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妖精専属菓子職人  作者: おきょう
続編

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72/91

10

 

 ソフィアはルーカスとマークス、そしてターニャとしばらく談笑していた。

 しかし、パーティーの始まりの時間が近づいてきたらしい。

 広間にはさらに多くの招待客が集まりつつもあり、空気も賑やかになってきた。


「そろそろ行かなければな」


 ルーカスが言いだし、マークスと挨拶の為に場を離れることになった。

 ターニャは幼すぎるため、挨拶周りはまだしなくていいらしい。

 もし存在に気付いて話しかけてくる人がいれば、軽く挨拶すればそれで構わないとのこと。


 そんなわけで、付いて行ってもどうせ邪魔だろうから、ソフィアとターニャはここに留まることにした。


「ターニャ、メルシアとソフィアの言う事をちゃんと聞いて、行儀よくな」

「だいじょーぶよ。パーティーのおべんきょしたもの」

「そうか。どんなに上手にできたか、後で聞かせてくれ」


 マークスとルーカスが招待客の多い方へと向かったあと。

 

 メルシアと言うらしい侍女が常に控えているのと、さりげなく護衛っぽい人もあちらこちらにいるのを確認しつつ、ソフィアは広間の隅でターニャと一緒にお喋りに興じる。

 守る為というよりかは、一緒にいられる知り合いがここでは彼女しかいないからだ。


「本当にターニャ王女が居てくれて良かったです」

「どうして?」

「そうじゃなければ私独りぼっちになるところだったので。それにターニャ王女と一緒に居るの楽しいですし」

「わたしも! しょふぃあすき! たのしい!」


 両想いのようでなによりだ。

 リリーともそうだったが、ドレスアップした女性同士が一緒になると、やはり話題はその日のファッションになる。

 可愛いドレスもアクセサリーも、やはり気になってしまうのだ。

 とくにソフィアの目を惹いたのが、編み込みをまぜつつお団子にしたターニャの髪型だ。


「ターニャ王女、とっても可愛い髪型ですね。まとめた髪型って新鮮です」


 ボリュームのある可愛いお団子には白い小さな花のコサージュが挿されていた。

 ドレスはクリーム色で、王家の特徴でもある赤い髪がより良く映えている。


「んふふふ」


 褒められたことで、ターニャはにこにこの笑顔になる。

 大きなお団子に自分の手を添えて、頬を色づかせた。


「しょふぃあもかわいいわ!」

「有り難うございます。ドレスアップするの楽しいですね」

「ねー?」


 そんな会話を交わしていると、パーティーの開始時刻になった。

 ルーカスが大勢の人の前で、少し緊張した面持ちで挨拶をする姿を眺めるのは本当にドキドキだ。


(保護者のような気分とでもいうのかしら)


 とにかく無事に失敗なく終わってよかった。


 ちなみに自分の容姿の強みをよーくわかっている少年伯爵は、愛嬌のある作り笑顔を振りまいて好印象を作りまくりだ。

 ただ、エリオットが相手だった時ほど幼い感じではないので心配はない。

 いい印象を持たれるため、そこまで親しくない相手をする時に少し自分を作ってみせるるのはソフィアも覚えがある。

 伯爵として生きていくため、ある程度の仮面は必要なのだろう。

 

 そして挨拶が終わった後も王子であるマークスはもちろん、ルーカスもずっと人に囲まれている。


(うーん……本当に忙しそう。私と話す余裕はなさそうね。……別に、いつでも話せるからいいんだけど。寂しくなんてないし)


 別に相手をしてもらえないからって拗ねてなんてない。

 全然まったく。


「しょふぃあ? ほっぺがぷうってふくらんでるー」

「気のせいです」

「んん?」


 隅で目立たないように過ごしていたけれど、時々ターニャに気付いて挨拶をしてくる人はいた。



 そうして、しばらくの時間をすごしたころ。


「めうしあ。めうしあー」

「はい」


 ターニャが、何やらもじもじと足を動かしている。

 救いを求めるような目で侍女のスカートの裾を引っ張りだした。

 首を傾げたソフィアだったが、一拍してその理由にはっと気が付いた。

 そういえば、給仕がもってきてくれたジュースを三杯も飲んでいたような。


「あら―――――申し訳ありませんソフィア様。少し席を外させてくださいませ」

「はい。大丈夫ですよ」

「もぉれるぅうう」


 やはりお手洗いらしい。


「あ、場所、わかりますか? 扉を出て右に曲がった突き当りです」

「有り難うございます」

「めうしあ、はやくぅ」

「はいはい。すぐですからね」


 侍女のメルシアとターニャが去ったあと、ソフィアは改めて会場内を見回した。

 すると、少し離れた場所に美味しそうな料理が並んでいるのが見えてしまった。


「美味しそう……」


 意識してみると、ふんわり何かが焼ける香ばしい匂いにも気づいてしまう。

 ごくりと喉がなる。

 

(そういえば今日はドレスの準備でおやつの時間を取っていなかったわ)


 ソフィアの足は吸い寄せられるように、そちらへと寄っていった。


「ちょっと摘まもうかなぁ。って言うかローストビーフが分厚い。これ絶対、もの凄くいいお肉!」


 テーブルの向こう側にいるシェフに一枚切って貰って、さらにいい香りのするとろみのあるソースをかけて貰った。

 何だか複雑なこだわりを説明もされたが、複雑すぎてよくわからなかった。


 一緒に小さなパンと、サラダも同じ皿に自分で盛ってテーブルに運ぶ。

 さっきターニャと一緒にいた場所が見えるような向きに立って、帰ってきたらすぐにわかるようにしておくことにした。


 周っていた給仕がフォークとナイフを持ってきてくれて、ドリンクの注文を聞いてもくれたのでオレンジジュースをお願いした。

 この屋敷に務めている人はソフィアともよく会っているので、気安く接してくれる。


「ソフィア様。作り立ての生麺で作ったもちもちなパスタを別でお持ちできますかが」

「お願いします‼」


 いくつかある種類のカルボナーラをお願いした。


「うーん……ちょっと摘まむだけのつもりだったんだけどなぁ」


 我にかえると、もう普通の食事の量になっていた。

 いや普通よりだいぶ豪華で多い。

 盛ったり頼んだりしたのは自分なのたけど、一体いつの間にこんな量になったのか。



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