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5.全裸じゃなくなる


『……随分とチグハグな格好だの』


「まぁ、サイズが合った物を適当に着たもんで……」


 そこにはブーツを履き、カラフルなインナーとローブを纏い、革のベルトに剣を携えた全裸ではなくなった男がいた。

 鎧みたいなのもあったが着け方が分からんかった。


「剣を装備してるが、お主もシンちゃん同様剣の達人なのか?」


 そういや俺の爺さんは剣道だか居合道だかの全日本大会の常連と聞いた事があったな。


「いや、ズボンがズレない様にベルトっぽいのを引っ張り出したら、剣もくっついてきたからそのまま着けただけです」


 まあちょっと格好良かったし?

 やっぱり剣って男心擽ぐるよね。

 でもさっきからシロコがガブガブと鞘を引っ張って遊んでいるからいまいち格好付かない。


 やめぃ、俺も尻尾引っ張るぞ。


『そ、そうか。 ああ、別に敬語とか使わずとも良い、シンちゃんともフレンドリィな間柄じゃったしの。そうじゃ、シンちゃんに免じて我の事は親愛を込めてタマちゃんと呼ぶ事を許そう』


 こんな3階建の家程の大きさのドラゴンをタマちゃん呼びとかどんな無理ゲー?


「あ、ああ分かった。 それにしても随分と爺さんと仲が良かったみたいだな?」


『そりゃもう最強コンビじゃったぞ?シンちゃんを我の背に乗せて飛とんでは何万もの軍勢を蹴散らせたものじゃ』


「……ソウデスカ」


 随分とアグレッシブな爺さんだったんだな…。

 それにしても爺さんとの話になると凄く楽しそうに話すな、本当に良い関係だった様だ。


『クカカカ、懐かしいのぅ。もう一度大空を自由に飛び回りたいのぅ…』


「……やっぱりこの封印からの脱出は難しいのか?」


『そうじゃな。この結界を維持している核に、魔族とエルフ、それに獣人の魔力を同時に流し込めば破壊出来るかもしれんの。

それもかなりの量が必要じゃ』


「3人の魔法使いが必要なのか……」


『それにこの封印は、当時その種族でも高位の魔法の使い手じゃった。 そのクラスが封印を解くために集まるとは考えられんの』


 基本的にあいつらは仲が悪い、とも付け加えられた。


「……そうか」


 せっかく良くしてくれたのにな、何かしてあげられないだろうか。


『そう悲観してくれるな、気持ちは嬉しいがの。 それに忘れとらゃせんか?この結界が解けたら我は成仏してしまう』


 そうだった。


『それにしても久し振りに会う人がまさかシンちゃんの孫とはの。長生きはしてみるもんじゃ。いや、死んどるか』


 クカカカカ、と笑う。


 わ、笑えねぇ…。


『確かこの世界に来て間もないと言っておったのう? どれ、獣人が使う術は簡単なものしか知らぬが、いくつかは教えられる。力の使い方を教えてやろう』


「えっ? 俺って獣人属性なの?」


『うぬ、お主が着る物を取りに行く時、背中に獣人族の刻印が出ておるのが見えたぞ。お主は獣人の魔力に染まった様だの、それもかなりの力じゃ。さすがシンちゃんの孫じゃの』


 俺にそんな力が……。

 いや、それより俺の背中にそんなものが?

 銭湯に行けなくなるやん!


「あ、そういや俺の掌にも変なマークが出てんだけど?」


 両手の変なマークを見せる。


『ブフゥ!?』


 ドラゴンが吹き出した。


『カカカカ!面白い!!属性の混ざった人など初めて見るぞ!!』


 ……めっちゃ笑うてなはる。


「…なんかまずいか?」


 いきなり爆発とかしない?


『ククク、初めて見る事じゃが、まぁその様子じゃと問題なかろう。属性うんぬんはあくまで魔力の種類で、その刻印は防衛と行使のための装置の様なものじゃ。身体を蝕む様なことはあるまいて』


「はぁ~、それなら良かった……あっ!もしかしてシロコもなんか影響が出てるのか!?」


 すぐさまシロコの前足を持ち上げて肉球を確かめる。


 こら、これは遊んでるんじゃない、顔を舐めるな!


「……うーん、何も出てないみたいだな」


 背中も毛を掻き分けて確認したが何もなさそうだ。


『どれ、我に近づけてみい』


「え? わ、分かった」


 シロコを後ろから持ち上げてタマさんの顔の前に差し出す。


 ……これ、ドラゴンに餌を与えてるみたいだ。

 餌の方は尻尾ブンブンでご機嫌だな。

 あ、タマさんがシロコを舐めた。

 食べないで下さい!


『……フム、なんの属性も感じられん。上手く庇ったのか染まったのはお主だけの様じゃの。

まっさらで、ただただ強大な魔力を感じる、お主同様、竜種にも引けを取らん力の量じゃ。

 お主の世界の住人は生命力に溢れとるの』


 爺さん、俺が特別ってわけじゃなかったよ。

 俺の力は犬並みか……。


『これならば…それに……』


 タマさんが何か考えている。


「どうかした『ちょっと失礼』おうわ!」


 ドラゴンに舐められた。


「た、食べないで下さい!」


『阿保ぅ、狼を舐めたのをさっき見たであろう。 ……ふむ、やはりのう。

お主がここに飛ばされて来たのは偶然では無いのかもしれんの。 この結界と同じ、三種の魔力が混ざり合っておる』


「え?」


『引き寄せられたのかどうかは分からぬが、この結界の力と同種の物じゃ』


 そのせいで雪山にポイですか?


『それにお主一人でもこの結界を壊すことが出来ると言う事でもある』


「おお! あ、でもそれじゃあ……」


 タマさん成仏してまう。


『そこで相談じゃ、そこの狼…シロコを貸してもらえぬか?』


「……え?」



 シロコ食べられてしまうん?


読んでいただいてありがとうございます。

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