12.他の国
エルフの国のとある場所
豪華な部屋の真ん中で右往左往している人物がいる。
「あの人間兵器の居場所はまだ分からないの!?」
「あの日から10日、少なくとも我が国内に現れたという情報はありませんね、モゴモゴ…」
「まずいわね……他の国に取られたら一気に軍事バランスが崩れるわ」
「ゴクン……はぁ、それほどの事なんですか?」
「なによ、シリィも兄様や姉様みたいに特に問題ないって言うの?」
「まぁ人族が巨大な力を持っていたなんてのが眉唾ものですし。…確かにキリアお嬢様の言っていた通りあの場所に人族が現れましたが」
「だーかーらー、あれは人族じゃなくて人族が作り出した兵器なの!歴史が証明してるんだから!」
ずい、と水晶をシリィの前に突き出す。
「我々にはその保存の水晶……でしたっけ?それ、読めませんから…モグモグ」
「ああぁ、もう!誰も事の重大さを理解してくれない!!」
ムキー、と地団駄踏をむ。
「まぁ、今のところ他の国も大して動きが無いみたいですし、あまり重要視されてないんじゃないですか?…モグモグ」
「逆よ!重要だから表立って動いてないだけよ!」
「ゴクン、なるほど」
「……それにしてもあなた、四六時中何かしら食べてるのによく太らないわよね」
「今のマイブームは菓子パンです、まあ体質じゃないですか?」
「あーっもう! じっとしていられない!私も捜索隊に加わるわ!」
「えー」
「なに嫌な顔してるのよ!国の危機なんだからね! とにかく噂でもなんでも情報を集めるのよ!!」
「はぁ、分かりました」
獣人の国のとある場所
「キシラ、キシリ、この辺りにも神獣様の気配は感じられぬか?」
「この辺に変わった魔力の獣はいなーい」
「みんないつもと同じー」
「やはり手当たり次第に魔力感知する方法は無理があるか……」
「モフモフいなーい」
「モフモフしたーい」
「一緒におった人族が余計な事をしてなければ良いが……」
手元にある巻物を見ながら呟く。
「ゲン爺それなに?」
「ゲン爺カビ臭い」
「臭いとか言うでない、これは昔大きな力を携えた神獣様の絵巻じゃ。人族が神獣様の力を利用したというの」
「なにそれヒドイ!」
「なにそれコワイ!」
「じゃから同じ過ちを繰り返さんよう儂らが先に見つけねばならぬのじゃ」
「早く早く!」
「モフモフ!モフモフ!」
・
北の大地のとある場所
熊と犬が猪の様な魔物の遺体の横で火を囲んでいる。
「ヘップシ!」
『シロコは少し生の部分が残ってるほうが好みのようじゃ』
「はいはいワカリマシタヨー、お姫様のお望みのままにー。仕留めたのはシロコ姫ですからねー」
「ワン!」
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