19.村人たち
「魔族?見た目は人族にしか見えないが…だが炎を使っていたし……」
「ええ、父親が人族でして」
「ああ、そういう事か、初めてハーフの人を見たよ」
「タクミさんとシロコさんは凄いんです!温川に3匹もいた吹雪虎もあっという間に倒しちゃったんです!!」
はっはっはっ、褒めるな褒めるな。
「さっきの魔法を見たから疑う事も無いが……シロコさんと言うのはその狼か?」
「ええ、コイツですよ、俺の相棒でシロコって名前です。ちょっと人見知りなもんでこれは気にしないでください」
絶賛俺の後ろで顔を半分だけ出しているシロコの頭を撫でつつ紹介する。
「そうか…ああ、ここじゃなんだし村に入ってくれ、アーニャちゃんも村長に顔を見せてやるんだ」
「うぅ……お父さん怒ってました?」
「凄く取り乱してたよ、1人で山に行こうとするのを止めるのが大変だった」
「はぃ…ごめんなさい……」
うむ、しっかりと叱られて来なさい。
「あの吹雪虎はどうする?」
「あー、確かに邪魔ですよね?全部燃やしちゃいましょうか?」
「いや、そういう事ではなく、肉も素材もそれなりに価値があるんだが……」
そうなのか、それなら体毛を燃やすのは勿体無かったな。
「それなら差し上げますんで村の方で処分して下さい」
「いいのか!?」
「ええ、こんなの食べきれませんし、持って行くにも嵩張りますから」
「助かる、これで村で頑張ってくれてる若いもんを労うことが出来る、早速人を集めよう、おい!」
そういうと近くにいる男に人を集めて吹雪虎を運ぶよう指示を出していた。
どうもこのゴドルって人がここにいる集団のリーダーっぽいね。
薬草の入ったズタ袋を持って村に向かう、以外と人は住んでそうだな。
「あぁ…怒られる……」
娘さんの足取りが重い。
…
村に入ると1人の女の子が駆け寄ってきた。
「父ちゃん!吹雪虎は!?」
「ナンナ、お前また避難所から抜け出してきたのか……」
「だって今度は吹雪虎が2匹だったって!」
「ああ、もう連絡が行ってるのか。もう大丈夫だ、父ちゃんはちょっと村長の所に行くから、母さんにもそう伝えてくれないか?」
「分かった!あ!アーニャお姉ちゃん!!どこ行ってたの!?みんな心配してたんだよ!!」
「ご、ごめんなさい……」
おお、幼女の剣幕に村長の娘がタジタジだ。
「ほら、そこも含めて今から村長の所に行くんだ」
「むぅ、私も怒ってるんだからね!あ、狼!!白い!!」
随分と忙しい子だ、この村の女性はみんなアグレッシブだね。
「後で説明するから、ほら、早く母さんの所に行きなさい」
「きっとだよ!じゃあ行ってくる!!」
嵐が去って行った。
「……うちの娘がすまない」
「いえいえ、それだけお父さんが心配だったんでしょう」
俺はスルーされたけど気にしない。
「そう言ってもらえると助かる。それじゃあ行くか」
テクテクと筋肉と熊と犬と娘が村の奥に進んで行く。
虎さんを運ぶ人を集めているからなのか、なんか周りが慌ただしいね、手伝った方がいいかな?
「怒られる…怒られる……」
娘さんは薬草の入った袋を抱きかかえながらブツブツ呟いている。
「まあ、そこは素直に叱られときなよ」
「そうだぞ、アーニャちゃんが居なくなって村中大騒ぎだったんだ、薬草を取りに絶対山へ向かってるって」
行動パターンが読まれとる。
「はぃ…おっしゃる通りです……」
「本当に無事で良かった。あ、あそこが村長の家だ」
指された家は他の家より2回り程大きい、さすが村長。
あ、なんか初老の男性が飛び出してきた。
「アーニャ!!」
あれが娘さんのお父さんですか、髪の毛ボッサボサで疲労感が半端無いな。
読んでいただいてありがとうございます。




