41.茶耳とカッパ、怒られる
…
……
宿の部屋なう。
「今日も色々ありすぎたなあ……」
ギルドを出るまで…いや、出た後も街の人にジロジロ見られてた。
「……ゲフッ」
「コイツは……宿の夕食もしっかり食いやがって。タマちゃんも何とか言ってくれよ」
『仕方あるまい、シロコが欲しがるのじゃからの』
シロコ(人)は両手両足を伸ばして、だらしなくベッドに寝転がっている。中々危険なシチュエーションだな、ゲップで雰囲気が台無しだけど。
「そうだ、冒険者登録の話だけど、どう思う?」
『どう思うとはなんじゃ? 好きにすれば良かろう』
「相談のしがいがねえ……」
『我らを害する様なことがあれば、吹き飛ばしてしまえば良いことじゃ』
だからなんでそんな力技ばっかりなんだ、このドラゴンは。
「まあ、まだ手持ちはあるけど、シロコの食費の足しになるなら、前向きに検討しとこうかと思ってな。待遇も俺達の行動を縛る様な事もなさそうだし」
その方が冒険者達から、他の国とかの情報も集めやすそうだ。
「……スピィ」
「あっ、コイツこのまま寝やがった」
人型のまま、両手両足ピーンな状態で寝るとか、お前の野性は何処に行った。
『今日は良う食うたからのう』
「俺の寝る場所が無いじゃないか……あっ、俺がもう一つのベッドで寝ればいいか」
ベッドが広く使えるし、なんの問題も無い。
「起きた時にシロコが拗ねるぞ、我が解いてやる」
みるみる内に犬に戻るシロコ(タマ)。
そういやシロコが寝てる時は、タマちゃんが自由に出来るんでしたね……。
・
ー獣人族護館ー
「タジル!! それでお前はおめおめと逃げ帰ってきたと言うのか!!!」
「……すみません…父様」
「数日後に本国から視察が来るというのに、1対1で人族に負けだと!? お前は俺を破滅させる気なのか!?」
「…………」
「この事が視察団に知れたら、確実に国に戻されるぞ!! そして国に帰ってもつまはじきものだ!!!」
「…………」
「ガガン! お前が付いていながら何をやったいる!! それと何だその頭は!?」
「申し開きもございません……」
「クソッ! クソッ!! 一体どうすれば……今回の使節団はうちから出す王子の嫁候補の監査も兼ねているんだ! そして率いてくるのは宰相のゲンホルド様だぞ! 国に戻されるだけじゃすまないかも知れん!!」
「わ、私の護衛隊を率いて強襲するというのは……」
「お前は分かってて言っているのか!? そんな無様な真似を知られたら尻尾を切られるぞ!!」
「も、申し訳ありません……」
「ただでさえ王子の嫁取りが決まらず、宰相がピリピリしているという噂が立っているというのに……。お前の隊から出す候補が、目にもかからなかったら命すらないぞ!!」
「そ、その事ですが、件の獣人の女を差し出せばお眼鏡に叶うかと……」
「はっ、道具を使わなければ闘えない人族に靡く女がか?」
「はい、実力の一端を見ましたが。うちの隊から出す候補よりは確実に上かと」
「……タジル、それは本当か?」
「は、はい! 彼女は今まで見た獣人の女性の中では、群を抜いた強さだと思います」
「それ程か……何とか連れ出す事が出来れば……くそっ!」
「やはり人族を消すしか……」
「騙し討ちでか? それとも人族が裸の時に闘いを挑むのか? 誇り高い獣人族が? その方法を取った時点で俺が殺すぞ」
「し、失礼しました……」
「何とかしてその女と接触する。王子との婚約を餌にすれば、案外こちらに靡くかもしれん、王子の強さは有名だからな」
「り、了解しました。すぐに隊を集めます」
「タジル! お前も獣人族なら自分で責任を取れ!!」
「はい……」
読んでいただいてありがとうございます。
短くてすみませぬ。し、仕事が……。




