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22.僕の考えた強い魔法2


 ……

 朝食も美味しかったでございます。

 メインは芋なんだけど、この世界に来たから肉しか食っていなかったので、それ以外が食べれるだけで涙が出る。

 シロコも同じ物をお皿に出して食べさせている。

 犬に味の濃いもの……大して濃くはなかったけど、タマちゃんがむしろ食べさせた方が良いというので、とりあえずそのまま食べさせる。

 まあ、犬も肉だけの食生活に比べればマシかなと思う。


 食休み。

 シロコは椅子に座っている俺の膝の上に顎を乗せている、問答無用で撫でろのサインだ。

 村長が目の前にいるし、シロコをナデナデしながら今後の事を聞いとく。



「村長さん、これからしばらく村の防衛をお手伝いしますけど、村の人達はどの様に活動してるんですか?」


「そうですね、基本的には村から山の方向の土地に少量の臭毒、匂いの強い毒を巻いて村に来ない様にしてます」


 そういやゴドルさんが虎さんに投げてたけど、それかな?


「まだ冬が終わる前は、村に下りてくる魔物は少ないのでそれで充分だったのですが…なぜか今年は2ヶ月ほど魔物が下りてくる時期が早いのです」


「そ、そうなんですか」


「しかも吹雪虎までが下りて来るなんて……。


 あの魔物は温川を好むので、本当は冬がおわってもほとんど山から出ない筈なんですが」


「そ、それは災難でしたね……」


 ごめんなさい。


『ふん、さっさと滅ぼしてしまえば良かろうに』


 無茶な事言ってやるなよ……。


「冬が終える頃には他の村から腕利きを寄越してもらい、付近の見廻りや村の仕事を手伝って貰ってます」


「魔物が来た時はどうやって知らせるんですか?」


「ああ、村の山側に櫓があるんです。冬が終わる頃に交代で見張りを置いて、魔物が来たら鐘を鳴らして知らせます」


 鐘の鳴らし方で魔物の情報を伝えているそうだ。

 基本的に待ちの姿勢なんだな。


「そういえばゴドルさん達、村の防衛をしていた人達の治療は進んでますか?」


「ええ、持って来ていただいた薬草のお陰で薬水を作ることが出来ました、後程薬草の料金をお渡しします」


 お、ラッキー。路銀なんか持ってないので、ここはありがたく頂戴しとこう。

 だが俺は紳士なのであまりガツガツしない。


「薬草は村長の娘さんに頼まれて持って来たものですので、お気持ちだけで結構ですよ?」


「いえいえとんでもない!アーニャを連れて来てくれただけでなく、薬草まで持ってきていただいたんです!お受け取りください!!」


「そうですか、では俺とシロコの食事代を差し引いて、余ったらそれを頂戴させていただくという事で構いません」


「そんな、食事代など気になさらずともよろしいのですが……」


「あまり過敏にもてなされると肩が凝っちゃいますよ」


 ハッハッハッと爽やかナイスガイを演出。


「そうですか……ではお言葉に甘えささていただきます」


 うし、路銀ゲッツ。



「話を戻しますか、じゃあ午前中に俺とシロコが、鐘が聞こえる距離までの山の中を見廻ります、午後は村に戻って見張りや村の仕事を手伝いましょう」


「山の中を1人で見廻るんですか!?危険ですよ!」


「いえいえ、シロコもいますし、コイツも以外と強いんですよ」


 っていうか俺より強い。


「そ、そうなんですか?」


「ええ、昨日の虎程度なら何匹いても問題ありません」


「そ、それでしたら安心ですね……」


 村長さんが冷や汗を流す。

 あ、やっちまった、あまりシロコの力は前に出さない方向にしてたのに、つい言ってしもうた、後でフォローしとかないと。


「え、ええ、ですので鐘を鳴らす人だけ用意して下さい」


「そうしていただけると村の守りに回す人が少なくなって助かりますが…本当によろしいのですか?」


「はい、怪我人の治療に専念して下さい」


「助かります、本当にありがとうございます……

