チキ博士の心
プーちゃんは言いました。
「チキ博士、愛とは何だか分かりましたか?」
チキ博士は、今もまだ分からない愛について、正直にプーちゃんに答えました。
「まだ研究中だが、愛するとか、大好きとかってやつはとてもややこしい。目に見えないから観察することもできないし、人によって答えもバラバラだ。これでは1つにまとめることは難しいだろう。」
チキ博士は、自分にも分からないものがあるということが悔しくて、今にも泣きそうです。
「どうして1つにまとめるの?プーにもパパやママやプー子やチキ博士や、他にもたくさんの大好きな人がいるよ。チキ博士にとって奥さんがそうだったように、みんなそれぞれに大切な人がいるんだよ。だから、それだけたくさんの愛が溢れているんだよ。」
「愛が何か分からなければ、皆に説明できないではないか。」
「チキ博士はきっととっても奥さんを大切にしていたんだよね。みんなもそうなんだ。そうやって誰かを笑顔にしようとしたり、一緒にいる時間をかけがえのないものにしたりしているんだ。」
チキ博士の大きな目から涙が溢れてきました。そして、プーちゃんと話したことで、さっきよりももっともっと心が軽くなりました。
そして、自分もかつては愛を知っていたことを思い出しました。愛し愛されていることが、自分にどれほどの力を与えてくれていたことか。
妻が死んでからは、自分を気にかけてくれる人も、話を聞いてくれる人も、「美味しいね。」と言ってくれる人も、誰一人いなくなってしまったのです。
そのせいでチキ博士の心はどんどん塞ぎ込んでいってしまいました。
誰かに愛されることの喜びをチキ博士は再び思い出しました。
「私は君に会えて本当に良かったよ。」
「プーも、チキ博士のお話を聞くことが大好き!それと今度はチキ博士のためにクッキーを焼いてくるね!」
「それは楽しみだ。私も君のために何かできるといいな。」
「一緒にいるだけで、プーは楽しいよ。」
チキ博士の心は、少しずつ動き始めました。