7.全裸→魔法使い→熊
2時間ほど魔力操作の練習に費やした。
一度体内の魔力を動かす事が出来ると、そこからはあっさりと上手く操る事が出来た。
自転車の様に一度上手く乗れると、感覚がその操作に追い付くみたいだ。
『どうじゃ?魔力の操作には慣れたか?』
「ああ、なんかこれ出そうと思えばいくらでも出せそうだな」
『それは単純にお主の魔力量が多いからじゃ。 じゃがシロコの方が多いぞ?』
犬以下でしたか……。
その犬は一心不乱に地面を掘っている。
ちょっと悲しくなる。
『なに、それでもこの結界を破壊するには充分じゃ。では早速やって貰うとしようかの』
「お、おう。そうだ、破壊したらここを出るんだろ?何処に行くんだ?」
『何処に行くかと言われてものう。我の知識は千年以上前の物じゃ、周りがどうなっているかなど分からん』
デスヨネー。
「洞窟の外は周りに山しか見えなかったぞ、雪で真っ白だった」
正直もう外に出たく無い……。
『ふむ、そこは我が封印された時と変わらぬ様じゃの。じゃがここにいても仕方あるまい?ここに生えとる草は冒険者共の服についておった雑草の種から増えたものじゃ、食える物など無いぞ?』
「……出るしか無いですね」
『なに、いざとなったらシロコに身体を貸して貰い飛んで行ってやろう。適当に飛んでいれば人里くらい見つけられるじゃろ」
おお、さすがサモエドラゴン!
「ワン!」
何故かシロコが自慢げに吠える。
ハイハイ偉い偉い。
よしゃよしゃしてやろう。
+++
タマちゃんの案内でこの結界の中心と言われるに移動する。
「……あそこにあるやつか?」
目的の場所には50センチ大の琥珀の様な丸い結晶体が半分地面に埋まっている。
『うむ、あれがこの結界の核じゃ。これのせいで我は出ることは叶わず、他の者は出入り自由という迷惑極まりない代物だの』
「随分と使用者に都合のいい話だな」
不法侵入されまくりだ。
『いずれ我を始末したかったのじゃろうな。
その前に忘れられてしもうた様じゃがの』
カンラカンラと笑い出す。
笑えねぇ……。
「とりあえずあれに触れて俺の魔力を流し込めばいいのか?」
『うぬ、他の属性の者じゃと近づく事は叶わんが、この結界と同じ、三つの属性が混ざったお主は直接触れる事が出来るじゃろう』
「かなりの量の魔力が必要とか言ってなかったか?」
魔力出し過ぎたら干物にならない?大丈夫?
「直接触れる事が出来るなら大丈夫じゃろ。
量が必要といったのも、本来なら近づけぬから距離を取って各属性同時に放つ必要があったからじゃ。それにお主の魔力量も中々の物じゃ、心配するな』
信じるぞ?信じるからな?
とりあえず結界の核に近づく。
「キャヒン」
「ん? あっ」
本当だ、シロコが核から5メートルくらい離れた所で透明な壁の様な物に遮られて近づけない。
前足でカリカリしとる。
『まあこんな感じじゃ。よろしく頼むぞ』
「分かった」
結界の核に近づき両手で触れる。
ちょっとあったかい。
なんか緊張する。
「ふぅ、……よし」
体内の魔力を高める。
練習を始めた時には魔力の操作に手間取ったが、今はある程度自由に動かせる。
どう言う風にと言われると本当に感覚によるもので説明が難しい、手足の動かし方を筋肉の原理から口で説明するする様なものだ。
「ふぬぬぬぬ」
体内で高めた魔力を両手を通じて核に流し込む。
おお、どんどん入って行く!
『うぬ、その調子で頼むぞ』
「わ、分かった」
…
……
5分程魔力を流し込む。
身体を動かす感覚で言うと、少し早めのジョギングを続けている感じ。
ちょっとキツくなってきた…
シロコは……また穴掘ってる。
トンネル作ってこっちに来るつもりか?
「ち、ちょっとキツくなってきたんだけど?」
『なに、もう少しじゃ……ほれ』
パシイィン!
「うひぃっ!?」
突然の音に驚いて離れてしまう。
『ふむ、綺麗に割れたの。 感謝する、これでこの結界は機能を失った』
いまだに穴を掘り続けているシロコから告げられた。
なんかもうさっきから行動と声のギャップが凄まじい。
結界の核を見ると、真ん中から綺麗にヒビが入っている。
どうやら上手くいった様だ。
「これで外に出られる様になったのか?」
周りは特に何か変わった様な感じはしない。
『うぬ、これで久方振りに外に……っと、ほれシロコ、もう主人との壁は取り払われておるぞ』
「ワフ? ウォン!」
「ちょっ、おっふ」
障害がなくなって元気よく突っ込んで来るシロコを受け止める。
はいはい、よしゃよしゃ。
『うーむ、今まで見下ろしてた人間からこう上から撫でられるのは新鮮じゃの』
「ああ、そうか。シロコの中に居るんだよな? 視線とかも一緒なのか?」
『うむ、一緒じゃの。じゃが魔力を放出すればある程度視界が広がるの。溶かした魂の影響かの』
サモエドラゴンの進化が止まらない。
「そう言えば、シロコと会話してるみたいだが、言葉が通じているのか?」
『通じるも何も、魂で一緒におるのじゃ。意思を伝えるのに言葉はいらん」
「そう言うもんなのか……」
『もう結構話したぞ、お主はシロコが側に居ないと心配だとな。愛されておるの』
「聞きずてならねぇ……」
俺のセリフだと声を大にして言いたい。
『身体を貸してもらう代わりに色々と教えることになった。いずれ最強の狼となろう』
やめて!?
これ以上タックルの威力を上げないで!
「ほ、程々にな……うん?」
足下がヒンヤリしてきた。
『結界が無くなって外気が入ってきた様じゃの。ほれ、外に出るぞ』
そう言われて外の寒さを思い出す。
正直この着込み具合では持ちそうに無いな。
「ちょっと待った。もう少し厚着した方が良さそうだ」
『ふむ、そうか。じゃが早めにの、外気に当たってからシロコがムズムズしておる』
シロコは寒さバッチコイなのな……。
とりあえずまたさっきのホネホネの山に向かう。
+++
「背に腹はかえられないな……」
手にしたのは最初に見た黒い熊の着ぐるみっぽいやつだ。
これなら顔の寒さも凌げるだろう。
側から見たら熊にしか見えないけど。
このずた袋みたいなのも使えそうだしついでに持っていくか。
『ロックベアの子供の毛皮か、それなら寒さも問題無いじゃろ』
「これ子熊サイズなのかよ……」
170センチ越え(希望)の俺がすっぽり着れる大きさですよ?
『成長したら10倍程の大きさになるぞ』
「それは是非とも遭遇したく無いなぁ……」
『なに、それぐらいならシロコのブレスでどうとでもなる。それよりもほれ』
「ガフガフガフ」
シロコが急かす様に着ぐるみの端を引っ張る。
何かとんでもない事を言っていたような……。
「分かった分かった、行くから」
シロコに引っ張られながら洞窟の外へと向かう。
もう今日一日で色んな事が起こりすぎだ。
ちょっとは休ませて下さい。
読んでいただいてありがとうございます。




