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53.集合する


「さて、忘れ物は無いよな?」


『着替えくらいしか物を持っておらんじゃろう、他に何を忘れると言うのじゃ』


「まあそうなんですけどね……」


 翌朝、頭陀袋を背負った熊と、背負い鞄を持ってスキップしている獣人の娘が、護衛依頼を受けるために冒険者ギルドに足を運んでいる。


『まったく、飛んで行けば早いものを……』


 集団行動が嫌なのか、タマちゃんがあまり乗り気では無い。まあ気持ちは分からんでもないが。


「まだ手持ちはあるけど、少しは蓄えを確保しておきたいじゃないか。出店もタダじゃ無いんだぞ?」


「デミセ!」

『……ふん、仕方あるまい』


 お、シロコを引き合いに出せば今後もタマちゃんは折れてくれそうだな。頻繁に使うとバレそうだから、この手はたまに使うとしよう。


「そろそろギルドに着くから出店はまた今度な。っていうかまだやってないし」


「むぅ……」


 膨れっ面のシロコをひと撫で。そうこうしているうちに冒険者ギルドが見えてきた。


「ギルド前で手を振っる人がおるけど、タマちゃんの知り合い?」


『お主、分かってて言っておるじゃろう?』


 あ、こっちに来た。


「タクミさん、こっちです! もう商隊の方も結構集まって来てますよ!」


「あ、ああ、ありがとう。君がマックさんが言ってた案内してくれる人で合ってる?」


 いかにもウェーイな若者だ。いや、まだ俺も若者だった。危ない危ない。


「はい、そうです! あっ、そういえば自己紹介してませんでしたね。俺はトールっていいます、中位冒険者です。よろしくです!」


 あっ、思い出した。この子はギルドの修練場に行く羽目になった茶髪高校生グループの1人だ。

 つかテンション高いな。陽キャ、つまり俺の敵だな。


「ああよろしく、それじゃあ案内頼むよ。

 ところで、食料は持って来なくてもいいって言われたんだけど、大丈夫だよね?」


「そういえばタクミさんは初めての護衛依頼でしたね。大丈夫っすよ、飯は護衛料から差し引かれて商隊から出ますから。途中で商隊から買う事も出来ますよ」


 そういう話らしいのだが、シロコは食うぞ? 知らないぞ? 出し渋ったら飛んで街に戻るからな?


「それならいいけど」


「今回は獣人族がシロコさんだけっすから、食いっ逸れる事は無いですよ」


 そもそも獣人族は良く食べる種族のようだ。それなら空いた獣人族の分はシロコの腹に収めて頂こう。


「あっ、そうだ! ちょっと見てくださいよ!」


 チャラ男が俺の返事も待たずに、いきなり中腰になった。なんだ? 格好いいポーズかどうかのアドバイスでも欲しいのか?


「……せいっ!」


 ダンッ! とその場から前方にチャラ男がジャンプした。7.8メートルは飛んでいるだろうか。

 助走無しでこれは凄いな、明日にでもオリンピック選手になれる。


「タクミさんに比べたらまだまだっすけど、ここまで飛べる様になりました! このやり方って使い勝手がいいっすよね!」


 頭を掻きながらチャラ男が戻ってくる。

 俺が適当に言った事を真に受けてしまったか……。

 でもそれでここまでの事をしてしまうこの子は本当に凄いと思う。


「見ただけでそこまで出来るのは凄いよ」


「マジっすか!? あざっす! 護衛の合間に色々教えてくれると嬉しいっす!」


「ま、まあ、機会があったらね……」


 チャラ男に懐かれた。

 女性に生まれ変わって出直して来て欲しい。


「よろしくです! あっ、あそこが集合場所です!」


 視線の先には馬車が20台程と人が結構な数で集まっている。そこそこの規模で移動するんだな。


「それじゃあ俺も今回の依頼には仲間がいるんで、合流しときますね!」


「ああ、案内ありがとう」


「うっす! 失礼しまっす!」


 そう言ってチャラ男は商隊に向かって走っていった。なんか敬ってんだか気安いのか、チグハグな言葉使いだったな。


『あれはあれで相手をするのは疲れるの』


「まったくもって同意せざるおえない」


 あのいかにもな集まりが護衛の冒険者達かな? あっ、マックさんもいる。


「おっ、ようやく来たな! もう少しで出るぞ」


「マックさんも依頼に付くんですか?」


 ギルドの教官じゃなかったっけ?


「ああ、今回は護館の奴らがいないからな、ギルドの方から人を増やしたんだ。俺がまとめ役になるからよろしくな!」


「マックさんなら安心ですね。増やしたって、護衛は何人いるんです?」


「タクミ達を合わせて22だな。いつもならギルドから15、護館からは5くらいの割合で護衛に着いてる」


 今回は21対1か、頭数は揃ったって感じだ。


「悔しいが獣人族がいないと商人達が不安になるからな、タクミ達が来てくれて助かったぜ」


 ニカッと笑うマック。そんなマックさんに商隊側の方から人が近づいて来た。


「マック、そろそろ出るが……おおっ、君がタクミ君だね、噂には聞いてるよ。今回はよろしく頼む」


 白髪混じりの髭が握手を求めて来た。商隊のお偉いさんかな?


「ええ、よろしくお願いします」


「タクミ、今回の商隊のリーダーでボロノフだ」


 やっぱりそうだった。なんか貫禄があるね。


「先に言う奴があるか。……まあいい、ボロノフ・スズキだ。色々と話を聞きたいが、隊の面子を待たせていてね、もう出発しようと思うんだが構わないかね?」


「ええ、こっちは大丈夫です。マックさん、配置はどうすれば? できればシロコと一緒にしてもらえると助かるんですけど」


 寧ろ一緒じゃないと色々と無理だ。


「いや、その姉ちゃんと組める奴なんていないだろ。 道中は馬車で移動だ、心配しなくても一緒の馬車になるだろ」


「分かりました」


「よし、それじゃあ行くか!」


 馬車に乗るなんて初めてだな。シロコが大人しくしてくれればいいけど……。


読んでいただいてありがとうございます。

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