49.図書館
バスケットにお菓子をたくさん入れてもらってニッコニコなシロコと街を歩く。
「さて、これでお互いに冒険者になった訳だ。これで他の国にも怪しまれず入れる様になったな」
『何処でも好きに行けば良いものを、タクミはいちいち面倒な手を取るの』
「タマちゃん、人には建て前って物が必要なんですよ……」
『そうか、人では無い我とシロコなら必要いという訳じゃな』
揚げ足を取られた。
「とりあえず現状の世界情勢は何となく分かった。後は爺さんが調べてたっていう帰還情報を知りたいけど……」
チラッチラッとタマちゃんを見る。
シロコと目が合い、抱き付かれる。お前だけどお前じゃない。
『じゃから我は何も知らんと言うておろう、たまにシンちゃんの遺跡巡りに付き合ったぐらいじゃ』
「だよなぁ……っておい!? 遺跡巡りなんて初めて聞いたぞ!」
それって絶対爺さんが調べてた案件だろ!
『ん? そうだったかの? その過程であの温泉を見つけたと言わなかったか?』
「遺跡の事は聞いてないダス……」
今明かされる真実……今から戻るか?
「ちなみにあの場所ってなんかあったりする?」
『いや、無駄足だったけど温泉が見つかってラッキー、と言っておったな』
あの雪山に戻る事はしなくてすみそうだ。てかいい歳こいてラッキーって……。
「それは良かった……のかな? まあそれはいいや、後爺さんと巡った遺跡の場所って覚えてる?」
『覚えておるが、我と行った場所は何時も何も無かったと言うておったぞ』
「そうなるとタマちゃんと会う前の情報が欲しいが、知ってる人なんていないだろうし……」
どっかに爺さんの情報が無いか……あっ、そういえば! ちょっと離れろシロコ。
「そう言えばギルドで貰った……あったあった」
抱き着いたままのシロコを引っ剥がし、冒険者登録した時にギルドがくれた街の地図をバスケットから取り出して広げる。
「タマちゃん、この中に…………はぁ、1個だけだぞ?」
「やった!」
バスケットを漁ったからシロコが期待した目で俺を見るので、お菓子を1つ取り出して渡してやる。あんなに食ってまだ足りないか。
「それでタマちゃん、この地図の中に図書館とか無い?」
モグモグしてるシロコに向かって地図を広げる。
『ふむ……ここじゃな。シロコ、指してやれい』
「モガッ」
シロコが食べカスの着いた指で、地図の一ヶ所を指差す。淑女の道は遥か彼方だ。
「ここか……以外と距離あるな」
『そこで何を調べるのつもりじゃ?』
「爺さんは戦争を終わらせた立役者だろ? 何か歴史的資料がありそうじゃないか」
『二千年前の資料があるとは思えんがの』
「ダメ元でもいいさ、タマちゃんも封印されてからの二千年が気になったりしない?」
『せんの』
やだ、このドラゴン、他種族の事なんかまったく気にも止めてない。
「それでも頼むよ、協力してくれ」
俺じゃまともに字が読めん。てかタマちゃんが読める事の方が不思議だ。
『……仕方ないの』
ありがとう、タマえもん。
…
……
「あれか、中々立派な建物だな」
なんか学校みたいだ。結構人の出入りもある。
「一般人も入れるみたいだな。俺たちも行ってみよう」
「わん!」
「館内はお静かに、だからな?」
…
シロコを連れて図書館内に入ると、中も結構広くて、本もかなり揃ってる。こりゃ目当ての本を探すだけでかなり時間がかかりそうだ。
……やっぱりこういうところはみんな静かにしてるね、逆に叫んでみたくなる。
『それでどうするのじゃ?』
「そうだな……とりあえず本棚に沿って歩くから、タマちゃんは爺さんの名前が書いてある本とかあったら教えてくれ」
『人族がシンちゃんの事を書くとは思えんがの。まあ良い、付きおうてやる』
シロコと手を繋ぎ、図書館内を散策する。先ずは人族の歴史かなんかが分かるコーナーを見つけねば。
読んでいただいてありがとうございます。




