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2.雪山全裸


 目を開けたら雪山でした……。


 俺全裸。


「いやあぁぁ! 何これ!? 寒い寒い寒い!」


 変な集団に囲まれたと思ったら今度は雪山?

 やっぱこれ夢?夢だよね?!

 全裸なのは服を全部洗っちゃってた俺が悪いけど!そんなタイミングでこれは酷くない!?


「ワン!ワンワン!」


「あ、ちょっ、シロコ!」


 初めて見るはずの雪なのに、サモエドの血がそうさせるのか。シロコのテンションはMAXだ。


 ……おーおー、はしゃいどるな。


 唯一のカイロが俺を中心に走り回っている。

 そ、側にいてください……。


「つかマジやばい、風は無いけどこんなん10分で"凍った全裸の男"が出来上がってまう」


 周りを見てみると山、山、山しかない……。

 カマクラを作る?

 そんなんやってる間に死にますがな。


「と、とにかくシロコを」


 カイロ、僕のカイロは何処ですか!?


「ワン! ワン!!」


 少し離れたところでシロコが俺を見ながら吠えている。

 幸い積もってる雪の量は足首の上あたりなので歩けないこともない。


「あぁぁ、足が冷たいぃぃ」


 とにかくカイロに抱きつかなくては。

 小走りで近づく、そんなに雪が楽しいのか?お前なんかすっごい目キラキラしてんな!?



「……洞窟?」


「ハッハッハッ」


 天然カイロに近づくと、すぐ横に大きな穴が開いていた。

 さっきは死角で見えなかったようだ。


「で、でかしたシロコ!」


 さっきの広場に比べれば幾分かマシだろう。

 冬眠中の熊とかいようが関係ない、とりあえず中に入らせていただきます。


 あ、カイロさん、あなたもですよ。



+++



 でっかいカイロを抱き上げながら洞窟内を進む。


「なんでうっすら明るいんだ?」

「ハッハッハッ」


 何故か洞窟内は明るかった。

 すぐ顔の横にいる天然カイロさんは、大きくなってからはあまり抱っこしてもらえてなかったからなのか、ご機嫌だ。


 30mほど奥に進むと明らかに人工物の石柱が道の両端に立てられているのが見えた。


「おお! これって山小屋でも神社でも、なんか奥にあるんじゃね!?」


「ワウ!」


「よくやったシロコ!あ、そんな舐めるな! 両手が塞がってて抵抗できない!」

「ハッハッハッ」


 とにかく奥を調べよう、ペロペロ機能が追加されたカイロを抱っこしたまま石柱の間を通る。


 その瞬間空気が、空気そのものが変わった。



「……寒く…ない?」


「ハッハッハッ」


 石柱の間を通り抜けると明らかに外の温度と違うことが分かった。


「た、助かった……」


 よく分からない、まだ何もかも解決としたわけではない、それでもとにかく目の前の凍死という結末は免れたようだ。

 とりあえずこの重い天然カイロを下ろす。


 ……そんな悲しい顔をするな。

 両頬を掴んでよしゃよしゃしてやろう。


「~~~♫」


 尻尾がはち切れんばかりに動いとるな。


 ……それにしてもここは何だ?

 明らかにあの石柱のある境目から気温が変わった。

 片手だけを境目から出してみる。


 ……うん、右手に刺すような冷たさを感じる。


 スーパーなどで使われるエアーカーテンのようなもので外気を遮断してる様子もない。

 少し冷たくなった右の掌を不思議と眺めると何か描かれていた。


「何だこれ?」


 掌には紋章の様な物が刻まれていた。

 なんか中学生ファッションなヘビメタTシャツに描かれているよく分からない文字みたいだな。

 ワタクシもう大学生ですのよ?こういうのは逆にダサいと気付いた立派な大人でしてよ?

 去年までは着てましたが……。


「うん?左手にも何かある……」


 見比べる様に左手を顔の前に広げる。

 左の掌には魔法陣みたいなものが描かれていた。


 どっちも厨二心が擽られるな……。


「おいおい、なんかの呪いか?顔とかにも描かれて無いだろうな?」


 鏡なんてあるわけ無いから分からんな……。

 とにかく奥に山小屋ないしなにか設備が無いか調べるか。


「ほら、行くぞシロコ」


「ワウッ」


「贅沢は言わないから、せめて布の一枚でもありませんかね……」


 人とかいないと思うけど、こんな格好で誰かと遭遇したら通報待ったなしだよな……。



+++



 テクテクと全裸と犬が歩いている。


「……以外と深いな」


 200mくらい歩いたか?

 この洞窟に人の手が入っているなら、いい加減何かしらの人工物があってもいいと思うんだが。

 洞窟内は外の気温と違って寒くないからか所々に植物が生えている。

 誰か通った様な獣道的なものは全く無い。

 人はおろか動物もいる感じがしない。


「さっきは大勢の人に囲まれたのに、今はシロコだけだな」


「ワフ!」


 まぁ他に誰かいても困るんですけどね。


 そんな事を考えていたら奥に続く道が無くなった、行き止まりか?。


「……いや違う、扉みたいのがある!」


 ちょっと小走りで近づく。

 速攻でシロコが俺を追い抜いた。


 いや、かけっこじゃないからな……。

 目の前には明らかに人工物であろう3m程の高さがある扉がある。


「子供の頃にやったRPGのお城の門みたいだな……」


「ハッハッハッ」


 すぐ横のシロコはまた走らないのかと期待の目で俺を見ている。

 いや、走らんからね?


「こんなん動かせるのか?……まあ試さないわけにもいかないか。この先が外でしたってオチだけは勘弁してください!」


 願いを込めて扉に体重を掛ける。


 ……ズズ、ズッ


 おお!少しづつだが動く!。

 より力を込めて扉を押す。

 まあ期待はしてないが、シロコ、お前は手伝わないんだな……。


 ちょうど人1人通れそうな大きさまで開けるとその隙間を縫って扉の奥へと進んだ。


「……なんだここ?」


 中はちょっとした体育館並みの広い空間だった。

 中央には小山がありその周りには草が茂っている。


「……特に祭壇とかあるわけでもなさそうだな」


 まあ、もうちょい調べてみるか。


「キャヒィン、キャヒィン!」

「シロコ!?」


 シロコの悲痛な鳴き声を聞いて慌てて後ろに振り返る。

 するとそこには俺が開けた扉の隙間に腹が挟まって動けなくなった哀れな犬がいた…。


「クゥーン……」


 悲しそうな顔だ。


「はぁ、ちょっと待ってろ」


 隙間を広げるべく今度は逆に扉を引っ張る。


「フヌヌヌヌ。ほれ、もう通れるだろ」


「ワン!」



 挟まっていた隙間から抜けるとお礼と言わんばかりに大きな体でのしかかってくる。

 ああもう、戯れるな戯れるな、分かったから。

 抱っこした時にも思ったが、あの隙間に挟まるとか。デブったか?

 それに最近シロコの愛情表現タックルも受け止め切れない時がある。


 少しダイエットさせるか……。


 シロコの両頬をよしゃよしゃしながらそんな事を考えていると、洞窟内に他者の声が響いた。


『……お主ら、さっきから何をしておる?』


「え?」


読んでいただいてありがとうございます。

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