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11.犬→白美人→犬



 …

 ……

 ふと、目が覚める。


 ……薄っすらと空が白んでいる、時刻で言うと午前4時くらいか?

 外で寝てるって事はやっぱり夢じゃなかったか…。


「もう目が覚めたのか?」


 頭の上から声をかけられる。

 そういやタマちゃんに見張りをお願いしていたんだった。


「ああ、充分寝れえええあ!?」


 髪の白い美女が俺の顔を覗き込んでいる。


「落ち着け、我じゃ、タマちゃんじゃ」


 起き上がろうとする俺の頭を、ワシっと両手で固定される。


「は?えっ?タマちゃん?」


「カッカッ、驚いたか?今シロコは寝ておるからの、我が表に出ておる」


 悪戯が成功して嬉しいのかニヤニヤと話す。


「そ、その姿は?」


「ある程度魔力が馴染んだからの、我が表に出ておればこのくらい容易い。そのうちシロコも出来るようになるじゃろ」


 もう犬でもなんでもねぇ……あ、でも耳は犬だ。


「それにこれはシロコの希望の一つでもある」


「えぇ…、俺の知らないとこでどんな話が進んでるんだ」


 頭から手を離してもらい、シロコもといタマちゃんに向かい合う。


「って裸じゃないか!」


 慌てて立ち上がって熊の着ぐるみを被せる。


「なんじゃ、シロコはいつも全裸じゃろう。それに我に会うた当初に全裸であったお主が何を言う」


「それは言わないでおくれやす……」


「それで今日はどうするのじゃ?」


 着ぐるみを被っただけの美女が俺を見上げて話す。

 ちょっとドキドキしてまう。


「あ、ああ。ごほん、魔法の練習してる時に考えてたんだけど、爺さんが過ごしてた国って滅んだんだよな?」


「うむ、昔我を殺しに来た者共から聞いた話ではそうじゃの。

 見逃す代わりに聞いた話でしかないから、正確かどうかは分からん」


「その国があった場所って遠いのか?」


「陸繋ぎではあるがそこそこあるの、我の翼でも1日がかりじゃ」


 基準が分からん。


「とりあえずそこに向かう……って何だよ?」


 あからさまに"えぇ"って嫌な顔をされた。


「我はあまり奴らのことは好かん、恩恵を受けておいてシンちゃんが戦争を終わらせたら色々邪険にしおったしの」


 なんかタマちゃんがプンプン丸だ。


「そうなのか、でもそれも昔の話だろ?特に目指す場所も検討がつかないし、陸続きならとりあえずの目標として、何かあれば変更すればいいさ」


「ふん、まあ良かろう、方角的にもこの川に沿っておる。久方ぶりの外じゃしのんびりと行くか」


「え?歩いて行くのか?」


 そんな事を言っといてなんだが、もう一度極寒コースターに乗るのも気が滅入る。


「ここまでくれば所々に地面が暖かい場所があるから雪も少ない、歩きながら身体強化になれろ」


「ああ、それもあったな……まぁ急ぐ理由も無いし、そうするか」


 食料は…あの虎の肉をいくつか持ってくか。


「む?シロコが起きるの」


 そう言うとみるみるうちに全裸美人の体から見慣れた犬に変化していく。


「お?おぉぉ」


 ありがとう御座います、眼福でした。


「ワン!」


 目が覚めたのシロコは俺を見つけるなりタックルしてくる。

 ふふん、助走の距離がないから受け止めるのは容易だ。


「はいはい、おはようおはよう」


 日課の寝起きよしゃよしゃをしてやる。

 起きる場所が変わっても、今日も元気に尻尾ブンブンだ。


『もう、出るのか?』


 おお、もう聞き慣れた頭に響くタマちゃんの声だ。


「ちょっと待ってくれ、あの虎の肉をいくつか持っていきたい」


『うん?肉など道中で狩れば良かろう。それに入れ物などあるのか?』


 こんな事もあろうかと!

 と、言わんばかりに寒さ対策で腹に仕込んでいたずた袋を取り出す。


「着替える時に使えるかもと思って持ってきた!」


『なんじゃその得意げな顔は…まぁ良い。その袋も多少魔法処理しておるから朽ちておらんかった様じゃの』


「え?、なんか特別な機能とか付いてる?」


 テンプレのアイテムボックス的な!?


『なんじゃそれは?ただ頑丈なだけじゃ』


 がっかり。


 とにかく昨日の吹雪虎の余りをまた魔法で焼いて、剣で刮ぎ、袋に詰める。

 ついでに俺とシロコも朝食としよう、肉オンリーだが……。





「んじゃ行くか、この川に沿って下ればいいんだよな?」


『そうじゃな、ほれ、身体強化せぬか』


 そうだった。


 言われるがままに魔力を巡らせて身体強化する。

 これ電動アシスト着きの一輪車に乗ってる感じなんだよな、ちょっとペダルを漕いだら上半身が置いてかれる。


「まぁ慣れるしかないな……」

「ワン!」


 ヨタヨタした熊と犬の旅が今始まる。


読んでいただいてありがとうございます。

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