 ひと月程で他の村からの助けが来れそうなので、それまではよろしくお願いします」


 村長さんが深々と頭を下げる。


「そうなんですね、分かりました」


 良し、これでこっそり山に魔物を追いやる事が出来るな。

 早速シロコを連れて…このやろう、俺の膝に顎乗せたまま寝てやがる。



 ……

「というわけで山に来たわけだが」


『1人で何を言うておる』

「ワン!」


「結構木があるから炎はまずいかな?」


『それほど密集して生えておらんから問題ないじゃろ。どれ、1度ブレスを上に放っておこうか』


 ヂヂヂヂと口から電気が漏れ出す。


「まったまった、それなんだけど、シロコが村の人達から、朝の娘さんみたいに怯えられたくないんだよな」


『なんじゃ、そんなもの勝手に畏怖させておけば良かろう』


「いや、あまり怖がられるのも嫌なんだよ」


『我儘じゃのう』


「まあ炎はもう見られちゃってるから、村では練習を兼ねて俺がメインで魔法を使うよ」


『……ふむ、確かにお主にはまだ修行が必要じゃの、精進せい』


「ワン!」


「はいはい、んじゃそういう事で。まずはあっちの方向から行ってみるか」


 ……

 しばらく村の近くの山をビョンビョン飛んで見廻った、以外とウサギっぽいのや鹿っぽいのがいる。


「村に入ったらやばそうなやつはとくにいないな、そろそろ戻る……おっ」


 前に食べたでっかい猪がおる、味は虎よりも美味かったな。


 これは新しい技を試すチャンスだ。


 猪から50メートルほど離れた場所に着地する。


「ちょっとあの猪を燃やさずに狩ろうと思うんだけど」


『ほう、なんぞ炎以外の方法でも思いついたのか?』


「ああ、今度は獣人魔法とエルフ魔法の合わせ技で」


『それは楽しみじゃな、見せてもらおう』


「まあ炎の竜巻と一緒で単純なやつだけどな」


 そういうと近くに落ちていたソフトボール大の石を持ち、魔力を右手の刻印でコネコネする、一緒に身体強化、右手を重点的に強化する。


「いや、シロコさん?これはお前のために投げるオモチャじゃないからな?」


 横で尻尾ブンブン、期待の眼差しで俺を見られても困る。


「……よし、充分練れたかな」


 俺はあまりボールを投げるのは上手くない、身体強化して投げた日には、どこに飛んでいってしまうか分かったもんじゃない。

 そこで制御のしやすい風の魔法で、威力の上乗せと、狙いの補助をする。

 1度温泉の川で遊びがてら水切している時に、風の魔法を使ってみたら面白い様に狙いと速度が上がったので、今回は身体強化の合体技だ。


「せぇー、のっと!」

 ボヒュッ!パァンッ!!!


 ……ドサッ。


「……うわぁ」

『ほぅ』


 うん、ちゃんと頭に命中した、猪も倒れている。

 だけどまさか石が砕け散るとは思わなかった…キャッチボールには向かないなこれ。

 


 近付いて見てみる。

 これ、完全に頭蓋骨粉砕してるな…。


『中々のものじゃったぞ、炎の竜巻といい、魔法の重ねとは見ていて面白いの』


「予想以上の効果に本人が一番ビックリしてるよ……」


『して、コイツはどうするのじゃ?』


「あ、持って帰る時の事は考えてなかったわ」


 牛ぐらいの大きさだし、引きずっていけないこともないか?

 いや、あまり人間離れした行動はしない方がいいな、今更だけど……。

 あまり離れてないし、村に戻ってロープと人手を借りよう。


「とりあえず村に戻ってロープとか借りるよ」


『村まで放り投げて運べば良かろうに』


「それ、確実に村人全員に引かれるから……」


 ……

 猪も村の人にとても感謝された、この時期は狩りに行ける人数が足りないので、あまり食卓に肉が並ばないそうだ。

 虎さんを村に寄付する時に、ゴドルさんがとても感謝していたのも納得だ。

 おかげで今夜の食事も、肉まみれになってしまったが……。



読んでいただいてありがとうございます。

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