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プロローグ 日常 昼休みの一幕
プロローグ
家の斜向かいのブロックに古いお屋敷がある。
学校で噂のホラースポットだ。誰が住んでるかわからないし、月夜にはとても絵になると、女子が騒いでいた。
俺はくだらないと呟いて、黙って睨む女子の群れを通り過ぎて図書館に向った。
「シノ、なんであんな風に言うん?」
いつの間にかついてきていた幼なじみのムギがまとわりついてくる。
「本当のことを言っただけだろうが。」
ぶっきらぼうにそう答えると、ムギは頬を膨らませてリスみたいになりながら怒ってくる。もう何度目だろうか。
図書館のまえに着いても、ムギは俺の手を掴んで説教してくる。
流石にうざいので振り払って中に入る。
この学校の図書館はぼろぼろだが、居心地がいい。黒い机、白熱電球に、独特の雰囲気。一番の理由は、司書の先生だ。
「あら、シノくんにムギちゃん。いらっしゃい。」
「こんにちは、ミス・フラワー。」
彼女はイギリス人だというが、俺たちよりも日本人らしい人間だ。俺たちは彼女に、いろんな面白い話を聞くためにここに来る。