地でも特別な茶園で栽培された最高のものですから」


 公爵が飲む品質と同じものなのなら、香りの高さも納得だった。一年前のものだが、公爵家が保存に気を使っているのが良く解かる。

 当然、巷のように混ぜ物はない。

 正規のルートでカラ国からアンゲリアに輸入されるお茶は高い。

 税金がかかっているから。おおぴらには言えないが、高い紅茶を嫌って、密輸される安い紅茶を中流階級の家で購入することも多い。また正規、非正規に関わらず、嵩を増やすために、混ぜ物をしているものがあるのも事実だ。そんな安い紅茶を使用人にあてがう屋敷もかなりあると聞く。


「そうですの。さすがバイアール公爵家ですね。ゴールディア家では、秋口に茶葉を“ダンディ・ライオン”から家人用と使用人用の茶葉を別に購入します」

「噂に聞く、ゴールディア家の誠実ですわね。使用人に、常に新しく、最盛期の茶葉で飲ませようという」

 そう言われれば、ゴールディア家の者としては悪い気はしない。

「お互いに良い方々にお仕えしておりますわね」

 二人はお互いに満足したような顔で紅茶を飲み干した。


 ◇◇◇◇


 父のエドモントとマデリンの二人が二日後にロンディウムへと戻る。

 母、ケイトリンは、最初の予定通り、ロンディウムに戻るか、ここに留まるか悩んでいたが、留まることになった。


 新しい事を始めた姉のナターリアがやはり心配らしい。

 クロヴィスも姉の事は気がかりだった。


 何故なら、仮想園遊会以来、姉がロマンス小説を一冊も読み切らずにいるからだった。

 読書の時間を勉学に費やしている。


 ナターリアが官吏になりたいと言い出した時、クロヴィスは賛成した。

 官吏は女性の中で唯一、身分が保証されるためだ。


 王宮にいた時は理解していなかったが、アンゲリアでは、レディと呼ばれる女性は、奉られているが、その立場は甚だ危ういものだ。

 それは、アンゲリアでは、僅かな例外はあるものの、女性に爵位の継承権はなく、男子相続を貫いているためだった。


 紳士たるもの、女性を尊重し、守る。

 幼い頃から、そう教えれてきた。

 成長するにつれて、その思いは自然に湧いてきたし、同時に女性を尊重する行いは自身の尊厳を保つためでもあると気付いた。


 その思いは変わらない。けれど。


 ゴールディア伯爵家には、クロヴィス以外の男子はいない。

 それは、父のエドモントとクロヴィスが早世したら、爵位や財産は傍系の男子に引き継がれることになる。

 そして、傍系の男子は、五代前の弟の血筋だが、家を継げない彼は、新大陸での立身を選んだ。

 すでに、百年も昔の話で、祖父の代には、音信も途絶えた。今、爵位を継ぐことができる男子がいるかどうかもわからない。


 また、ゴールディア家の気風で育った者ならば、例え爵位と財産を受け継いでも、母と姉は不自由なく暮らせるだろうが、新大陸で育った、会ったこともない親戚の人となりは、わからない。


