チキ博士の記憶
「愛するとか、大好きとか、愛しいとか、なんだかとても複雑で難しい。それぞれに全く答えが違う。これではまとめられないではないか。」
チキ博士はますます混乱するばかりでした。
「愛とは一体何なんだ。目に見えないし、形もない。こんなに不確かなもののために、なぜみんな一生懸命なんだ。」
そんなチキ博士ですが、毎日お客さんに聞き続けるうちに、チキ博士の妻が生きていた頃の幸せな記憶を少しずつ思い出してきました。
ー妻と出会ったころ、この素敵な女性の笑顔をずっと見ていたいと思った。だから、会うたびに彼女の好きな花をプレゼントしていたんだ。ー
ー若い頃、私も妻に美しい景色を見せてあげようと、遠くの山へ一緒に行ったな。登るのは大変だったけど、手を取り合って歩んだ時間は何ものにも代え難い時間だった。ー
ー妻が病気になってからは、とにかく美味しいもの、彼女が望むものを食べさせたくて、使える手段を全て使って手に入れた。ー
すると、どうでしょう。チキ博士は、自分の心の靄が晴れてくるのを感じ始めました。心が軽くなって、暖かい春の陽射しのように、穏やかな気持ちになってきました。
「私は、妻に研究したことを話すことが好きだった。彼女がいつも私の話を微笑んで聞いてくれるから、感心してくれるから、研究が楽しかったんだ。彼女に聞かせてやりたくて。そんなこととうの昔に忘れていたな。」
そんなある日、この間やって来たプーちゃんがまたやって来ました。