13.第一村人発見
見渡す限りの雪原、静寂でなにか神秘的な物すら感じられる。
少し風が吹けばパウダースノーが舞い上がり、陽の光を反射させて虹が生まれる様はここが神の住まう世界ではないかという程の光景だ。
そんな大自然の光景をぶち壊すがごとく、バッタの様にビヨーンビヨーンと移動する2匹がいた。
熊と犬だ。
「ワッハッハ、慣れると面白いな!」
「ワン!ワン!」
『また飛び過ぎて、空中で泣きながら我に助けを求めるでないぞ』
「いや、あれはちょーっと魔力を込め過ぎただけだから…」
一度魔力を込め過ぎて50メートルぐらいの高さに飛んだ時は漏れそうになった。
「お、あそこの山は木が生えてるな」
『ふむ、この辺りから寒さが和らぐ時期がある様じゃの」
「って事は今は冬なのかね」
『ずっと封印されてた我に分かるわけなかろう』
そりゃそうだ。
「あ、表面が凍ってた川がまた流れ出してる。温泉見つけたらそこで休もう」
『うむ』
「ワン!」
お、湯気が出てる場所発見。
……あー、今度も虎さんか、温泉近くになると高確率でいるな。
目に写っているのは三匹だが、多い時は10匹ぐらい付近にいる。
温泉好きなのかね?
近くに着地するとめっちゃ威嚇してくる。
「タマちゃん先生よろしくお願いします!」
「ワン!」
お前じゃない。
『ふぅ……シロコ、上を向け』
「ワフ!」
シロコが顔を上に向けて口を開けると雷が迸る。
バシュウウウゥゥゥン!!
まん丸シロコの完成である。
『ふむ?一匹残っておるの』
温泉地につく度に先客がいるから肉の供給が過多になった。
なので最近はこの方法で散らす事にしている。
今回は逃げ出した虎より一回り大きいやつが残って威嚇を続けているが。
『ふむ、では今日の昼食は新鮮な肉としよう。お主が仕留めるが良い』
「ええ!?先生、無茶言わないでください!!」
スラッシュアックス装備してないよ!
『いい加減その呼び方やめい。ほれ、先日お主が使った"僕が考えた強い魔法"とやらで充分じゃ』
「えぇ…あれ、ネタで考えただけなんだけど」
『そうなのか?中々の物じゃったぞ? ほれ、我が威嚇して時間を稼いでやるからさっさとせい』
そう言うとシロコの口からヂヂヂヂと電気を出しながら虎と向き合う。
うぅ、しょうがない。
頭に被っている熊の頭を外して一度深呼吸する……よし。
体内で魔力を生成して両手の刻印でコネコネする。
これは左手で出す炎だと、時間をかけて魔力を多く込めないとあまり遠くまで行かない。
そこで右手の放出しやすい風の魔力に乗せて飛ばせば効率的じゃね?と考えたのだ。
そんで試したら上手くいった、調子に乗って風の魔力を捻って放出すると炎の竜巻みたいになって逆に笑えた。
そんな感じ。
「よし、いくぞ」
そう言うとシロコが少し横にズレる。
「か~○~は~め~…」
お馴染みのポーズで構える。
「波あぁ!」
男子なら必ずやった事のある構えから勢いよく炎の竜巻が噴き出して虎に襲いかかる。
…
「……やり過ぎたか?」
目の前には身体中の毛が燃えて丸裸になった虎の亡骸が横たわっている。
『その掛け声は必要なのか?』
「いや、両手を合わせて出す技の様式美と言うか何というか」
波○拳とどっちにしようか迷った。
『……まあ良い。これは発動した魔法を混ぜることができるお主だからこそ出来る魔法だの』
「うん?2人いれば出来るんじゃないか?」
タマちゃんを封印していた結界も3つの属性が混ざってたものだったし。
『違うじゃろう?お主の炎と風は3属性混ざった状態の魔力で発動した魔法じゃ』
「ああ、そうか。エルフの属性で出来た風と、魔族の属性で出来た炎は混ざらないのか」
先に属性2つ混ぜちゃうと発動が炎か風かの2択になるから炎の竜巻にはならないと。
そんでタマちゃんを封印していた結界は先に魔力を混ぜてから発動した1択って事か。
ややこしい。
『エルフが炎を容易に出せればエルフ同士で似た事は出来るかも知れんがの、多種族の属性を真似るのは難しいぞ』
出来ないことはなさそうだ。
「あれ?でもタマちゃんは簡単にシロコの身体強化出来てるよな?」
『これは身体強化の魔法ではなく、単に竜種の特性じゃ』
ズルイ、ドラゴンズルイ。
「まあそう言うもんだって事にしとくよ……」
『そんな事よりほれ、シロコが腹を空かせておるぞ』
「ワンッ!」
「はいはい、ワカリマシタヨー」
最近主人が入れ替わってませんかね?
もう慣れた作業だ。
炎で炙り、剣で刮いでポイポイシロコに投げる。
「ほーれ、ほーれ」
「ワッフ!ワッフ!」
最近は一つ一つ放り投げて空中キャッチさせて食べさせるのがマイブームだ。
おお!そのキャッチのポーズはカッコイイぞ!
そんな感じで暫くシロコとイチャイチャしていると第三者に声をかけられた。
「あ、あにょの!少しよろしいでしょうか!?」
「うぇ!?」
急に声をかけられてビックリした顔以外は熊の人間と、お腹が膨れて欠伸をしている犬の前に、
キッとしているが少し怯えた表情の娘さんがいた。
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