 爵位相続については、バイアール公爵家にも不安はある。


 何せ、バイアール公爵家の子供はアーサー義兄上しかいないし。


 ゴールディア家もバイアール家も貴族にしては珍しいくらい、夫婦仲は良いにも関わらず。


 ナターリアはアーサーと婚約している。

 本音を言えば、ナターリアとアーサーが早く結ばれて、跡継ぎをもうけて貰いたい。


 が、コンラートが見聞きしたビヨンヌ家の仮装園遊会の場で、姉は最初の約束である"婚約破棄"にこだわった発言をしたそうだ。


 まさか、本当に婚約破棄にはならないとは思うけれど、人生には何があるかわからない。

 姉が官吏になれれば、万が一が起こったとき、その身分が姉を守る。


 それに姉が言った"官吏は、淑女が付ける名誉ある仕事であると世に公知させる"という考えも気に入った。


 そう考えたこその賛成だったのに。


 ロマンス小説が読めなくなるほど、打ち込むナターリアには、どこか危うさを感じている。


 何より、ナターリアはミス・マデリンに一線を引いているように見える。

 姉は、自分のゴールディア家のガヴァネスを信頼し、良き相談相手として接してきた。

 それが共に学ぶ事をマデリンに提案したのは、ナターリアなのに、学習上の相談はおろか、ほとんど毎日、行っていたミス・マデリンとのお茶の時間を取ることもしていない。


 仮装園遊会でミス・マデリンがゲオルクをはじめ、何人かのやんごとなき方と踊ったと聞いていた。

 クロヴィスは、図書室にいたので、実際に踊るミス・マデリンを見ていない。


 それを聞いて、舞踏会場にいなかったことを悔やみ、たとえその場にいても、デビュタント前の自分がミス・マデリンとは踊れないことが悔しかった。


 ナターリア姉様はミス・マデリンが王子方と踊ったことが心に引っ掛かっているのだろうか。

 だが、ミス・マデリンに踊るように勧めたのはナターリア姉様だとコンラートが言っていた。


 それに姉は純粋すぎると、コンラートさえ心配するほど真っ直ぐな人だ。

 自分のガヴァネスが自分より少々目立ったくらいで、気を損ねることはないと、クロヴィスは最初に考えた事を自分で否定した。


 それ以外に考えられるのはミス・マデリンが画家を本格的に目指していると知ったからか。


 官吏の勉強に、ミス・マデリンをかなり強引に引き込んだ自分が後ろめたいのかもしれない。


 クロヴィスは姉がミス・マデリンが官吏になるのを勧めたのは間違っていないと思う。


 淑女の仕事は、一般的にガヴァネスやレディズ・コンパニオンくらいしか認められておらず、クロヴィスが寄宿学校に行ってしまえば、ミス・マデリンは職を失う。

 母達はレディズ・コンパニオンとして雇い続けるつもりのようだけれど、コンパニオンは話し相手のいない、独身のレディや未亡人が必要とする職で、家族がいるゴールディア家には必要ない。

 ミス・マデリンは、必要ない職で雇われるのをよしとしないと思う。


 そうなると、ミス・マデリンは別の屋敷に勤めることになる。

 他の屋敷では、カヴァネスに敬意を持たない扱いをする場合もあると聞く。

 クロヴィスはミス・マデリンがそんな扱いをされるなど我慢ならない。


 展覧会に入選して、画家になったとしても、売れるかどうかは分からない。

 ゴールディア家がパトロンとなる道もあるけれど、ミス・マデリンはそれも断る気がする。


 でも、官吏になれば、身分は保証され、生活も安泰。

 さらに、調べたところ、下級女性官吏は、男性の週に一日の休みより、休みが多く与えられていた。

 余暇が多ければ、絵に向かえる時間も取れる。


 官吏になったら、官庁街や議事堂があるウエストエンド市に移ればいい。

 幸い、ウエストエンドにはゴールディア家が地所を貸しているフラットやテラスハウスがある。

 そこにミス・マデリンが住むなら安心だ。


 ゴールディア家の屋敷があるシティ、つまりロンディウムウォールの内側は十三世紀の昔から政治の中心ではない。

 ロンディウムウォールの西の壁の向こうに建てられたウエストモナスタリー教会の横に建てられた宮殿に王が移り住み、その後、さらに広いシルヴァー・ホール宮殿が造営された。


 前世紀のロンディウムの大火でシルヴァー・ホールは焼失したが、再建はされずに、同じウエストエンド市にある別の宮殿を改築して、現在の宮殿セント・ジョンになった。

 シルヴァー・ホールの跡地には相次いで官庁舎と貴族用のタウンハウスが建てられ、今に至る。

 ゴールディア家のタウンハウスはロンディウムウォールの内にあるが、昼間の活動の場は、ほとんどがウエストエンドだった。

 コンラートとの関係で王宮に伺う機会も多い。

 ウエストエンドに住居するほうが便利なのだから、もしナターリアが官吏となれたら、一家揃ってそちらに移る可能性もある。


 そうすると、ロンディウム博物図書館からは少し遠くなってしまうけど。

 ラーム帝国の頃からアンゲリアの中心となってきたシティに愛着もあるけれど。


 ロンディウムの起源であるシティは、王宮が移ったことで、政治の街から商業の街になった。

 街の顔は、商工組合(ギルド)だ。大陸からギョーム征服王が渡ってくる以前からシティは王家より自治の特権を持ち、それは征服王も覆さなかった。

 王たりといえども、シティの内に入るには、シティ・オブ・ロンディウムの市長の許可がいる。


 そういえば、カートランド家の令嬢が今日、到着した。

 カートランドもアーチボルトもシティの同業者組合(ギルド)の有力者だ。


 まだ子供のクロヴィスは大人たちとは、ほとんど別に行動し、食事も別にを取っているので、両家の人たちと会話をしたことはない。

 が、レイチェルが官吏を目指すなら、彼女とは会話の機会も多くなる。


 そうすれば、彼女を通じて、カートランド氏とアーチボルト氏に、シティに根を張っている同業者組合(ギルド)の内側について聞くことができるかもしれない。


 クロヴィスは自分の知識欲が満たされることを期待した。


予定より、書きあがるのが遅れてしまいました。

楽しみにしてくださる方には申し訳ありません。


考えるところがあって、完結までの、これからのあらすじを、六月の日付で予約投稿しておくことにいたしました。その作業と並行しておりますので、次の投稿も一週間後くらいになります。



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