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30.タマごまかす


 ……

 お茶と菓子を乗せたテーブルを挟んで、向かいにアーニャ、シロコ(人)は俺の後ろに待機している。

 アーニャを見つめるのも忘れない。


「あ、あの……」


「うん、説明するからちょっと待ってね」


「は、はい……」


 後ろに向いて小声でタマちゃんに相談する。


(さて、どうしよう?)


『どうしようも何も、そのままシロコだと説明すれば良かろう』


(あー、まぁ別に隠してるわけじゃなかったな……)


 でも本当の事を説明すると、色々面倒な事になりそうなんだよな。特に魔物が村に来た理由とか……。


(……やっぱなんか上手い言い訳とかない?)


 助けてタマえもん。


『……はぁ、シロコ、体を貸せ』

「やっ!」


 ちょっとシロコさん!?


『そういうな、シロコが思うてる様な事にはせんようにしてやる』


「……わか…た」


 お、なんか良く分からないが、タマちゃんがなんとかしてくれるらしい。

 やっぱここぞという時に頼れるお人…ドラゴンやで。


「ふむ、アーニャと言ったの?」


 お、もういくのか?

 急に大人びた感じのシロコ(タマ)が、立ち上がってアーニャに話しかける。


 ここはタマちゃんに任せて、俺はお茶を頂くとしよう。


「は、はい!そ、それであなたは……」


「我はシロコじゃ」


 いきなりぶっちゃけた。


「え!?で、でも……」


「よく見ておくが良い」


 タマちゃんがそう言うと、アーニャの前でシロコ(犬)に変化した。

 みるみる内に着ぐるみを被ったまま、犬モードに変わってゆく。


「え、えええ!?」


 まあ、そりゃ驚くわな……あ、人型に戻った。


「見ての通り、我は少し特別な獣人での」


「そ、そうなんですか……お、狼に変身できる獣人族の方なんて、初めて見ました……」


「あまり吹聴してくれるな?我とタクミは今、愛の逃避行中の身であるからの」


「はい、…え!?」

「ブフッ」


 タマえもん?いきなり何を言い出すんですか?

 びっくりしてお茶を吹き出すところだった。


「人族のハーフであるタクミと、特別な獣人である我との仲を認めぬ輩が多くての、こうしてお互いの国を飛び出して、旅をしとると言うわけじゃ」


 なんですか、その昔のメロドラマみたいな設定は。

 こんな出来の悪いロミオとジュリエットみたいな設定で騙せ──


「そ、そうだったんですか……」


 騙せたわ。


「うむ、我の狼の姿はあまり知られておらぬのでの、普段は狼の姿でおる。そして夜に戻って、タクミと愛を語らっておるというわけじゃ」


 そう言いながらシロコ(タマ)が、俺を背後から抱きしめてきた。

 え?何これ?めっちゃドキドキする!


「あ、だから……」


「お主には飯を作ってくれて、感謝はしとるがの」


 ん?なんか2人で通じ合ってない?一体なんの話?

 あ、アーニャが俯いちゃった。


「…………」


「あ、アーニャ?」


 なんかアーニャが下を向いて動かなくなってもうた。


「……わ」


「わ?」


「分かりました!!私、シロコさんの事応援します!!」


 うおぅ、びっくりした。

 急に顔を上げたかと思うと、いきなりそんな事を言い出した。


「そうして貰えると助かるのう」


「はい!あの、それでさっきから気になったてたんですけど、シロコさんが今着てるのって……その毛皮だけですか?」


「国から出る時は色々大変であったからの、持つものも持てずにここまできてしもうたのじゃ」


「大変だったんですね……分かりました!私やお母さんのお古で良ければ差し上げます!」


「い、いや、そこまでして貰わなくても……」


「駄目ですよ!タクミさんもシロコさんにずっとこんな格好させてちゃ!!」


「は、はい」


 怒られてしまった。


「それはありがたいのう」


 このドラゴンはノリノリだな。


「こうしちゃいられません!それじゃあ私は色々とやる事が出来たので、今夜は失礼しますね!」


「うむ、なるべく我の事は伏して貰えるとありがたいの」


「はい、もちろんです!それじゃお休みなさい!」


「お、おやすみなさい……」


 バタンッ、タタタタっと挨拶もそこそこに足早に出て行ってしまった。


「うむ、これで良かろう?」


 満足気に言うね。ん?俺に言ってるんだよな?


「まあ……上手く誤魔化せたかゴッフゥ!」


「タクミ!」


 シロコに変わったのか……。

 ノーモーションで突っ込むのはやめてくれませんかね。


『シロコは言葉の練習の続きをご所望じゃ、付き合ってやれ』


「この流れでかよ……」


『娘のせいで中断させられたのが気に入らんかったのじゃろう』


「ええ……」


「タクミ!」


 分かった、分かったから、その際どい格好でグリグリするな。


 色々と誤解だらけになってしまったが、──まあなるようになるしかないか……。

読んでいただいてありがとうございます。

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