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35.エルフ追加


 街に着くなり茶耳獣人に絡まれた。

 

 そして絡んできた茶耳が、別の人物に絡まれる。


「なんだお前は……ってエルフが何故ここにいる!?」


「何故って、ここはオーサカよ? エルフも魔族も、いるに決まってるじゃない」


 ねえ? と隣のモグモグしている女性に視線を送る。

 が、モグモグしてる人は、我関せずとモグモグを続けている。 あ、今ちょっとイラっとしたな?


「グッ…、これは獣人族の問題だ! エルフが口を出すな!」


「あら? 先程から見てた限り、そこの人族と獣人族が仲良く歩いてるところを、引き裂こうとしている様にしか見えなかったけど?」


「お、俺はそこの人族から彼女を解放しようとしてただけだ!!」


「それって普通逆じゃ無いかしら? 強い強い、獣人族さん?」


「なっ! 貴様っ……!」


 完全に俺とシロコは蚊帳の外ですな。もう行っていいですかね?

 あ、なんか茶耳君の後ろの黒耳さんが、気の強い女性の顔を見て何か驚いている。なんか慌てて茶耳君に耳打ちし始めた。


「はっ!? なんで王族が……くそ! 行くぞ!!」


 おや、なんか茶耳君が急に踵を返してしまった……そこはもっと根性見せてくれないと、とてもとてもシロコはやれんなあ。 はなからやる気は無いが。


「変なのに絡まれて、災難だったわね」


「ええ、助けていただいて、ありがとうございます」


 こんな女子校生みたいな子に気を使われてしまった……、連れがナンパされるのを助けられた挙句、慰められるなんて、お兄さんちょっとショック。

 それにしてもこれがエルフ族か、確かによく見たら耳が少し長く、肌も白い。まさにエルフ!って感じだ。


「…………」


 そのエルフさんが俺の顔を見つめている。なんだ?もしかして惚れられちゃった?


「……俺の顔に何か付いてます?」


「目と鼻と口が付いてるわね」


「それは安心しました」


 なんだこのやりとり。


「……ねえ貴方、私と何処かであった事ないかしら?」


「俺は初めてお会いしたと思いますけど……」


 一昔前のナンパのセリフだな、やっぱりモテる男は辛いね。


「そうよね……まあいいわ。貴方もそんな美人を連れてるなら、少しは気をつけなさい」


「ええ、御忠告ありがとうございます。シロコも……シロコ?」


 シロコが俺の横で何かを見つめて……あの青いお姉さんが食べてる串焼きか……。

 ちょっと我慢させすぎてしまったようだ。


「モグモグ…」


 じーー。


「モグ……」


 じーー。


「……1本どうぞ」


 視線に耐えきれなくなったのか、お姉さんが手持ちの串焼きを差し出した。シロコはその串焼きを見るなり繋いでいる俺の手をギュッとにぎ…イタイイタイ。


「す、すみません。ありがとうございます…」


 差し出された串焼きを俺が受け取ってシロコに渡してやる。受け取るなり齧り付くシロコ。

 せっかくの美人が台無しだな。


「……お互いに変わった人を連れてるわね」


「ははは……」


 苦笑いしか出ねえや。


「まあいいわ、それじゃ失礼するわね」


「ええ、助かりました。それでは」


 軽く手を挙げて、エルフと別れる。

 ──あっ、名前聞くの忘れた……まあいいか、もう会うこともあるまい。


 とにかく宿を探そう。まったく、街に入るなり、とんだトラブルに巻き込まれたもんだ。





「随分と変わった2人組だったわね…」


「そうですね、人族と獣人族が手を繋いでるところなんて初めて見ましたよ。…モグモグ」


「珍しいわね、シリィが食べ物をあげるなんて」


「そうですね。ですから、追加でもう10本ほど買ってきます」


「あげたのは1本だけじゃない! …まあいいわ、それにしてもこの街でも有力な情報は集まらなかったから、次はもっと北に向かうわよ!」


「えー、行くならもう少し暖かくなってからにしましょうよ」


「何言ってるのよ! 最近になって魔族も獣人族もこの街に人を送り込んでいたらしいわ。これってまだあの人間兵器を見つけられてないのよ! 私たちが先に手に入れないと!!」


「あの素っ裸の状態で、ここより北に飛ばされてたら、1日で死んじゃうと思いますけどねー」


「それならそうという確信が欲しいわね、明日にはもう出るわよ!」


「はあ……分かりました。……モグモグ」


読んでいただいてありがとうございます。

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